築5年の新しい家でも倒壊の危険!?「巨大地震」に立ち向かう大学教授の奮闘:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

9月1日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは、「自然災害に立ち向かう!~大地震・豪雨…命を守る最前線~」。
全国で頻発する地震や豪雨災害…私たちの命を守るため、対策に奔走する人たちに密着!「奇跡の植物」で水害に立ち向かう親子の奮闘を、カメラが追った。

【動画】水害にも強い首都へ! 「TOKYO強靱化プロジェクト」 “地下トンネル”という秘策

迫り来る「関東大震災級」の巨大地震…東京都、そして大学教授が奔走

今、首都圏では、マグニチュード7クラスの首都直下地震への懸念が高まり、今後30年の間に70%の確率で起こるとされている。地震が起きた場合の死者は最大2万3000人、経済的被害は約95兆円といわれ、ほぼ日本の国家予算に匹敵する損失が想定されている。

巨大地震が起きた場合、倒壊や火災被害が予想される地域の一つが、木造住宅が密集する東京・江戸川区だ。
東京都は、迫り来る大地震に備え、「TOKYO強靭化プロジェクト」を始動。その一環として、火災が起きても飛び火せず、緊急車両が通りやすくなるように、道路の拡幅工事を進めている。

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拡幅工事は、山手線から環状七号線の間を中心にした28区間で行われているが、このプロジェクトの中心メンバーの一人が、都市強靱化プロジェクト担当課長の藤崎哲朗さん。藤崎さんは、「関東大震災から100年目の年、今後100年しっかり安心していける街づくりに必要な施策を考えて、強靱化プロジェクトとしてまとめているところ」と話す。

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東京・葛飾区は、木造住宅が多い地域で川に囲まれているため、地盤が弱いのも特徴。都内でも、建物の倒壊危険度が最も高い場所のひとつになっている。
この一帯を調査しているのが、耐震などを手掛ける建築構造の専門家、東京理科大学・工学部建築学科教授の髙𣘺治さんだ。

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この日、髙𣘺さんが向かったのは、倉庫として使われている築80年の建物。早速、自身が開発したスマホアプリ「被害ナビ」で、耐震診断を始める。
アプリに住所や築年数、木造かどうかなどの情報を入力し、地面と建物の中にスマホを置くだけ。地面は常に人が感じない程度に揺れており、それをセンサーで測る。すると、4つの倒壊危険度のうち1つが表示されるのだ。

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計測から約1分後、「この建物は震度6以上の揺れが来ると倒壊の恐れがある」という結果が出た。

続いて向かったのは、同じ地域にある新しい家。家主は中国から来日した女性で、5年前に建売りの家を買った。測定の結果は、先ほどと同じく、最も危険度が高い倒壊ランク。建物自体の耐震基準はクリアしていても、地盤の弱さは別だという。
アプリの診断で悪い判定が出た際は、専門家への相談を進めている。

髙𣘺さんは東京理科大学大学院を修了後、30年以上にわたり、耐震や免震の構造一筋で研究を続けてきた。人生を変えたのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災。巨大な構造物の無残な姿を目の当たりにした髙𣘺さんは、大地震が起こる度に現場に赴き、建物倒壊で犠牲になった人々を思い、仕事を続けてきた。

全国で古い建物を救う取り組みも行う髙𣘺さん。富山・射水市で依頼された物件は、地元で100年以上愛された銭湯だ。8年前に営業を終了し、空き家になっていたが、今回地域の交流の場として再生しようとしていた。
この建物、事前の診断では倒壊レベルだったが、今後どんな補強工事を行うのか。髙𣘺さんが生み出した、揺れを抑える方法とは―――。

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水害にも強い首都へ! 「TOKYO強靱化プロジェクト」 “地下トンネル”という秘策

自然災害は地震だけではない。近年、局地的な大雨や集中豪雨が増加。河川が増水し、浸水する被害が頻発している。都心の大田区から江戸川区までを結ぶ環状七号線では、東京都の水害を防ぐ一大プロジェクトが進行していた。

東京都の職員・藤崎さん(前出)の案内で向かったのは、深さ約50メートルもある地下。そこには、掘り進めている途中の大きなトンネルが存在していた。

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このトンネルは、中に雨水を溜めることで河川の水位を下げ、下流域の浸水被害を防ぐための施設。藤崎さんによると「小学校の25mプールで2300杯ほどの容量」だという。
これも、道路の拡幅工事同様、「TOKYO強靭化プロジェクト」の一環で、藤崎さんは「風水害、地震、火山噴火への備えをしっかりレベルアップして“100年先も安心”を目指し、事業の推進を図りたい」と話す。

独自開発の植物で水害を減らす! 親子三代でつなぐ夢


ビルや学校の屋上を緑化し、頻発する水害に“独自開発の植物”で対応しようとする親子がいる。「フジタ」(鳥取・岩美町)社長の藤田豊博さんと長男の大地さんだ。

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「フジタ」が行う工事は、土がむき出しになった従来の緑化とは異なり、50㎝角の座布団のような袋の中に専用培土を入れ、そこに6つの苗を植えて敷き詰めるというもの。

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ファスナーで閉じるため、大雨が降っても土が流れ出ず、しっかりと袋の中に水をためることができる。実験動画を見てみると、「フジタ」の袋方式はびくともしないが、従来の方法だと、土が流れ出てしまった。価格は、1㎡あたり2万8000円(工事費込み)と一般のものより2割ほど高めだが、ランニングコストが抑えられる。

鳥取・岩美町。「フジタ」は、山の麓に広がる20棟ほどのハウスに囲まれたところにあり、藤田さんが、この事業の出発点になった場所を見せてくれた。
ハウスの中には珍しい植物が。これらは、農園を経営しながら植物採取をライフワークにしていた、藤田さんの父・道明さんが集めたものだ。

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道明さんが特に情熱を注いで開発したのが、「常緑キリンソウ」。-30~50℃で生育でき、雨水だけで育つため、水やりなどの手間がかからない。2007年には、「トットリフジタ1号」として品種登録もした。

この常緑キリンソウを袋の中に入れることを思いついたのが藤田さんで、1つの袋に12個のスライダー(引き手)をつけた。この特殊な要望に応えてくれたのが、世界シェア・ナンバーワンを誇るファスナーメーカー「YKK」(東京・千代田区)だ。
藤田さんは、12年前、「YKK」のお客さま相談室に電話して交渉。当初は戸惑いを見せた「YKK」だが、新たな市場を開拓する好機になったという。

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7月13日、激しい雷雨が鳥取を襲った。岩美町は滅多に水害のない地域だが、山からの水はあっという間に濁流になり、道路も至る所が冠水。キリンソウを守るため、藤田さん親子はハウスに向かう。だが、入り口の横に穴があり、そこから水が入った場合、「中のキリンソウが根腐れを起こして、全部ダメになってしまう」と大地さん。山からの水の流れを変える必要があるのだ。

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そこで藤田さんは、いくつかのキリンソウの袋を土のう代わりにし、水の流れを変えようと考えた。こうすることで、先ほどまで片側に大量に流れていた水を分散させることができた。しばらくするとハウス前の水もはけ、中のキリンソウは守られた。

「戦いきった。ニュースでは見ていたが、まさか自分が体験するとは思わなかった。これはもう大変だと思う」。藤田さんは、自然災害の怖さを身近に感じ、これまでの製品を超えるものを考え始めていた。

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向かったのは、素材の大手メーカー「東レ」(東京・中央区)。実は「フジタ」の袋は、「東レ」の雑草を防ぐシートで作られている。藤田さんは新製品を開発するため、「東レ」に相談するが、果たして、どのような方法で水害に強い製品をつくるのか――。

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