「あなたはプロですか?」
当時のペンギンではハンバーグのパテにタマネギもパン粉も全て入っている出来合いの冷凍物を使い、まるでつくねのようだった。それでも井上さんは「うちのハンバーグはおいしいと思います」と自信をのぞかせる。
その後、長女が番組に応募し、ハンバーグの名店で修行することになった井上さんだが、当時50歳の身には耐え難い愛のムチだった。シェフの一人には「あなたはプロですか? 主婦じゃないですね?」と言われることもあった。
そんな厳しい修行を経て完成したのが、いまなお続く、俵型のハンバーグだ。これがたちまちヒットし、店は大繁盛。24年経った現在も愛され続けている。そのおいしさは評判を呼び、大手旅行会社数社がペンギンへ行くバスツアープランを作るほどだ。
取材班が「いま出しているハンバーグは番組(愛の貧乏脱出大作戦)で培ったのもの?」と聞くと、井上さんは「その通りですね。そのまんまです。大事なレシピですよ。宝物です」と答える。
現在井上さんは調理を退き、接客を担当しているが、その大切なレシピを受け継いでいるのが長男の周一さんだ。「僕が全てやっています。お肉さばきから何から。(調理法は)全く変わっていないですね」と周一さんは話した。