「魚がいない…」漁獲量の減少、プラごみ散乱、日本の海を襲う大問題に挑む:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

8月18日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「海よ…よみがえれ!~ニッポン式の挑戦~」。
気候変動や海洋プラスチックごみなどの世界的な課題に挑み、海をよみがえらせようと闘う人々をカメラが追った。

廃棄貝殻を再利用した「魚礁」全国に1万6000基超 メキシコで新たな挑戦


4月上旬、山口・周防大島。沿岸部に1隻の作業船が入り、重さ6トン以上ある巨大な構造物20基を海に沈めようとしていた。これは、魚の住処になる「魚礁」といわれるもので、漁獲量が減っているため、海底に設置された。

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日本の海では、気候変動に伴う海水温の上昇や乱獲などの影響で、漁獲量が激減。ピークだった40年前の3分の1になり、過去最低を記録している。

そこで、魚を育て、増やすために新たな取り組みをしているのが「海洋建設」(岡山・倉敷市)。「海洋建設」は、漁業者に手間賃を払って、廃棄されるカキやホタテなどの貝殻を再利用し、魚礁を作っている。

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新たな魚礁の製作現場となる愛媛・愛南町は、四国屈指のカキの産地。身が大ぶりでジューシーと評判だが、一方で、悪臭が漂う、景観を損ねるなど、貝殻の廃棄が問題になっていた。

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「カキの貝殻はうちの魚礁の材料。養殖の産地では、むき身にした後に貝殻が発生する。そういったものを使わせてもらっている」と話すのは、「海洋建設」片山真基社長(49)。
この日も、地元の漁師さんたちが、メッシュパイプに次々と貝殻を詰めていき、魚礁を作っていた。
貝殻は使い放題な上、「隙間が適度にできるし、餌になるエビやカニが爆発的に増える。その分、魚の寄り付きが早く、集まる量が多い。コンクリート製に比べると(餌の量が)約300倍」と話す片山さん。メリットだらけだという。

「海洋建設」の創業は、40年前の1983年。片山社長の父で漁師だった敬一さん(79)が、海の異変に気づいたことがきっかけだった。「魚がいない。自分が学んだ漁業がこれからどうなるのか。なんとかしたい」。
日本の水産業の危機にいち早く気づいた敬一さんは、魚を「獲る」のではなく、「育て、増やす」ことを決意。試行錯誤を経て、貝殻を用いた人工魚礁「シェルナース」を開発した。

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特許を取得した「シェルナース」は、地元・岡山から始め、2000年には全国の漁業組合で取り扱いを開始。35の都道府県で、1万6000基以上を設置してきた。
「海洋建設」の社員のほとんどが潜水士の資格を持ち、魚の集まり具合を定期的に調査。全国で年間80カ所、延べ100日、こうした調査を実施し、その成果を「シェルナース」の発注元である地元漁協に報告している。

しかし、「国内の売り上げは頭打ち。新しいこと、新しい場所で展開しないといけない」と片山さん。今度はメキシコの漁業関係者たちと手を組み、新たなプロジェクトを進めようとしていた。

舞台はメキシコ、南バハカリフォルニア州の州都・ラパス。この一帯は、メキシコの漁獲量の4割以上を占める最大の漁場だ。南バハカリフォルニア州は貝類の養殖も盛んで、年間約1440トンもの貝殻が廃棄物になり、やはり悪臭や景観など、その処理が問題になっていた。

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「海洋建設」からすれば宝の山。片山さんは「シェルナースで使おうとすると、ここの貝は完璧。使える」と話す。
さらに、日本同様、気候変動や乱獲などの影響もあり、近年、漁獲量は2割程度落ち込み、その分、売値に跳ね返っていた。地元の漁師にとっては死活問題だ。

こうした現状を目の当たりにした片山さんは、帰国後、社をあげてメキシコでの事業に取り組むことを決意するが、「魚礁を沈めるためにはクレーンのついた大きな船が必要。メキシコの作業現場にはない」という問題にぶつかる。メキシコ湾には海底掘削をしている大きな船があるが、使うためには1億円以上の費用がかかるのだ。

5月、いよいよ「シェルナース」初の海外展開が始まった。片山さんは再びメキシコに渡るが、あの問題をどう解決したのか。地元漁師たちと一緒に奮闘するも、そこにはさまざまな苦難が待ち受けていた――。

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稲作肥料からのプラスチック流出を防ぐ


九州・有明海。この海も危機に晒されていた。養分をふんだんに含んだこの辺りの海では、昔から海苔養殖が盛んだ。
日本一の生産量を誇り、食卓で親しまれている有明海産の海苔。しかし今、そのブランドを傷つけかねない問題が発生していた。海苔の製造過程で、ごみが混じったものが見つかるというのだ。
海苔養殖業者の園田浩秋さんは、「出荷できない。異物混入になる」と話す。日本の海で、一体何が起きているのか。

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有明海に面した、熊本市の砂浜に打ち上げられたごみ。中でも厄介なのが、自然に分解されないビンや缶、プラスチックの類いだ。海を守る活動を続けている東濵孝明さん(39)にとって、この四番漁港は、子どもの頃、よく遊んだ場所。

「この漁港は思い出の場所。大人になって来て、ごみを見つけて意識し始めた」と話す。

東濵さんは、IT企業に勤めながら一人で浜辺の清掃を始めたが、4年前、海を守りたいという思いが高じ、会社を辞めて「サステナブルジャパン」を立ち上げた。事業内容は、環境に優しい洗浄剤や海洋ごみの回収装置の販売など。さらに東濱さんは、学校などで積極的に講演活動を行い、海の大切さを訴えている。

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この日、東濵さんがやって来たのは、海ではなく水田。用水路に、技術者の協力を得て開発した“ある装置”を設置する。

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装置前方の箱が流れてくるごみを集め、小さなごみはポンプで吸い上げ、後方の袋で回収する仕組み。実は、田んぼから海を汚すプラスチックごみが流出しており、この装置はそれを防ぐためのものなのだ。

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三重・四日市市の海辺で漂流物を調査するのは、四日市大学 環境情報学部の千葉賢教授。千葉さんはこの調査で、稲作で使う肥料のプラスチックの殻が砂浜に散乱していることに気づいた。「1平方メートル当たり1万個以上見つかった」と千葉さん。

この殻は、肥料をプラスチックの殻で覆った「被覆肥料」から出たごみ。被覆肥料は粒に水分が浸透し、プラスチックの殻が破れると肥料が効き始めるというもので、全国の水田の6割で使われている。通常の肥料と混ぜることで何度もまく手間が省けるが、肥料が抜けた後、プラスチックの殻が田んぼに残ってしまう。

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それらは用水路に流れ込み、川を伝って最後は海へ。この問題に対し、肥料メーカーの業界団体「日本肥料アンモニア協会」は、「2030年には、プラスチックを使用した被覆肥料に頼らない」との方針を発表。しかし、協会関係者によると、「(代替肥料は)まだ各社、実用段階に至っていない」という。
水田から出るマイクロプラスチックをどうすればいいのか。肥料メーカーが解決策を見いだせない中、その答えを見つけたのは、なんと高校生だった──。

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