【感動】イタリア男性が、盆栽鉢作家の窯元で“匠の技”を学ぶ:世界!ニッポン行きたい人応援団

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ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、イタリア男性の初来日の様子をお届け。帰国後の、ニッポンでお世話になった方との交流の様子もお送りします。

盆栽界のレジェンドや憧れの盆栽鉢作家との対面に大興奮


紹介するのは、イタリアのポンペイに住む、「盆栽鉢」を愛するティベリオさん。

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1000年以上前に盆栽と共に広がり、盆栽の美しさに必要不可欠な盆栽鉢。そもそも盆栽は植物と鉢の2つが合わさって評価されるもので、美しく価値のある植物には相応の高価な盆栽鉢が使われます。

盆栽鉢は一般的な陶器と違い、数年間の風雨に耐えられ、凍らない丈夫なもの。底に排水孔があり、植物の根に酸素を供給し、同時に過剰な水を排水できるのが大きな特徴です。
焼き方によって2種類あり、釉薬をかけず素焼きにした「泥(でい)もの」は自然の素材感や色合いが。一方、陶器のように釉薬をかけて焼いた「釉薬もの」は、華やかさや光沢があります。

20代の頃に、趣味でイタリアの盆栽教室に通い始めたティベリオさん。形の良い盆栽ができたものの、それを入れる盆栽鉢が気に入らず、自分で作るしかないと思うように。40代になって、焼き物の経験がないまま独学で盆栽鉢を作り始めたそう。一体、どのように作っているのか見せてもらうことに。

使用する土は、火山灰が混ざったポンペイの土で、まずは土に水を混ぜて粘土状に。
続いて、陶器工場からもらった機械で粘土に圧力をかけ、水分を取り除きます。この段階で気泡が入ったままだと、焼く時にヒビが入るそう。

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粘土が出来上がったら、鉢の成形。廃材で作ったお手製のろくろを使い、体重をかけ、粘土の空気を抜きながら厚さを一定に。大事なのは、中心部分を1センチ、外側を3.5センチほどにすること。この厚さにすると割れづらく、強度のある盆栽鉢になるそう。
今回成形したのは、4つの花びらのような形をしている「木瓜式鉢」と呼ばれるものです。

そして、水を出す穴を開けて脚を取り付け。全て手作業で盆栽鉢に模様を施し、知り合いから購入した中古の電気窯で焼いていきます。通常は980度ほどですが、ティベリオさんは1300度の高温で2日かけて焼き上げます。こうすることで割れづらくなり、光沢が出て見栄えが良くなるそう。

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こうして泥ものの木瓜式鉢が完成。きれいに仕上がっているように見えますが、実はある悩みが。「独学で10年ほど経って、私は今、停滞中なんです」。
次のステップに進むため、ニッポンの常滑で手の使い方やテクニックを学びたいそう。常滑は「日本六古窯」と呼ばれる焼き物の産地の一つで、ニッポンで作られる盆栽鉢の90%以上が常滑産です。

ここまで情熱を注ぎながら、ニッポンにはまだ一度も行ったことがないティベリオさん。実は、これまで病気の長男を看病しなければならず、来日できなかったそう。幸い長男の体調も良くなってきたため、ニッポンに行って本物の技術を学びたいと語ります。

そんなティベリオさんを、ニッポンにご招待! 念願の初来日を果たしました。向かったのは、栃木県の日光東照宮。お目当ては、こちらで開催された盆栽展「日本宝樹展」です。全国の盆栽家が手がける大作がズラリと並ぶ中、ティベリオさんは盆栽には目もくれず鉢に夢中! すると、開催を記念した式典で、盆栽家の木村正彦さんを発見。これまで文化功労賞や黄綬褒章など数々の栄誉に輝き、世界各国にファンを持つ盆栽界のレジェンドです。

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式典が終わり、番組スタッフが木村さんにティベリオさんのことを伝えると、会っていただけることに! 緊張しながら「お目にかかれて大変光栄です」とご挨拶すると、なんと盆栽展を案内してくださるとのこと。

まず説明してくださったのは、ヒノキと同じ仲間の植物「真柏(しんぱく)」。すでに枯れている古木と、生きている部分との組み合わせが作品のポイントです。鉢には、額や帯という模様が。鉢によってデザインは異なり、作品の個性となっています。

鉢の形も、長方形のものや丸みを帯びたものなどさまざま。年代物で長く使い込まれたものは価値が上がるそう。「盆栽がいくら良くても、合っている鉢を入れなければ、盆栽は引き立たないんです」と木村さん。

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多くの盆栽が並ぶ中、ティベリオさんが目を留めたのは、盆栽鉢作家・中野行山さんの作品。木村さんによると、盆栽と鉢を合わせて1000万円以上するとか。
陶歴53年の技で作られる行山さんの盆栽鉢は芸術性と実用性に優れ、国内外問わず高く評価されています。ティベリオさんの憧れの人物でもあるそう。

こうしてレジェンドに案内していただいたティベリオさん。最後はサインまでいただき大感激! 木村先生、本当にありがとうございました!

続いては、念願の地・愛知県常滑市へ。平安末期頃に誕生した「古常滑」と呼ばれる焼き物の産地として知られ、現在でも主な産業は焼き物。よく見かける朱色の急須も、実は常滑焼です。そんな焼き物の街には盆栽鉢を作る窯元も多いのですが、実は憧れの行山さんの窯元も、常滑にあります。

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行山さんの作品を展示するギャラリーを訪れ、「全てが素晴らしいです」と大興奮。そこに後ろから、なんと行山さんが! 憧れの人物との対面に、「先生にお会いできるなんて凄すぎます」と感動!

100点以上展示されている中で、行山さんにとって特に思い入れの深い作品が、40年ほど前に作られた、タタラ作りの鉢。板状の粘土を組み上げていく成形方法で、通常は型に沿って粘土を貼り付けていきますが、行山さんは型を一切使わずに作る第一人者。

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ここで、ティベリオさんが作ったタタラ作りの鉢を見ていただくことに。行山さんは、柔らかいイメージの盆栽を入れる鉢としては形状が鋭すぎると指摘。バランスが崩れるため、もう少し柔らかさが欲しいとのこと。さらに、底の周りに角があると水捌けが悪くなるので、底をなだらかにした方が良いそう。

行山さんから指摘を受けたティベリオさん。その改善方法やタタラ作りを教わる前に、盆栽鉢について知るべきことがあると、行山さんの案内で京都へ。1315年に創建された大徳寺にやってきました。「一休さん」で知られる一休宗純など、数々の名僧を輩出したことで知られています。

一緒に案内していただくのは、キャリア49年の盆栽家、森前誠二さん。日光山・輪王寺の作庭師を務めた「植七」の18代目で、全国の愛好家から絶大な支持を受けています。行山さんとは長いお付き合いだそう。

大徳寺の中にある「芳春院」の盆栽庭園の管理を任されている森前さん。芳春院は前田利家の妻、まつが1608年に建立した前田家の菩提寺で、盆栽庭園には上杉謙信が育てたと伝わる樹齢約800年の名木や、徳川最後の将軍・慶喜公の盆栽などが並びます。

そんな名だたる作品を展示している庭園に、行山さんの盆栽鉢が。幹が黒松、枝が五葉松と、2つの樹種が混ざり合う奇跡の名木で、鉢の大きさもかなりのもの。行山さんのこれまでの作品の中で、一番大きいものだそう。

行山さんの鉢は、大きさだけでなく強度も優れています。実は、鉢が薄いほど水捌けが良くなり、盆栽にとって最適な環境に。しかし薄すぎると、成長した根の圧力に負けて割れたり、「凍割れ」が起こりやすくなったりすることも。凍割れとは、冬場に土の中の水分が凍り、膨張して割れる現象です。

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そして手作りということも、愛好家が行山さんの鉢を選ぶ重要なポイント。森前さんによると、工場で作られる定規で測ったように真っ直ぐなものに対し、手作りは「曲がり真っ直ぐ」というそうで、その風合いが盆栽を生かしてくれるとのこと。あまり工業的に作ると、盆栽が映えない時があるのだとか。

さらに森前さんは、行山さんが自身の鉢に自ら盆栽を入れ、時間の経過による鉢の変化を見ていることも教えてくださいました。「盆栽を愛しながら鉢を作る。これを先生のところで学んでくれたら」との言葉に、ティベリオさんは「偉大な行山先生のもとで一つでも多く盆栽鉢を学んで帰りたいと思います」と意気込みます。

森前さん、本当にありがとうございました!

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