「あずきバー」が全米に…何が違う?50年目のリニューアルとは?:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

8月4日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「円安サバイバル~今こそ世界に打って出る!~」。
円安や原材料価格の高騰で苦境に立たされる企業が増える中、円安を逆手に取り、今こそ世界に打って出ようとする企業の取り組みに密着する。

看板商品「あずきバー」50年目のリニューアル

創業1896年の「井村屋」(三重・津市)は、円安の中、シリーズ累計販売、年間3億本(2021年度)という国民的アイス「あずきバー」を全米に広げたいと考えていた。

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中心となるのは、「井村屋グループ」井村慎 海外貿易室長(48)で、向かった先は、アメリカ・カリフォルニア州 アーバインにある「井村屋USA」。「井村屋USA」は「井村屋」の商品を日本から輸入販売する拠点で、冷凍庫には、出荷を待つ「あずきバー」が大量に準備されていた。
アメリカでは、「あずきバー」の販路は少しずつ拡大していたが、いまだ日系のスーパーが中心。「50周年なので、これを弾みにいろいろ施策をとって売りたい」。井村さんはアメリカに飛び、リサーチを開始する。

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ロサンゼルス近郊にチェーン展開する「スーパーAフーズ」では、まだ「あずきバー」を扱っていない。アメリカ人一人が食べるアイスクリームの量は日本人の約2倍で、アメリカ市場は大きな魅力。井村さんは、店長に「あずきバー」を売り込むが、反応は鈍い。

街行く人に試食してもらうも「第一印象がダメよ。だって豆が入っているんだもの」「変わってるわ。豆が入ってなかったら食べたいけど」とのこと。アメリカでは、豆は塩やスパイスを入れて煮るおかず。甘い豆のデザートが理解されにくいのだ。

次に井村さんが向かったのは、アジア系が中心で、アメリカ全土に78店舗を展開する「Hマート」。デザートのコーナーを調べてみると、台湾や韓国のメーカーの、あずきを使った商品を数多く取りそろえていた。

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売り場の商品担当者に試食してもらうと、「他の小豆の商品と比べても、良い感じだと思う。甘すぎないのが良い」「今、多くのお客さんは品質にこだわる。最近は特に体に良いものを選ぶ傾向にあると思う。ナチュラルなものをより好む」と、参考になる意見を聞くことができた。
顧客サービス担当者も、「お客さんに『井村屋』の商品を勧められるポイントは、原材料がシンプルということ」と話す。井村さん、販売拡大の突破口になるヒントを得たようだ。

三重県にある「井村屋グループ」の本社では、50年を迎えるにあたり、あるプロジェクトが進んでいた。この日、井村さんは開発部に向かう。

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「あずきバー」の原材料は、あずき、塩、砂糖、水あめ、コーンスターチの5つだが、アメリカでのニーズを取り入れ、原料をよりシンプルにするため、とうもろこしを原料とするでんぷん、コーンスターチを抜きたいと考えていた。

だがコーンスターチには、あずきが沈まないよう、全体に粒を行き渡らせる重要な役割がある。では、コーンスターチ抜きで、あずきを均等にするにはどうすればいいのか──。出した答えは、選別ではじかれたあずきを砕いてあずきパウダーにし、コーンスターチの代わりに使用することだった。これなら、原材料を一つ減らせると同時に、あずきの純度も上がる。
ウクライナ侵攻後、コーンスターチの原料となるトウモロコシの価格が乱高下。あずきに変えることができれば、より安定的な確保につながる。

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実際に作ってみると、あずきの粒がまんべんなく広がり、コーンスターチを使った従来品と比べても遜色ない。だが味の調整が難しく、適切な配合を見つけるのに、なんと4カ月もかかった。

本社で行われた商品戦略会議。「井村屋グループ」浅田剛夫会長(当時)他、約20人の経営幹部が食べ比べをし、「良くできました! これで50周年を頑張っていきましょう!」と浅田さん。「井村屋グループ」中島伸子社長(当時)も、「あずきパウダーを使うことで、滑らかで優しい感じがする」と高評価だ。

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しかし、海外輸出に力を入れようとする中、円安が32年ぶりの水準にまで進んでいた。
浅田さんは、「円安、円高がプラスかマイナスかに作用するのではなく、その変化に対応する能力が作れるか、作れないか。売れる場は国内にもあるけれど、当然、海外にも見つけていく努力を必要とする」と話す。

あとは海外でどう展開するか…井村さんの手腕にかかっている。練った戦略は、7月1日、「井村屋」が定めた「あずきバーの日」に、日本、シンガポール、アメリカの3カ国で“あるイベント”を開催することだった。
井村さんはこのイベントを弾みに、世界販売を加速させていくことができるのか――。

円安を追い風に! 金物の町から世界への挑戦

今年2月、去年からの急激な円安による原材料やエネルギー価格の高騰で、世界的にも有名な金物産業の町、新潟・燕三条エリアは苦しんでいた。
一つ10万円以上するプロ用のハサミを作っている「シゲル工業」(1976年創業)もその一つ。切れ味をとことん追及した業務用のハサミを年間5万丁生産するこの会社が、今、窮地に陥っていた。藤田正健社長は、「円安になってから、購入する資材関係は全部(価格が)上がっている」と話す。

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苦境の中「シゲル工業」は、巻き返しを図る新商品を生み出していた。それが、刃先をカーブさせたピーラーだ。

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一般的なピーラーと比べ、刃先が素材に広く当たるため、一度に大きな面積をスピーディーにむくことができる。さらに刃先にハイグレードなステンレスを使うことで、皮だけを薄くむけるようにした。

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「シゲル工業」の売り先は主に企業で、一般消費者に直接売ることはほとんどしてこなかった。刃物加工一筋のすご腕職人で、創業者の藤田茂会長は、「売る気持ちがないのと、一生懸命さが足りない」と伝え、長男の正健さんは「これからですね」とやる気を見せる。

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2月上旬。「シゲル工業」に、「ニューワールド」(福岡市)の井手康博社長(32)がやって来た。井手さんは、インターネットを駆使して、ものづくり企業の商品販売を支援している。クラウドファンディングの仕掛け人でもあり、これまで燕三条だけで95のプロジェクトを支援、累計6億7000万円以上を調達してきた。

井手さんが「シゲル工業」に勧めたのは、台湾のクラウドファンディングへの出品。台湾のクラウドファンディング市場は、約140億円(2021台湾群衆集資年度報告)を超え、拡大の一途をたどっている。
茂さんは市場規模が小さいと懸念を示すが、「2000万人ぐらいの人口なので、プラットフォームに日本のものとかいいものを公開すると、より見てもらえる」と井手さん。
欧米や中国のクラウドファンディングでは、出品数自体が多いため、埋没してしまうリスクが高いという。
一方の正健さんは「なんとかやりたい」と乗り気。こうして円安を逆手に、台湾に打って出ることにした。

4月下旬、台湾・台北市にやってきた井手さんは、台湾三大クラウドファンディングの一つ「フライングV」へ。「フライングV」のプロジェクトディレクター・陳柏安さんは、「シゲル工業」のピーラーの滑らかな使い心地に感動。台湾製より高価格だが、「これは値段で勝負する商品ではない。性能の差が分かれば、支援者は高くてもお金を出して買ってくれる」と太鼓判を押す。

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「シゲル工業」が開発したピーラーを、世界に売り出そうとしている井手さん。果たして、台湾の人たちにどうアピールするのか――。

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