お世話になった“ニッポンの切り絵作家”をブルガリアへ逆ご招待!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

3月末、早川さんを乗せた飛行機はトルコを経由し、約15時間かけてブルガリアに到着。
3年ぶりにアネリアさんと再会しました。早川さんは「本当にブルガリアに来られるようになるなんて思いませんでした。アネリアさんのおかげです」と感謝を伝えます。

今回早川さんは、現地で作品を制作。アネリアさんは、早川さんに良いインスピレーションを与えられるよう、ブルガリアのいろいろな所を案内します。5日後に開かれる展示会に向け、動き出した2人。

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空港から車で20分、標高2290メートルのヴィトシャ山のふもとにある首都ソフィアに到着。この町のシンボル、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂をはじめ、美しい街並みを目にした早川さんは「ソフィアすごい! 大好き!」と大興奮です!

アネリアさんが予約してくれたのは、五つ星ホテルのスイートルーム。ご家族で来ると思って用意したそうですが、早川さんの奥さんは妊娠中で、今回は1人で滞在します。

「3年前の旅で、別れ際、赤と白の紐を木に結んだのを覚えていますか?」とアネリアさん。今回はまず、早川さんの腕にマルテニッツァをつけます。マルテニッツァとは、紅白の紐。3月になると腕につけ、渡り鳥を見たら外し、花を咲かせた木に結ぶと願いが叶うというおまじないがあるのです。「渡り鳥のコウノトリを見たら教えてください」と話すアネリアさんに、「頑張って探します」と早川さん。

この日は早川さんの歓迎会。ブルガリアの伝統料理を味わえるレストランに、駐ブルガリア日本国大使の奈良平博史さん、大使館で働く皆さんやソフィアさんの切り絵仲間が集まりました。

まずは、ラキアという50度ほどあるお酒で乾杯。ブルガリアを代表する料理、塩気の強い白チーズを乗せたショプスカサラダをいただきます。国旗と同じ配色なのが特徴。
ブルガリアは粘土がよく取れるため、陶器も名産。陶器の中で熱せられた、ジューシーなチキンも堪能しました。

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ここでブルガリアの伝統衣装を着た人たちが、伝統舞踊のホロを披露。早川さんも挑戦し、20分ぶっ通しで踊って息切れをする場面も。

2日目は、ソフィアから車で3時間半、1500万年前に今の形になったといわれるマグラ洞窟へ。全長約2500メートルあり、アリの巣のようにいくつも分岐しているため、全て見るのに7時間かかるとか。

今回は特別な許可をいただき、観光客が入れない所も見せていただけることに。そこには、かつてこの洞窟で暮らしていた古代人が描いたとされる壁画が! 4万2000年前に描かれたものと推測されています。

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洞窟に住んでいた人の日常を描いたものといわれ、ダンスをしているような絵も。
壁画はコウモリのフンで描かれており、劣化させないよう、4年前から観光客の入場を禁止しているそう。壁画を間近で見た早川さんは「すごく今衝撃を受けています」。古代人の描いた絵に、強烈なインスピレーションを受けたよう。

その後、ソフィアに戻ると、早川さんはアネリアさんが手配したアトリエへ。作品作りをしている間、アネリアさんは展示会の準備をします。想像以上に刺激をもらい、「絶対ブルガリアの人に喜んでもらいたいですよね」と意気込む早川さん。展示会まであと3日、一体どんな作品ができるのでしょうか。

一方、アネリアさんは会場となる複合施設へ向かいます。これほど大きな会場での切り絵展は初めてだそうで、来客数に不安が。
ニッポンの切り絵はブルガリアでほとんど浸透していないため、アネリアさんは展示会を前に、少しでも切り絵を知ってもらおうと、テレビ局に宣伝を直談判。朝の情報番組に、早川さんと一緒に出演することに。

アトリエで作画中だった早川さんは、突然のテレビ出演に驚きながらもテレビ局へ。出演時間は15分、しかも生放送中に作品を作ることを頼まれます。作るのは、動物の顔の中にたくさんの生き物が描かれている作品です。
切り絵を始めたきっかけなど、インタビューを受けた後は切り絵に専念。放送終了間際に、ようやく作品が完成しました。出来上がった作品を番組MCのアレクサンダーさんにプレゼントすると、「なんて美しいんだ! いろんな種類の生き物が顔の中にいるよ、すごい技です!」と大興奮。放送後でしたが、ニッポンの切り絵の魅力が伝わったようです。

慣れないテレビ出演で疲れが出た早川さんは、家族とビデオ通話。家族の元気な姿に癒されたものの、実は作品づくりが思うように進んでいません。ブルガリアで受けたインスピレーションを、作品にどう反映するか決めかねていました。

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そこでアネリアさんが、早川さんをとある場所へ案内。4つのライオンの銅像がある、ライオン橋です。かつてブルガリアは、オスマン帝国の厳しい支配下にありました。そんな中、4人の教師が自由を求めて反旗を翻します。彼らはここで処刑されましたが、彼らの勇気を忘れないため、ライオンに変えて残したのです。

「ブルガリア人は勇気を持って自由のために戦います。その象徴がライオンであり、私たちはこれを見て勇気を奮い立たせるのです」。ブルガリアの国章にも選ばれているライオンは、街のあらゆるところに銅像が。

自由のために戦った人々が、今でも大切にされていることに感銘を受けた早川さん。アトリエに戻ると下描きに没頭。作品のイメージが湧いた様子です。

この日は、アネリアさんのご自宅で夕食に。乾杯はもちろんアルコール50度のラキアです。ヨーグルトの消費率世界一のブルガリアらしく、ヨーグルトを使ったサラダや、水牛のヨーグルトをかけたサルミ(ひき肉と米を葉で包んだ料理)をいただき、楽しい時間を過ごしました。

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展示会前日、ようやく下書きを終えた早川さん。下書きに沿って黒の紙も同時に切っていきます。切り絵は、切り始めると後戻りができません。慎重に考えながら切り続けること10時間。切れ味が落ちると作業が遅くなるため、カッターの刃は頻繁に変えます。
展示会は明日の夕方ですが、作品は完成するのでしょうか?

本番当日、開場まであと3時間。ニッポンから送ってくれた作家さんへの感謝を込め、一枚ずつ配置にこだわり展示します。アネリアさんがニッポンで作った行灯も、早川さんが送ってくださいました。
行灯以外のアネリアさんの作品も展示。3年前はお手本通りに切っていましたが、帰国後オリジナルの作品作りに没頭。作品を見た早川さんからは、以前よりレベルが上がっているとうれしい言葉をいただきました。

早川さんの作品は、作品を際立たせるため白の背景に。滋賀県に伝わる昔話を切り絵で紡いだ絵本の原画の他、照明で動物が浮き出るテント型の作品も。

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そして、出来上がったばかりの新作もお披露目。大きなライオンの中に、さまざまなブルガリアが描かれています。コウノトリにマルテニッツァ、ライオンのたてがみに描かれたフクロウは、ホテルのテラスから見つけたものです。そして、マグラ洞窟で見た踊る古代人も! 実は道中、マルテニッツァを外すきっかけとなるコウノトリを発見したそう。

アネリアさんのご招待から生まれた切り絵。早川さんにとっても忘れられない作品になりました。「アネリアさんがブルガリアに招待してくれていろんな所に……楽しいご飯も作ってくれて」と涙で声を詰まらせます。「私は早川さんがしてくれたことのお返しをしただけです。でも泣いてしまう気持ちは私にはよくわかります」とアネリアさん。

展示会では、お客さんに作品の説明ができるよう、ニッポンとブルガリアをリモートでつないでいます。今回福井さんの作品は9点。展示会のために手がけた新作は、国名を「勃牙利」と漢字にして、ブルガリアの名物をつなぎに使った福井さんらしい作品です。

福田さんは、自宅にあったほとんどの作品を送ってくださいました。さらに、展示会のための新作も。ブルガリアの風習で悪霊を追い払う「クケリ」と、ニッポンのなまはげを融合させた作品です。

開場30分前、ギャラリーの外にはすでに人だかりが。テレビ番組を観てやって来たというお客さんも。
そして午後4時、いよいよオープンすると、早川さんの新作に早くも人だかりが! 奈良平大使も駆けつけてくださいました。

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あるお客さんは「この一枚の絵に我々の何百年もの歴史が刻まれている。神の手をお持ちだ!」と絶賛。
ギャラリーには、この日だけで200名が来場。お客さんからは「これほど衝撃を受けた展示会は初めてです」「本当にどれも素晴らしいです」との声が。
早川さんは「全く文化的な背景が違うブルガリアまで来て、何かがちゃんと伝わっているというのは、言葉じゃなくて切り絵の魅力なのかなっていうのはすごく感じますし、ちょっと驚いています」と語ります。

2時間にわたって行われた初日も、まもなく終了。アネリアさんは「多くのお客さんに来ていただき感謝しています。切り絵に興味を持ってもらい、うれしかったです」と話し、ニッポンから大切な作品を送っていただいたことにも感謝しました。

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すると早川さんが、今回の新作をアネリアさんにプレゼント! アネリアさんは「一生大事にします」と大感激。福井さん、福田さんからも、記念にと新作をいただきました。

福井さん、福田さん、ご協力ありがとうございました!

ニッポンの切り絵展は、その後も客足が途絶えることなく大盛況。合計10日間開催されました。

別れの時。今回の旅について早川さんは、「すごく刺激的で素晴らしい、楽しい日々でした。僕も日本に帰って、ブルガリアのことを多くの人に伝えていきたいと思います」。「これをきっかけに、多くのニッポンの方がブルガリアに来てくれたら嬉しいです」とアネリアさん。

早川さんから新作をいただいたアネリアさんは、お返しにと自らの作品をプレゼント。さらにお土産として、ライオンの銅像の絵を渡します。早川さんも「プレゼントがもう一つあります」と、カッターの刃を800枚くださいました。

最後に、また会える日が来ることを信じて、マルテニッツァを桜の木に結んだアネリアさんと早川さん。アネリアさんは「今度はニッポンで私の個展を開きたいです!」と、次の目標を語ってくれました。

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切り絵を通してさまざまな出会いがあったブルガリアの旅。実は、ニッポンの切り絵を広めるため、ブルガリアで特別授業も行っていました。帰国を前に早川さんは「夢のような日々でした。本当に感謝しかないです。アネリアさんがいなかったら、ブルガリアなんて考えることもなかったし…。今度は家族4人で来ます」と語りました。

番組初!“お世話になった日本人のご招待”は大成功でした!

月曜夜8時からは、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」を放送!

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