「すごく心配です…」南米アマゾンで暮らす父に会うため、100時間かけて里帰り!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

番組では、多くの日系の方をニッポンにご招待してきました。そして今回は、ニッポンの家族が南米アマゾンの奥地に暮らす父のもとへ! 「遠く離れた家族に会いたい! ナイショで里帰り応援団inブラジル」をお送りします。

日系1世の男性が、63年ぶりにブラジルから故郷ニッポンへ


紹介するのは、ブラジル北部の街・トメアスに住む、日系1世の草野恒雄さん。

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1954年、恒雄さんは6歳の時に、福島県から船で1カ月かけ、家族と一緒にトメアスに移住しました。そこで待ち受けていたのは、「緑の地獄」と呼ばれる深いジャングル。生きるために、猛獣が潜む森を斧一つで必死に開拓したそう。

1960年代、ブラジルの義務教育は小学校まで。恒雄さんは4人兄妹の長男として家計を助けるため、小学校卒業後は父親の胡椒農園を手伝うことに。現在は亡き父から受け継いだ土地を、1人で守っています。

4人の子どもたちには、故郷であるニッポンを大切にしてほしいと、学校とは別に日本語を習わせていた恒雄さん。「日本人としての誇りは今でも持っています」「書類上はブラジル人ですけど、気持ちは日本人のつもりです」と語ります。

部屋には富士山の絵を飾り、宝物は演歌のカセットテープ。ニッポンへの強い想いがある恒雄さんですが、63年間一度も帰っていません。

近年、森林の減少が深刻なアマゾン。恒雄さんの農園では、人の手で森を蘇らせながら作物を育てる、アグロフォレストリーという農法を導入。荒廃した土地に胡椒やフルーツを植えていくと、約25年で深い森のように育つそう。一般的な農法より手間がかかり、恒雄さんを含め2人で農園を維持しているため、ニッポンはおろか旅行すら行けないのです。

父から受け継いだ農園の維持に精一杯な上、年金とフルーツ販売で得られる月収は7万円ほど。それでも、どうしてもニッポンに行きたい理由が。

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4人の子どものうち、長男の照雄さんと次女のリアさんは高校卒業と同時にニッポンへ。1度里帰りをした照雄さんとは8年、リアさんとは19年会っていないのです。

そんな恒雄さんを、ニッポンにご招待! 6年前、63年ぶりに来日を果たしました。

付き添いの妹・きよ子さんは33年ぶりの来日ですが、恒雄さんは63年間、アマゾンのジャングルからほとんど出たことがありません。降り立った東京駅では目の前の高層ビルに圧倒され、渋谷では1日50万人が行き交うスクランブル交差点にびっくり!

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人生で1度は見たいと願っていた、東京タワーへ。地上150メートルの展望台で景色を堪能していると、ここでサプライズが! 長男の照雄さんが駆けつけてくれたのです。

8年ぶりの再会に感動する恒雄さんですが、実は長男の照雄さんに対し、ずっと胸につかえていることが。経済的な理由から大学進学を諦め、24年前に18歳でニッポンへ出稼ぎに渡った照雄さん。恒雄さんは「父親として何もしてあげられなかったことを許してほしい」と伝えます。

すると照雄さんは「そんなこと言う必要ないよ。高校まで出させてもらったのに」と、恒雄さんを抱きしめます。息子の温かい言葉に、「心が軽くなったよ」と改めてハグを交わしました。ここで照雄さんから提案が。次女のリアさんは、恒雄さんがニッポンに来ていることをまだ知りません。そこで、来日のことは内緒にし、サプライズで会いに行くことに!

照雄さんの運転で向かったのは、リアさんが住む愛知県半田市。幼い頃からお父さんっ子だったというリアさんは、高校卒業後、恒雄さんに負担をかけまいとニッポンへ出稼ぎに。手紙にはいつも、「お父さんと暮らしたい」と綴られていました。

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照雄さんは、近くに来たので顔を出すとしかリアさんに伝えていません。自宅の玄関先に出てきたリアさんに、恒雄さんは「久しぶりだね」と顔を見せます。するとリアさんは、驚きながらも恒雄さんを抱きしめ、19年ぶりの再会に涙を流しました。

そこへ、リアさんの子どもたちが。高校生だったリアさんも結婚し、3人の子どもを持つ母親に。長女の照美さんは「人生で初めておじいちゃんに会うのでうれしい。私の夢だったんだよ、おじいちゃんに会うのが」と話します。

リアさんの夫・ジウマールさんも帰宅。2人はこれが初対面です。実直そうなジウマールさんに安心した恒雄さんは、「私の娘を大事にしてください」と握手を交わしました。

家族が揃ったところで、リアさんが恒雄さんに初めて手料理を振る舞います。作るのは、パプリカパウダーとジャガイモ、牛肉などを煮込んだブラジル風肉じゃが「カルネ・デ・パネラ」です。娘の手料理を「ブラジルでよく食べているレストランよりおいしいよ」と褒める恒雄さん。

翌朝、家族で向かったのは日間賀島。100年以上前から最高級のトラフグ漁が盛んな、国内屈指の漁場です。ニッポンのフグを食べるのが夢だった恒雄さんのために、フグ料理で有名な民宿「小浜荘」にやってきました。

食卓には、鶴を模して盛り付けた華やかなフグの刺身が。フグの唐揚げや、新鮮な魚を赤味噌で煮込んだ「ごんど汁」などが並びます。普段はアマゾンの川魚を中心に食べている恒雄さんにとって、見たこともない海の幸が勢揃い!

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人生で初めてのフグに「おいしい! やっぱりフグですね」と舌鼓を打ち、「日本人で良かったと思います。こういう料理が食べられて誇りに感じました」。その後も、家族水入らずの幸せな時間を過ごしました。

この日やって来たのは、恒雄さんが6歳まで暮らしていた生まれ故郷、福島県いわき市三和町。亡くなった母・トラ子さんの写真を見つけるために訪れました。

トラ子さんは、トメアスに渡って1年後の1955年、マラリアにかかり30歳の若さで他界。トラ子さんが写った写真は1枚もなく、恒雄さんは記憶の中にかすかに残る姿を胸に、今日まで暮らしてきました。

そこでもう1度、母の姿を見てみたいと、福島に住む親戚のもとへ。いとこにあたる草野英世さんは、恒雄さん一家がブラジルに渡った後に生まれたため、恒雄さんと顔を合わせるのは初めて。きよ子さんは、33年前に福島に帰った際、会ったことがあるとか。

トラ子さんの写真について尋ねたところ、英世さんの実家にあるかもしれないとのこと。しかし実家には14年間人の出入りがなく、今は廃屋状態。写真を探すには人手が必要ということで、知人にも声をかけます。

トラ子さんが亡くなったのは、カラー写真がニッポンに普及した1960年代より前。白黒写真ということを手がかりに探し始めます。
みんなで家中をくまなく捜索すること2時間。祖母が大切にしていたという衣装ダンスを開けると、大量の白黒写真が。恒雄さんは100枚以上ある中から、母の姿を見つけ出そうと目を凝らします。

と、その時! 船に乗っている人々の写真を発見。写真を見たきよ子さんは、「お母さんがここにいる」と声を上げます。

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その写真は63年前、ブラジルに旅立つ船に乗る家族を港から写したもの。6歳の恒雄さんの横にいるのが、1歳になる妹のきよ子さんをおぶった母・トラ子さんです。63年ぶりに母の姿を見た恒雄さんは「俺たちが来るのを待っていてくれた」。

夢のように過ぎていく1週間のニッポン滞在。家族と過ごす時間もあとわずかです。「今日でお別れなのかと思うと、ちょっと悲しくなります」と恒雄さん。照雄さんは、「父さんが僕たちをずっと想ってくれていたことは、一生忘れないよ」と伝えます。

リアさんは、恒雄さんへの手紙を読み上げます。「来てくれて本当にありがとう。短かったけど特別な時間でした。父さんに料理を作り、旅行に行き……本当はもっと多くの時間を過ごしたい。私も子どもができて母親になれました。だから父さんが私たちにくれた愛というのがいかに深かったか、今はわかるよ。お父さん、感謝しています」。

そして照美さんから、「私たちとの思い出だよ」とプレゼントが。3人のお孫さんが内緒で作っていた寄せ書きです。涙を流す次女・ルアナちゃんに「泣かないで、また来るよ」と声をかける恒雄さん。最後にリアさん、照美さんとハグを交わし、別れを惜しみました。

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コロナが猛威を振るっていた3年前。アマゾンの奥地は通信環境が悪く、恒雄さんとニッポンの家族とのやりとりは、3カ月に1度のメールのみ。そこで、頻繁に連絡が取れず不安に思っている家族のために、インターネット環境が整っている日系移民の協会に協力していただき、恒雄さんと中継をつなぐことに!

恒雄さんがニッポンの家族の姿を見るのは3年ぶり。するとルアナちゃんが、保育園で敬老の日に描いた、恒雄さんとの思い出を見せてくれました。恒雄さんがニッポンに来た時のことは、今もよく覚えているそう。

恒雄さんも、ニッポンの家族に直接見せたかったものが。番組をきっかけに、母・トラ子さんが写っている写真がもう1枚見つかったのです。それは、63年前に福島で撮影された、トメアスへ向かう人たちの集合写真。その中に、トラ子さんと6歳の恒雄さんが写っていました。

「おばあちゃんの写真を見れば、家族のつながりをいつも確認できるね」と照雄さん。リアさんが「本当に奇跡のような出来事ね」と話すと、恒雄さんは「感激です」と涙を拭います。

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「ブラジルにも遊びにおいで」と呼びかける恒雄さんに、「行きたい! 行きたいよ、お父さん」と答える照美さんとリアさん。ルアナちゃんは「じいちゃんと一緒にお散歩したいし、遊びたい」と話し、再び涙を拭う恒雄さんでした。

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