悪質な詐欺サイトはなぜ撲滅できないか だまされない方法、専門家が解説

公開: 更新: テレ東プラス

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Q.悪質な偽のショッピングサイトは、なぜなくならないのでしょうか。

「偽EC(電子商取引)サイトは『.xyz』『.top』『.buzz』などが入った、比較的簡単に取得しやすいドメインを利用することが多く、サイトが閉鎖されても、またすぐに別のドメインを取得して、偽ECサイトを構築・継続しているのです。

弊センターで発見した偽ECサイトは、2022年6月から8月で平均1万件以上。実際はこの数以上の、異なる偽サイトが次々と生み出されていると考えられます」

Q.どのように真偽を見分ければいいのでしょう。

「ここを見れば確実に見分けられるという方法はありません。ドメイン名に、先ほどお話しした単語(『.xyz』など)が入っているかどうかがまず一つ。次に多種多様な、ありていにいえば雑多な商品を販売している、価格が不自然なほど安い、説明文などの日本語が怪しい、決済方法が銀行振込に限定される、振込先が法人でなく個人名義の口座であり代表者名でもないなどが挙げられます。

会社概要も、真偽を見分けるポイントではあります。ですが最近は、架空の住所や電話番号を使わず、実在する会社を悪用するケースも多い。怪しいと感じて検索エンジンで調べても実際に会社があるため、見分けにくいわけです。また、最近では翻訳サイトの精度向上で、不自然な日本語もなくなりつつある。時間の経過とともに巧妙さは増すばかりです。

とはいえ、大量生産するなりの粗さは相変わらず目立ちます。会社名、住所、電話番号、URLから複合的に判断していただき、少しでも不自然な点があれば、疑ってかかるべきです。特に、価格はよき判断材料になります。欲しい商品が安いからと飛び付かず、他のサイトと比べて異様な低価格なら偽サイトの可能性が高くなります」

Q.偽ECサイトが検索の上位に上がってくる仕組みは?

「グーグルなどの検索エンジンは最適化を図るため、日々世界中のホームページを探しています。偽ECサイトは『SEO(検索エンジン最適化)ポイズニング』と呼ばれる手法で、検索エンジン側へ偽の情報を送信することで、検索結果でのサイトの表示順位を引き上げているのです。

やっかいなのは、偽ECサイトのURLそのものが上位になるわけではなく、インターネット上にある別のホームページを改ざんし、そこから偽ECサイトに転送していることです。こうして悪用されるサイトは『踏み台』とも呼ばれます」

Q.その「踏み台」にされたホームページの運営側が偽サイトとつながっている可能性は?

「『踏み台』にされたサイトは、ソフトウェアの定期的なアップデートがされていない、IDやパスワードがデフォルトのままなど、セキュリティー対策が不十分な場合が多いため、知らず知らずのうちに利用されてしまうパターンがほとんどかと。

自社サイトの改ざんの有無を知りたい場合は、検索エンジンの検索窓に『site:〇〇.co.jp』のように『site:』のあとに自社のウェブサイトのドメイン名を入力して検索をかけてください。もし、本来自分の公開するサイト以外にショッピングサイトらしきものが検索結果に表示あれば、悪用されているとみていいでしょう」

Q.偽ECサイトの口座番号や連絡先から、犯人にたどり着けないものでしょうか。

「偽ECサイトの決済手段は銀行振込が圧倒的に多く、購入手続きを進めると振り込み先の口座情報がメールで購入者に届きます。しかし、口座情報はネットで売買されている個人名義のものを悪用する場合も多いため、そこをたどっていくのは実際的に困難です。さらに、凍結されてもまた別の口座を使えば再開できてしまいます」

Q.どうすれば、これらの悪質なサイトをなくすことができるでしょうか。

「対策はいくつかあります。一つはウェブサイトが改ざんされて『踏み台』サイトにならないように基本的なセキュリティー対策を講じること。サイトが改ざんできなくなれば、SEOポイズニングの影響を弱めることができます。もう一つは振込先として使用される口座の売買をなくす取り組みをしていくことです。銀行口座の売買は罪に問うことができます。

そして、消費者一人ひとりが悪質なECサイトを見つけた際は、できる限りセーファーインターネット協会の悪質ECサイトホットラインなどに通報することです。悪質ECサイトを放置したままでは犯人側はますます利益を得て、被害が拡大する一方です。

報道によると、警視庁のサイバー犯罪対策課は、昨年7〜11月には、5000人以上が偽通販サイトの被害に遭い、計1億円以上が振り込まれたとみています。1件当たり5000〜2万円程度の振込であっても、まとまると大きな被害額になります」

Q.通報は敷居が高そうな気もしますが。

「通報自体は、怪しいサイトのURLを貼り付けていくつか選択肢を選ぶだけですので、さほど負担はかかりません。ウェブサイトの改ざん防止と不透明な口座の売買を防ぎ、加えて悪質なサイトをできるだけ通報する。そうした積み重ねで被害者が減れば、手間の割に利益が少ないと将来、犯人側も『うまみがないな』と、この犯罪に手を出さなくなるはずです。また、詐欺サイトが身近に存在する危険として認知するだけでも、被害の未然防止につながります。

悪質ECサイトを撲滅させるには社会全体で犯罪に向き合い、各々ができることをする。安心できるインターネットライフの実現のため、心がけていただけると何よりです」

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【日本サイバー犯罪対策センター】
産業界、学術機関、法執行機関等、それぞれが持つサイバー空間の脅威への対処経験を集約・分析し、その結果を共有することで、サイバー空間全体を俯瞰(ふかん)し、サイバー犯罪等のサイバー空間の脅威の大本を特定・軽減・無効化することを目指す非営利団体。産学官の連携の枠組として、インターネットを利用した金融犯罪事案、標的型攻撃等による情報窃取事案、詐欺等のeコマースに対する脅威等、サイバー空間における様々な脅威に対処すべく、情報共有や手口分析、マルウェアの解析、脅威情報の収集・活用、国際連携等、様々なアプローチを通じて、安全かつ安心してインターネットを利用できる環境の構築に貢献。

(取材・文/森田浩明)

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