スマホで観られる!報道記者が制作した全編”LEDウォール”撮影のドラマ配信

公開: 更新: テレ東プラス

 

「役者さんの動きに合わせてカメラが動くと背景の映像も一緒に動くでしょう。あれはカメラと映像をコンピュータで連動させているんです」

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背景="LEDウォール"について説明するのは、このドラマを企画した松並百合愛さん。テレビ東京の報道局所属で、現在は「WBS ワールドビジネスサテライト」のディレクターを務めている。

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主演・草川拓弥、共演の石井杏奈竹財輝之助で送るオリジナル配信ドラマ「ひとひらの初恋」が、テレビ東京公式YouTubeドラマチャンネルでスタート。不思議な花屋を訪れた主人公が、後悔していた高校時代の"初恋"をタイムリープしてやり直すSFラブストーリー。CMをはじめ最近では映画やドラマなどにも導入され、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)の合戦シーンなどでも話題になった最新技術"LEDウォール"を"全編"使用して撮影した、テレ東では初の試みとなるドラマだ。

3DCG映像による背景のため、セットを作る必要がない。しかし、撮影スタジオに入ると...

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そこは、ミモザやカラー、スイートピーなど色とりどりの花々が咲き誇る花屋だった!
窓の外には青い海を望む港町の風景が広がっている。

緑一色の背景で撮影し、後から背景を合成するグリーンバックとは違い、LEDウォールは実際に背景を映しながら撮影ができる。天井の照明、左右の窓から差し込む光もLEDウォールで自在に調整可能。

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LEDウォールによる背景だけでなく、スタジオには本物の花や草木(75種類1300本)も設置されている。天井から吊るしたプランターなどレイヤー(層)を意識して配置することにより、奥行きが出せるのだという。

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取材したのは、第1話で、冴えないサラリーマン・水島透(草川拓弥)が、初めて望月楓人(竹財輝之助)の花屋にやってくるシーン。冒頭の松並さんの言葉通り、役者の動きに合わせて背景の景色も動いていく。新時代の撮影技術に、取材陣も「オオオオーッ」と心の中で密かに声を上げた。

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草川さんと竹財さんは同じ事務所ながら共演は初めて。柔らかい物腰の中にもミステリアスな雰囲気漂う楓人と、過去をやり直せるという信じられない言葉に驚きの表情を見せる透。多くの言葉は交わさないものの、役者同士の阿吽の呼吸で、粛々と撮影は進んでいく。

撮影調整の間、草川さんは、かかとを振ってリラックスしたり、手元を撮る前には腕時計を直したり、常にいつでも動けるようスタンバイ。

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一方、竹財さんは、チョコレートの匂いがするという"チョコレートコスモス"の匂いを嗅いでみるものの...実は鼻炎のためあまり匂いがわからないそう(笑)。松並さんによると「竹財さんは現場の雰囲気づくりにも気を配ってくださいました」とのこと。花屋のセットの小道具で「昔やったことがある」と、華麗なレジ打ちを披露して下さいました。

全編LEDウォールの利点については、「ロケの必要もなく、天候や周囲の環境を気遣うことがないため、タイトなスケジュールでも撮影が可能な点です」と松並さん。撮影期間は全3日、竹財さんはほぼ1日の撮影でオールアップ。

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そして、何より背景を好きなように設定できるのも魅力。透と、高校時代に想いを寄せていた進藤香純(石井杏奈)の学校のシーンでは、当然"夕日待ち"することなく夕景に一変。

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さらに、もうちょっと右の方がいいかな...と夕日の位置も好きなように動かせるのだ。

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スタジオの奥にはCGを操作するためのコンピュータが7台ズラリと並び、これも他のドラマ撮影にはない光景だった。

報道局Dによるドラマ制作

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冒頭でも紹介したように、松並さんは報道局所属。畑違いの"ドラマ"を制作するきっかけは、テレ東が全社を挙げてプロジェクト企画を募集する「トライ企画」だった。

「テレ東の良いところは専門外の分野の仕事でも認めてくれるところ。実は、入社時の希望配属先は1番目が制作で、報道は2番目でしたが配属されました。テレ東は深夜30分ドラマ枠を開拓した実績がありますから、やるなら新しいことをしたい。また、10~20代の心をつかめる企画にしたいと思いました」

若者はあまり長い映像は好まない傾向から、1話5分×4話のショートドラマに。また、画角も"1:1"の正方形。スマホを縦にしたままサクッと観られるのだ。音楽にもこだわり「若い人の間で流行っているチルポップ」が世界を彩る。

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制作局ドラマ室の諸先輩方に相談し企画を練る中、松並さんが注目したのがLED ウォールだった。

「緑のシーンから一斉に花が咲いていくCMを観て。さまざまな色が瞬く間にあふれていく映像は圧巻でした。ファンタジーの世界! LEDウォールは、作り手の描きたい世界を忠実に表現することができる技術で、これなら若者にも共感してもらえる番組が作れると確信しました。そして、その映像があまりに見事だったので、ドラマの舞台はお花屋さんにしようと決めました」

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予算的にもCGを制作できるのは2シーンのみ。3月の卒業シーズンに配信されるため、もう1つの設定は学校に。そして2つの設定だけで展開させていくために、タイムリープものでストーリーを組み立てていった。

同じ時をタイムリープする中で、教室の窓外を鳥が飛ぶシーンが繰り返される。実際に撮影するのはほぼ不可能だが、これができるのもLED ウォールならではなのだ。

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ドラマ本編はもちろん、松並さん凝りに凝ったのが、テレビ東京公式TikTokInstagramなどSNS公開中のプロモーション映像。キャスト3人に、それぞれ花言葉にちなんだセリフをささやいてもらう、というもの。そのために50以上の花言葉を調べたそう。

例えば、草川さんは、ガーベラを手に、学生の雰囲気で「もうすぐ新学期だね、お守りに。まっすぐ前に進め!」と。竹財さんは、ソファーに座って足を組み、手にしたエリンジウムの花言葉="秘密の恋"を予感させるような、ちょっSっ気のある「僕と始めてみますか」とのセリフを。このシチュエーションを考え出したことに対し、竹財さんからは「普段、報道やってる人とは思えない妄想力だね(笑)」と言われたとか。

「実は、小学校から大学まで16年間女子校で。だから妄想が得意なんです」と松並さん。イケメン好きと妄想力を活かして「全女性に刺さるドラマになっていると思います」と自信をもってお届けする。通勤通学の移動時間でも、ちょっとした待ち時間でも、好きなときに好きなだけ楽しんで!

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オリジナル配信ドラマ「ひとひらの初恋」は、テレビ東京公式YouTubeドラマチャンネルで配信中!

オリジナル配信ドラマ「ひとひらの初恋」
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【プロフィール】
松並百合愛(まつなみ・ゆりあ)
大阪府出身。2019年、テレビ東京入社。テレビ東京報道局 都庁・国交省担当記者。「WBS ワールドビジネスサテライト」のディレクターとして経済やマーケットの現場を取材。「テレビ東京若手映像グランプリ2022」では、「THE RAMPAGEにオトされたい!」を企画制作し話題に。

(取材・文/佐藤博之)