事故物件専門の不動産会社に聞く「脳に残る臭い...」特殊清掃現場のリアル

公開: 更新: テレ東プラス

過酷な調査と特殊清掃の現場

――事故物件の紹介は、通常と違うルートも多いのでは?

「通常は、仲介業者やつながりのある士業の方からの紹介が多いと思います。当社の場合は協業している事業者さんもありますが、特殊清掃会社や解体業者、遺品整理業、測量会社などからのご紹介。現在は、葬儀社との提供を進めています。物件の相続問題以前に、ご遺体が発見されてすぐのご相談は、葬儀以外は決まっていないことが多いです。

発見が遅れた場合、腐敗臭や汚れ、害虫の大量発生など、感染症リスクの他、細心の注意と装備が必要になります。手続き書類を探すため、生身で入る方もいますが、非常に危険です。近隣住民からのクレームなど、臭いや害虫といった問題は早々に対処する必要があります。困りごとが多い中で、それらの対応やご相談を一つの窓口でできるのは、恐らく『成仏不動産』くらいなので、ご紹介ルートは幅広いですね」

――現地調査の他、特殊清掃の立ち会いもされるそうですね。非常に危険とのことですが、リスクや臭いについて教えてください。

「時間が経っていると、すぐに死因がわからないこともあります。感染症の可能性に加え、害虫が病原となる危険もあり、防護服などを装着して対応します。特に孤独死の現場は閉め切られた状態で暗い上、心の病気、体が不自由、認知症などの理由から足の踏み場がないほど散らかっていることも多いです。

臭いをお伝えするのは難しいですが、腐敗臭の他、体液や排泄物の臭いは非常に強くて...。臭いが鼻に残って、その場から離れても臭いを感じるという人がいます。こうした現場は壮絶で、鼻ではなく脳に残るレベルの臭いです」

jikobukken_20230226_03.jpgPIXTA

――脳が危険を察知して、記憶に刷り込まれるほど強烈ということかもしれませんね。

「そうですね。当社では、信頼できる特殊清掃会社さんと提携していて、害虫の駆除や消臭、除菌を行います。状況に適した薬品を使う他、きちんと原因を特定し、必要に応じて床を剥がしたり、配管を交換したり根本的な対応をするので、危険な要素や臭いなどは消し去ることが可能です。

やはり技術が必要で、他の事業者さんの対応後に『まだ臭いがする』と、ご依頼をいただいたこともあります。調査すると臭いの原因の対応に問題があり、施工や追加の消臭作業をして解決しました」

事故物件に関わる可能性は誰にでもある

――孤独死は、高齢者だけではないと聞きます。

「突然死や不慮の事故は、年齢に関係ありません。ご自身や身内は大丈夫でも、ご近所や同じマンション内で起きるかもしれず、事故物件に関わる可能性は誰にでもあります。

私たちが現地調査や特殊清掃に伺った際、事情をご存知の近所の方が申し訳ないといった感じで、『郵便受けに溜まっているのに、気づいていれば』『臭いに気づいて、早く連絡していれば』と言われることもあります」

――臭いなどで迷惑しているはずなのに、クレームではなく、そういった言葉をかけてくださる人がいるのですね。

「私たちは事故物件を扱い、通常の物件と同じように不動産活用されるよう努力していますが、事故物件が増えることを望んでいるわけではありません。
事件や自殺によるものは難しいですが、事故や病気による場合は、死後の発見が早ければ事故物件になるのを防ぐことができます。そうしたケースは、時間が経つほど状況が悪化して、対応コストが高くなる上、物件価値も下がってしまいます。

離れて住むご家族と連絡を取り合う、近隣の方が異変に気づいたら様子を確認するなどで、不幸な事故物件が生まれてしまうのを回避できるかもしれません」

【取材協力 マークス不動産】
2016年創業の総合不動産会社。「世のために。人のために。」「不動産の可能性を追求し 世の中の困りごとを解決する」の理念を掲げ、事故物件の売買を専門に取り扱う「成仏不動産」以外にも、再建築不可物件の相談ができる「再建築不可救急隊」、離婚後の不動産売却を中立な立場で査定する「中立不動産」ほか、個性的な事業を展開している。

(取材・撮影・文/鍬田美穂)