事故物件専門の不動産会社に聞く「脳に残る臭い...」特殊清掃現場のリアル

公開: 更新: テレ東プラス

過去の入居者が殺人事件や自殺などで死亡、あるいは孤独死によって遺体の発見が遅れた不動産は、一般に"事故物件"と呼ばれる。物理的な不具合はないが、心理的に抵抗感を覚えるケースが多く、売買価格や賃貸料を安くしても、なかなか買い手や借主が見つからない場合もあるという。

「テレ東プラス」は、事故物件を専門に取り扱う「成仏不動産」事業を手掛ける「マークス不動産」の有馬まどかさんを取材。事故物件の状況や、どのようなプロセスを経て次の購入者の手に渡るのかなど、話を聞いた。

jikobukken_20230226_01.jpg▲「マークス不動産」の有馬まどかさん

国交省のガイドラインで告知期間が明確に

――高齢の単身者世帯が増え、孤独死が増加傾向にあるといわれています。事故物件の取り扱い件数は、増えているのでしょうか?

「2022年に当社が取り扱った事故物件の件数は約180件で、前年比の1.5倍です。『成仏不動産』として、事故物件の売買に特化した事業を本格的に始めたのは2020年11月からなので、認知が広がり、増加したということもあると思います。

また、2021年10月に策定された国土交通省のガイドラインによって、不動産市場での事故物件の対応が明確になり、注目度が上がった面も大きいかもしれません。そうした背景や社会的な要因からも、事故物件の取り扱い件数は、増加する傾向にあると考えています」

――国土交通省のガイドラインとは、一般には事故物件、不動産用語で「心理的瑕疵物件」と呼ばれる、居住用不動産物件に関してのガイドラインですね。

「正式名称は『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』。以前は告知義務の規定も曖昧で、トラブルになりやすい要素が強かった事故物件ですが、賃貸の場合は事案の発生から概ね3年。売買契約では経過期間に関係なく、買主に告知しなければならない。これまでの状況を考えると、かなり明確になりました」

事故物件が次の入居者に渡るまで

――事故物件を扱わない不動産会社が多い中、なぜ積極的に事故物件の取り扱いを?

「当社代表の花原浩二に、不動産オーナーの方から『事故物件を買ってくれないか』と依頼されたことがきっかけです。調べてみると、事故物件は相場価格よりかなり安く、それでも売却できないケースがあると知りました。一方で、事故物件という条件を気にせず、価格的なメリットから積極的に活用したい人もいます。ただ、一般的な不動産情報ですと『告知事項あり』としか記載されておらず、詳細は問い合わせしなければわかりません。

需要もあり、供給したい人もいるのに、ネガティブなイメージが強いため、情報のマッチングができていない状況。また、事案が起きた後の対処によって、物件の価値の面にも取り組む余地があると考えました。当社は『不動産の可能性を追求し 世の中の困りごとを解決する』を掲げていて、事故物件もそうした課題の一つなんです」

――いわゆる事案が発生してから、物件が次の人に渡るまで、どのようなプロセスがあるのでしょう。

「特別な対応や条件、買取りメインのため、前後する過程もありますが、最初に物件のオーナーや紹介者の方から、ご連絡をいただきます。その後、現地を確認し、特殊清掃の見積り、不動産査定、処分品の見積りを実施。査定や見積りがOKならば、買取り契約を結びます。特殊清掃の実施や荷物の処分は、状況によって契約の前になることも後になることもあり、条件やご要望次第ですね。

契約後、物件の引き渡し決済で、買取りが完了。『成仏不動産』では、その後、物件のご供養を行い、リフォーム工事をして物件を販売します。
事故物件の対応に慣れたお寺や神社がご供養やお祓いを行い、ご購入者様に安心していただけるよう『成仏認定書』を発行。不動産会社として、元々内装にはこだわっているので、物件に合ったリノベーションを行っています」

jikobukken_20230226_02.jpg▲片づけが完了し、シートがかけられた部分の特殊清掃を行う前(左)。リノベーションを終え、完全に生まれ変わった(右) 画像提供:成仏不動産

――一般的な不動産会社の場合、どこから取り扱うものですか?

「事故物件に関わるとしたら、特殊清掃などが完了してから、査定に入る形になると思います。また、『成仏不動産』担当者は全員が相続診断士の資格があり、手続きをする士業の方のご紹介もしているので、まだ相続が完了していない状況から対応しています。一般の不動産会社だと相続が完了し、所有者が確定してからのご相談になるでしょうね」