領域や騒音”ご近所トラブル”の相談はどこにするべき?NG行動とは?

公開: 更新: テレ東プラス

――アンケートで一番多かったのが騒音問題。ペット、悪臭、領域問題もかなり見受けられました。

「そもそもご近所トラブルに関しては、違法と適法なラインが曖昧だと結論が出しにくいというのがありますが、例えば“悪臭”や“騒音”に関しては、わりと損害賠償請求が認められやすいです。法律上、保護されなければならないところに侵害があるかどうかという話で、悪臭や騒音の場合は数値化がしやすい。“これを超えるとちょっと我慢できない領域です”という受忍限度が計りやすいので、法律的な評価がしやすいんですね。住む上での権利が優先されるので認められやすい。
例えば、猫に餌やりをする方がいたためマンションに猫が集まってくるようになってしまい、それが異臭レベルになってしまったという事件がありましたが、複数の住人が訴え、損害賠償を合わせて約70万円支払わせたという事例がありました」

――それでは、領域問題はいかがでしょう。わかりやすい例でいうと、お隣がゴミ屋敷で粗大ゴミが自分の家の方にまできてしまうなど、情報番組などでもよく取り上げられています。

「ゴミ問題に関しては、それが自分の敷地内であれば、物を積んでいるというだけなので、こちらの権利を侵害しているとは言いにくいという実情があります。物が侵入して初めて、問題として捉えることができる。“自分の土地で何をしてもいい”というのが、そもそも財産権の始まりなので、“何をしようが関係ない、あなたの土地じゃないでしょ?”と主張されると難しい。ただ、隣の木の枝が自分の家の庭に侵入している場合などは、『枝を切ってください』と主張することはできます。
法律的に訴えたいとなると、例えば隣の家で発生した生き物(ネズミやシロアリなど)が自分の家に入って来るところを立証しなければなりません。そうなるとなかなかハードルが高くなってしまうので、行政側の動きがないと手出しできないという側面があります」

gokinjo_20230223_04.jpgPIXTA

――引っ越しをして新たな住居に住む場合、ご近所挨拶など、心がけた方がいいことはありますか?

「住む土地柄によって変わるとは思いますが、東京でいうと、そもそも人と接触すること自体がリスクを伴うので、リスクを最重視するのであれば、最初から関わらない方が安全だと思います。ご家族やお子様がいらっしゃるご家庭は、なかなか難しいと思いますが、一人暮らしの方であれば、今はSNSもあり、あえて近くの人との交流を選ばなくても生きていける時代になりました。
残念ながら、一人暮らしの方がご近所と関わることでトラブルを生んでしまう事例は結構あります。特に女性側のリスクは高い。ご近所のちょっとしたコミュニティに触れただけで、関心の対象になってしまうこともあるので、そういうことからトラブルに発展してしまう可能性はあります。

入居する前に周りをチェックするのはもちろん大事なことですが、トラブルに発展するモンスターは、いくらこちらが気をつけていても、後から入居してくる場合もあります。モンスターというのはどこにでもいるので、周囲との付き合いにあまり真面目になりすぎないというのも一つの手段。例えばモンスターにあれこれ言われた時、“1個1個向き合って、しっかり答えなきゃ”という意識を持たないこと。そういう真面目な思考を持っている方ほど、巻き込まれていく印象があります。どこについて話す必要があり、どこについては応じる必要がないのか、交通整理をして話していかないと、ただの言い争いになっていってしまいかねません」

――こういう心理面での駆け引きなどは自分ではなかなか思いつかないので、相手がどんな人物でどういう対応をすれば有効なのか…弁護士さんに相談するのも一手ですね。

「そうですね。やはり人間同士のトラブルなので、相手の感情を踏まえて対応しないと意味がありません。相手を否定せずこちらも認めず、それでいて慎ましく。精神面でだいぶ参ってるなと感じたら、すぐに我々のような専門家に相談した方がいいでしょう。現在の自分の立ち位置なども見極めることができますし、冷静な対応をアドバイスすることができます」

【杉山大介弁護士 プロフィール】

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早稲田高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業、東京大学法科大学院を修了し、司法試験に合格。「ベリーベスト法律事務所」所属。
特に注力している分野は、刑事事件、労働事件、広告やフランチャイズ、エンタメ関係の企業法務、外国人事件。ニュース、情報番組などのメディア多数出演。

(取材・文/蓮池由美子)