殺処分ゼロを目指して...全ての猫と人間が幸せに生きられる世の中に

公開: 更新: テレ東プラス

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2月22日(水)"猫の日"、BSテレ東は「BSキャッ東」に改名し、1日中猫まみれの番組を放送。藤あや子さんが番組MCを務める「猫のこと、ちゃんと考える~猫の幸せ 私の幸せ~」では、猫たちと幸せに暮らすために知っておきたい「保護猫問題」「猫を飼うことの責任」「猫の防災」について考えます。

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SNSでも大人気の藤さんの愛猫 "マルオレちゃん"(マルくんとオレオちゃん)は、今年も「BSキャッ東」の猫社長を務めてくれます! 元保護猫のマルオレちゃんと暮らす藤さんと、殺処分ゼロを目指し様々な活動をしている「株式会社ネコリパブリック」代表・河瀬麻花さんにお話をうかがいました。

マルオレ人気が保護猫周知のきっかけに

nekonokoto_20230219_03.jpg藤あや子さんとマルくんとオレオちゃん(写真提供:藤あや子さん)

――藤さんは、愛猫"マルオレちゃん"は保護猫で、猫のためのチャリティーなどを行っていらっしゃいます。河瀬さんの「ネコリパブリック」は、保護猫カフェや施設をはじめ、「ネコのバス」による譲渡会や、ブランド設立、企業とのコラボ商品販売、「ネコ市ネコ座」をはじめとするイベント開催など、保護猫に関わる様々な活動をしていらっしゃいます。

「私は個人で細々とやっていますが、河瀬さんの活動の広がりがすごいですよね。地域とタッグを組むなど発想が行動的です」

河瀬「あまり後先を考えないタイプで"とりあえずやってみる"ことにしているんです。やってみてから考えていますが、この方法だと周りのスタッフは大変みたいです(笑)」

「そのスピードが大事なんですよね。頭で考えてばかりだと、なかなか前に進んでいかないから」

河瀬「スタッフもみんな、猫を救いたいという思いで集まってきてくれているので助かっています」

「猫を飼っていると、どこか"いい部分しか見たくない"という自分がいて。悲しいことやつらい現実を突き詰めてしまうと苦しくなってしまうんですよね。それでもやっぱり避けては通れないことでもあるので、河瀬さんの活動を拝見して、改善していく方法があるのだと気づくことができました」

nekonokoto_20230219_04.jpgネコリパブリックの保護猫カフェ

――河瀬さんの「ネコリパブリック」は、2014年、岐阜県から支援事業の助成金を得て「自走型保護猫カフェ」を開店し、現在では全国に9拠点! 寄付だけに頼らず、イベントや物販、企業とのコラボで自ら収益を上げ、ボランティアではなく"自立したビジネス"にするところが、活動を継続し、世の中に広げていける方法だなと感じました。

「これは目からウロコで。一番理想とする形を実現されていると感じました」

河瀬「ありがとうございます。でも、まだ全然思うようにはできていない部分もあって。今はスタッフが純粋に猫と向き合ってこの活動を継続するための資金調達で走り回っている状態です」

「もちろん善意は大切ですが、それだけでは限界があるのも事実で。猫を救うのにも、猫と楽しく暮らしていくにも資金は必要ですから、河瀬さんたちのような活動が必要なのだと思います」

河瀬「実は、そこを理解してもらえず、"保護活動でお金儲けをしている"という悪いイメージを持たれることもあります。お金儲けではなく、あくまでも"活動を継続させるためには利益を出すことが大事"であり、"利益がないと活動ができなくなってしまう"ということがしっかり伝わっていけばと思っています。いずれは、これが当たり前だと思ってもらえる世の中になるようにしたいです」

「そういう面に関しては、まだ日本は遅れをとっているのかもしれませんね」

nekonokoto_20230219_05.jpgネコリパブリック ネコのバスによる譲渡会

――元保護猫の"マルオレちゃん"人気や、保護活動がメディアで取り上げられたりなど、ここ数年で保護活動の認知や保護猫を飼おうという動きも増えてきたように感じます。実際に変化は感じられますか?

河瀬「それは感じています。藤さんなど著名な方々が"保護猫を飼っている"と発信してくださったことで"保護猫"という存在を知った方も多いと思いますし、テレビなどで保護猫施設が紹介されることで、いざ保護猫を迎えようとした時の道筋もわかりやすくなったように思います」

「少しでも保護猫の存在を知ってもらえるきっかけになれていたなら私も嬉しいです」

nekonokoto_20230219_06.jpgマルオレちゃんは今年も「BSキャッ東」の猫社長として大活躍

河瀬「とても大きいと思います。(保護猫の)譲渡会をしていると、『1匹目はペットショップで買ったけど2匹目は保護猫を迎えたい』と言ってくれる方が多く、それだけ認知されてきているのだと感じます。ただ、ペットショップで買ったことを恥ずかしそうに隠されている方がいらっしゃいますが、それはまた違って。どこで出会ったとしても、愛情を持ってずっと飼っていれば素敵なことですし、猫を飼ったことで保護猫の存在を知ったということもあると思います」

「本当にそうですね。私もマルオレと暮らすまで"保護猫""地域猫"という言葉を知らなかったんです。今こうしていろいろ知ることができて、昔の野良猫とは違った猫にとってもいい環境になりつつあるのかなと変化は感じています。私がマルオレのことをSNSで発信しようとしたのは、そういう環境にいる子を1匹でも救えたらという思いもありました。それまではスタッフが『藤さんと連絡取れません』って嘆くくらい携帯電話を携帯しないタイプでしたけど(笑)、マルオレのおかげでばっちり使いこなせるようになりました」

河瀬「そうだったんですね(笑)。SNSで発信してくださったことによって、若い世代の方にも保護猫の存在を知ってもらえるようになったと思います。うちの20代の若いスタッフもみんな、マルオレちゃんのファンなんです。今日、藤さんにお会いできると話したら羨ましがられました(笑)」

nekonokoto_20230219_08.jpgネコリパブリックの保護猫カフェ

「私が発信することで、恵まれない環境にいる子たちが幸せになるひとつのきっかけになれているなら、こんなに嬉しいことはないですね。私自身も、マルオレが人とのコミュニケーションのきっかけになりました。これまで仕事場で挨拶や打ち合わせ以外の会話がなかったスタッフさんとも、『今日はマルオレちゃん元気ですか?』というところから会話が広がったりして。人と人の繋がりになっていると実感してます」

河瀬「素敵ですね。猫はずっと人と一緒に生きてきた動物なので、人と人を繋げることができるんだと思います。"猫にはウイルスか寄生虫のようなものがいて、それが猫好きな人の中へ入っていき、侵された人間は猫を助けずにはいられなくなる"という、不思議な説があるんです。猫に触れれば触れるほど、猫を助けずにはいられなくらしいです(笑)」

「わかります! なんでこんなにのめり込むんだろうと思っていたんですよ。飼い始めてから日々メロメロで、毎日何回『かわいい!』って言えば気が済むんだろうって自分でも思いますから(笑)」

河瀬「わかります! かわいいですよね」

「かわいいしかないんですよ(笑)」

猫の問題=人間の問題として考える

――お2人ともウイルスか寄生虫にしっかり侵されていらっしゃいますね(笑)。河瀬さんは、猫の問題=人間の問題として行政とも協力して活動されています。岐阜県飛騨市の"ふるさと納税"を活用して、猫の問題を通して人間の地域課題や社会問題を解決することに取り組まれていますね。

河瀬「猫は言葉が発せない分、飼う人間によって猫の猫生が変わり不幸になってしまう子もいるんです。多頭飼育崩壊や殺処分されてしまう子も、その飼い主の元に生まれてこなければ、もっと幸せな猫生を歩めたかもしれない。猫の問題を解決するには人間側の問題を解決していかなくてはいけないと思ったんです。まだまだ道半ばですが、こういう発想がもっと広がっていけばと思っています」
※「SAVE THE CAT HIDAプロジェクト」はこちら

nekonokoto_20230219_09.jpgふるさと納税の返礼品 細切り飛騨そばの乾麺「猫のひげ蕎麦」

「その視点が素晴らしいと思います。河瀬さんが活動されている飛騨市のように、私の故郷の秋田県も"動物に優しい地域"と掲げていて、私も『ワンニャピアあきた』という動物保護施設を何度か訪ねています。とてもいい環境で、私は『ここにいたら猫も幸せですね』と言ったんですが、館長さんは『猫は家族と暮らすことが一番幸せなんです。居場所はここじゃないんですよ』とおっしゃって。この言葉は胸にきました」

河瀬「私たちの元にもたくさんの保護猫がいて、スタッフが愛情を持って育てているので、卒業していく時は寂しい思いもあるんですが、家族の元に引き取られてしばらくたって送られてきた写真を見ると『こんな表情みたことない』という幸せな顔をしているんです。ちょっとジェラシーを感じてしまうほどで。それだけ猫にとって家族を持てることは幸せなのだと実感します」

nekonokoto_20230219_10.jpgふるさと納税の返礼品 「欲ばり乳(ニャー)製品セット」

「それは人間も同じかもしれません。最初は"猫を救ってあげたい"という気持ちでしたが、実は救われたのは私だったと気づいたんです。だって、こんなに幸せを与えてもらって、人生が全く変わりましたし、仕事にも前向きになれるし、生きる活力になっていますから」

河瀬「なりますね。私も猫を救っているというより、猫に力をもらっている感じです。『もうダメかも...』とピンチになると神風のようなものがくる。これって猫の恩返しかなと思うんです」

「それはあると思います。以前、フジコ・ヘミングさんとお会いした時、保護猫を飼っていらっしゃるので『私も保護猫を飼い始めたんです』と話したら『あなた、猫の恩返しがあるわよ』とおっしゃっていました。確かに、マルオレがうちに来てから、コロナ禍で大変な時もメンタルが良い感じに保てていて、ずっと幸せでしたから」

河瀬「わかります。みんな猫を飼ったら幸せになるんです」

nekonokoto_20230219_11.jpgふるさと納税の返礼品 「ぷにっと肉球 クリーム大福とまんじゅう」

――保護猫を引き取りたいけど、単身者や小さな子供がいる家庭はNGなど譲渡条件が厳しかったり、また高齢者は最後まで猫の面倒を見てあげられるかわからないという懸念からためらっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

河瀬「高齢者や単身者がダメという保護団体は多いですが、ネコリパブリックでは歓迎し、何かあった時にも困らないような仕組み『安心ねこ生活 猫生たすけあい制度』を作っています。毎月480円を寄付していただくことで、万が一飼い主さんに飼えない事情が発生した時は猫を引き取り新しい飼い主さんに繋げるという取り組みを始めます。元々は月1,500円~3,000円で始めましたが、より多くの方にご賛同いただけるようハードルを低くして、高齢者の方なども安心して飼えるように考えました」

「とても素晴らしい試みですね。人間もそうですが猫も長生きになってきているので、最後まで飼おうと思ったらタイミングが限られてしまいますが、その仕組みがあると間口が広がりますね」

河瀬「高齢者の方でも愛情を持って育ててくれる方はたくさんいらっしゃいますし、猫がいるだけで生活に張りが出て、頑張って生きようと活力が湧いてくると思うんです。また、そうやって飼ってくれることで殺処分にならない子を増やすこともできます」

「素敵です。朗報ですね、これは!」

河瀬「猫がいるだけで生活に張りが出て、頑張って生きようと活力が湧いてくる。でも、自分が死ぬ瞬間まで猫と一緒にいたいけど、自分が先に亡くなったら猫をどうしようということは、猫を飼っている人や飼いたい人は誰もが思うことでもあって。そこを解決できる仕組みを作って継続していけるようにしたいというのが、私たちの思いです」

「素晴らしいです」

nekonokoto_20230219_12.jpgネコリパブリックのアパレルブランド「NECOREPA」

河瀬「こういう仕組みや試みを、よりたくさんの方に知ってもらえるように、藤さんやマルオレちゃんにお力添えいただけたら嬉しいです」

「猫ちゃんの幸せのために協力できたら私も幸せです。やはりスピードは大事ですから、近い将来ぜひまたご一緒できることを楽しみにしています」

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2月22日(水)は1日猫まみれの番組を放送! また、かわいい猫ちゃんが時刻をお知らせする「猫時報」、猫グッズが集う「猫の日POP UP SHOP」、バーチャル空間「猫アイランド」、 #猫のことちゃんと考える チャリティキャンペーンなども実施。詳しくはこちら

【プロフィール】
藤あや子(ふじ・あやこ)
1961年5月10日生まれ。秋田県出身。民謡歌手として活動後、1987年「ふたり川」(旧芸名・村勢真奈美)でデビュー。1989年「藤あや子」に改名し、「おんな」を発売する。1992年「こころ酒」が大ヒットし「第25回日本有線大賞」を受賞、同年「第43回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。歌手活動以外にも最近は「マルオレちゃんのママ」としても活躍。保護猫活動などにも精力的に取り組んでいる。
オフシャルサイト
Twitter:@fuji_ayako
Instagram:@ayako_fuji_official @maru0reland
YouTubeマルオレランド

河瀬麻花(かわせ・あさか)
株式会社ネコリパブリック代表。日本の猫の殺処分ゼロを目指し、2014年から保護猫カフェを運営をメインに、保護猫イベント、譲渡会を開催。また保護猫活動を広めるきっかけ作りのために、ブランド設立、猫関連商品の物販、ECサイト運営、飲食店経営、企業とのコラボ商品販売、コラボイベント開催など、保護猫に関わる様々な事業を展開している。
ネコリパブリック

(取材・文/伏見香織)