佐久間宣行「『ゴッドタン』はカマさないと実現できなかった」

公開: 更新: テレ東プラス

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ギャラクシー賞を受賞した、芸人の話術の"盛力"を検証する「盛ラジオ」から、MCの佐久間宣行さん×企画・演出の入社6年目・27歳の町田拓哉ディレクターの対談。佐久間さんがテレビ東京時代、「青春高校3年C組」のプロデューサーとADで直属の先輩・後輩という間柄だった"師弟"によるトーク【後編】をお送りします。

※【前編】はこちら

佐久間さんはどんな先輩?

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――ギャラクシー賞受賞の後、佐久間さんがお祝いの会を開いてくれたそうですね。

町田「普段、後輩とあまり飲みに行かない佐久間さんが、美味しい焼き鳥に連れて行ってくれて。嬉しかったですね」

佐久間「一緒に『青春高校』をやった三宅(優樹)と3人で行ったんですよ。町田のギャラクシー賞祝いなのに、半分くらい三宅が喋って『お前の会じゃないんだけど』って(笑)」

――「盛ラジオ」の収録後は、お二人で何かお話されましたか?

佐久間「町田から『演出家の先輩として何か直したほうがいいところはありますか?』と聞かれてアドバイスはしましたけど、あまり立ち入りすぎないように思ったことだけ伝えた感じですね。でも、1回目の完パケを見たら、スゴい面白かった。繊細な企画ではあるので、踏んじゃいけないところがわかっている編集になっていて安心しました。芸人さんも出るまでは不安だろうけど、オンエアを見れば『やべぇ』とは思わないだろうなって」

町田「ちょっと意地悪な目線の企画なので、『芸人さんに、僕とまた仕事したいと思ってもらえるように、愛ある編集をしたほうがいいよ』というアドバイスをいただいて、それを常に頭に置いていました」

佐久間「演出方法は別に意地悪でもいいと思うんですよ。けど、その人達とずっと仕事していきたいんだったら、何かしら番組からもお返しするものがあったほうがいい。町田は芸人と仕事していきたいと言っていたので、だったら芸人さんとガッツリ仕事をするデビュー作に近い番組は、そこを大事にしたほうがいいという話はしましたね」

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――テレ東時代の佐久間さんはどんな先輩でしたか?

町田「最初は見た目から、"ちょっと怖いかな"というイメージでした(笑)。あまり和気藹々というタイプでもないので」

佐久間「僕のやってる番組は、制作会社やフリーのスタッフが多いので、ほとんど局員がいないんですよ。僕がディレクターで、その下のADだった局員は、今はドラマをやっている濱谷(晃一)とか祖父江(里奈)とか、配信部にいった太田(勇)とか5歳下くらいの世代までで、板川(侑右)が最後だったんですよ。そこから5年くらい空いて、『青春高校』で三宅がディレクターで入って、ADとして町田と吉川(肇)がついたんです。接する機会が少なかったから、"怖いだろう"っていうイメージになっちゃったんでしょうね」

町田「でも喋ってみたら、めちゃめちゃ優しかったです。企画書を持っていったら『発想は悪くないんだけど、似た企画を見たことがあるから、お笑いやりたいんだったら、他と被んない企画を考えたほうがいいよ』とアドバイスをいただきました」

佐久間「年齢的にはそこまで離れているわけじゃないけど、町田は久々の局員のADだったから孫を見ているような感覚なんですよね。だから"仕事さえちゃんとしてくれればいいや"と、価値観は共有できないものだと思って付き合っていたんです。でも、思ったよりも相談してきてくれて、僕がやってきたカルチャーに近いものにも興味を持ってくれて。自分の培ってきたものを押し付ける必要はないと思ったけど、聞いてきてくれたんで、伝えられることは全部伝えよう、と」

――町田さんの企画書を読まれてどう思いましたか?

佐久間「『盛ラジオ』はすごくいい企画ですけど、その前に見せてもらった企画も、あと一歩というところまでは行っていたんです。他と被らない"オリジナリティーの種"みたいなものがあったので、企画を作る感性はあるなと思いましたね。これは難しいんですよ。『ゴッドタン』とか『水曜日のダウンタウン』で5年前に通過したような企画を持ってくる人もいて。そういう子だと、何からアドバイスしていいかわからない」

20代は"盛り"も大事

――こうしたエピソードトークだけでなはく、たとえば就活やプレゼンなど実生活でも"盛力"が必要となる場面があると思うんですけど、盛り方のアドバイスはありますか?

佐久間「今回思ったのは、盛るにしてもハッタリにしても、自分の能力、やれること・やれないことを正確に把握している人は盛れるんですよ。それがわかってないと、盛っているものもリアルじゃないし、盛ったことで返ってきたものを自分ではできないから、結局評価が下がってしまう。自分の得意技とかスペックを把握してる人が、うまく盛ることができるんだと思いました。日常生活もそうで、ハッタリが後で自分の首を絞めることにならないか、自分のことがちゃんとわかってないといけない。"ここでウソをつくと自分が苦しくなる"とか、"自分が我慢出来ないこと"を把握できていることが大事だと思います。

でも、今の町田の場合は、多少ハッタリをかましてでも自分のキャリアをあげていかなきゃいけない時期。できない仕事も『できる』と言って受けたほうがいいと思いますね」

――佐久間さんも町田さんと同じ20代後半の頃はそうだったんですか?

佐久間「その頃は『ゴッドタン』がレギュラーになるかならないかという時期で。当時は、今みたいにお笑い番組が多いわけじゃなくて、テレ東には『やりすぎコージー』しか芸人の番組はなくて、あの頃のおぎやはぎと劇団ひとりは、今でいうとランジャタイや真空ジェシカみたいなポジションだった。だから、カマさないと実現できなかったですね。

自分が決定的に向いてないことはやめたほうがいいけど、言わなきゃいけない時期だと思いますよ。僕も独立して1年目のときはまたそういう時期が来たし」

――今はまた若手のような時期を一周している感じですか?

佐久間「そうですね。ある程度僕がどういう人かわかってオファーしてくれる人が多いですが、NetflixとかDMMは僕が初めてバラエティを作るから見る目が厳しかったりしますよね。"どんなもの作ってくれるんですか?"みたいに。そういう意味では、やっぱり多少ハッタリで『見えてます』とか言わないと(笑)」

――最近、同じテレビ東京の大森時生さんやフジテレビの原田和実さんなど、20代の若い世代の活躍が目立っています。町田さんは意識されたりはしますか?

町田「めちゃめちゃライバル視しているというわけではないですが、やっぱり話題になっている作品はチェックして、"負けたくない"っていう思いはありますね。
自分の中のテーマとして"新しいもの"とか"自分にしかできないもの"を作りたいという思いがあるので、企画を考えるときはその点をすごく意識していますが
後輩の大森くんは、絶対僕が作れないものを作っているからすごくリスペクトしてます。
なので今回はギャラクシー賞という形で評価していただけたのは嬉しかったですね」

――「盛ラジオ」の第2弾が実現したら出て欲しい人はいますか?

町田「理想は、オードリーさん、ハライチさん、バナナマンさん、さらば青春の光さんとかに出てもらえるような番組になったら嬉しいですね」

佐久間「僕が見たいのは向井(慧)くん。こういう"ラジオスター"と、"トークが面白い人"の両輪で見たい。令和ロマンとか囲碁将棋とか平場のトークも面白いから、これからの芸人さんにも出て欲しいですね」

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【プロフィール】
佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
1975年11月23日生まれ。福島県いわき市出身。1999年、テレビ東京に入社し、「ゴッドタン」「ウレロ☆シリーズ」「NEO決戦バラエティ キングちゃん」「青春高校3年C組」などを担当。2021年3月にテレ東を退社しフリーランスとなり、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」、「東京03とスタア」(日本テレビ系)、スマホ映画「夢の雫と星の花」などを手掛ける。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティも務め、2022年10月には横浜アリーナで1万人規模のイベントを開催。著書に「佐久間宣行のずるい仕事術」(ダイヤモンド社)など。
Twitter:@nobrock
YouTube

町田拓哉(まちだ・たくや)
1994年12月24日生まれ。東京都出身。2016年、テレビ東京入社。「盛ラジオ」「真夜中のデパート自由に使えたら」「カマシ愛」「この世は【ご報告】であふれてる!?」「世界のお店にツッコみたい!」を企画&演出。 現在は「家、ついて行ってイイですか?」のディレクターを担当。
Twitter:@takuyamachida


(取材・文/てれびのスキマ)
Twitter:@u5u