後輩のカンペで先輩が大スベリ!?「盛ラジオ」佐久間宣行×町田拓哉”師弟”トーク!

公開: 更新: テレ東プラス

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昨年10月から全6回にわたり放送された「盛ラジオ」が、ギャラクシー賞 2022年11月度月間賞を受賞。これを記念し、番組MCの佐久間宣行さんと、企画&演出の町田拓哉ディレクター(テレビ東京)の"師弟"対談が実現しました。

お2人は、佐久間さんがプロデューサーを務めた番組「青春高校3年C組」で、現在入社6年目の町田Dが新人だった頃にADを担当していた直属の先輩後輩。この番組が生まれたきっかけは、当時の佐久間Pのトークだった!?

一度はオファーを断った!?

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――「盛ラジオ」は、芸人の"盛力"に注目し、ラジオで話したエピソードと実際の映像の差を見る検証バラエティ。ギャラクシー賞では「アイデア、目の付け所のよさが光る。決して芸人を窮地に追い込もうとするのではなく、芸人の凄さを明らかにする番組になっているところもいい」という選評でしたが、町田さんはどんな発想でこの企画を考えたんですか?

町田「『青春高校3年C組』は複数の制作会社や他業界の会社と組んでいたので、立ち上げ当初は毎週20個くらい会議があったんです。佐久間さんは会議を盛り上げるためにアイドリングとして毎回エピソードトークをされるんですが、同じ話でも回を重ねるごとにブラッシュアップされて面白くなっていて。そういう"盛り"の技術にフォーカスした番組を作りたいと考えました」

佐久間「で、俺で思いついた企画だから、MCやってくれって言われて(笑)」

――佐久間さんは一度はオファーを断られたんですよね?

佐久間「最初は演出の方法が決まってなかったから、"芸人が盛っている前提の番組だと嫌だから、その部分をどういう演出にするかブラッシュアップしてくれ"と宿題を出して返しました。そうしたら町田は、作家に『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の興津(豪乃)くんとか、ラジオをやっている芸人の気持ちがわかる『オールナイトニッポン』の福田(卓也)を入れて、企画の肝はそのままに演出の方法をもみ直してくれたんです。『これなら出てくれた芸人さんが損はしないし、いいところが見えると思います』って言うから、引き受けました」

――佐久間さんが"演者"として出るにあたって気をつけたことはありますか?

佐久間「ひとつは、僕がMCをやると僕が考えた企画に見えちゃうから、『後輩の企画だ』ってちゃんと言ったほうがいいな、と。あとは、MCといっても、もうひとり小峠(英二)くんがいて笑いの部分を担う必要がないようにしてくれたので、小峠くんとは違う部分を寄与するようにして、後は編集に任せることにしました」

――収録での町田さんの演出で気になったところはありましたか?

佐久間「1回だけ。こいつが何回もカンペを出してくるんですよ。流れ的にも絶対にスベると思って無視してても執拗に出すから、どうしても言わせたいんだなと思ってマンキンで言ったら、きっちりスベって(笑)。ショックだったのか、そのあとまったくカンペ出さなくなった(笑)」

町田「これ、ラジオでも話していただいたんですけど、マジでNO盛りです(笑)」

佐久間「後で謝ってきたもんな(笑)」

町田「『スベらせてすみませんでした』と(笑)。次の展開をどうするかとか目配せで早くできるので、カンペは佐久間さんにしか出してなかったんですが。それまでは調子良かったんですよ。ウケてるのもあった」

佐久間「基本はウケてた」

町田「"ウケたぞ!"と思って調子に乗って、大スベりさせちゃいました(笑)」

――今回、6組の芸人さん(三四郎鬼越トマホークミキ、シソンヌ・長谷川忍コットンきょん錦鯉アルコ&ピース)がパーソナリティとして出演しましたが、キャスティングはどのように決めたんですか?

町田「ラジオで人気のある方を中心に出ていただきたかったので、三四郎さんやアルコ&ピースさんにお願いして。普段のエピソードトークが面白い人も見てみたいので、ミキさん、錦鯉さん、長谷川さん、鬼越トマホークさんたちにも出ていただきました」

――芸人さんそれぞれに"盛り"のテクニックが違って興味深かったです。

佐久間「思っている以上に芸人の色が出たのが面白かったですね。三四郎は、起きた出来事を膨らませるのではなく、自分たちの目線がひねくれているっていうことで面白くする。ミキは、漫才と同じで出来事そのものを大きくするんじゃなくて、自分たちの感情を大きくする。"普通の出来事も芸人が喋ると面白くなる"の典型で、すごく勉強になりましたね。あと、単純にアルピーがスゴかった! ラジオが上手い! お互いにけなし合うこともできるし、一方が嘘ついて一方が訂正することもできる。ラジオに関しては、テレビでの千鳥と同じくらい高いレベルだと思いましたね」

町田「聴いているだけで映像が鮮明に浮かび上がるのがスゴいと思いました。アルピーさんのロケは、正直ハネてはなかったんですが、それを、あれだけ自分たちの世界観で喋れる。どんなロケでも面白くしゃべってもらえるという安心感がありました」

――「盛ラジオ」はトークのスゴさもよくわかりますけど、ロケのテクニックの違いなどもよくわかる番組だなと思いました。

佐久間「そうなんですよね。芸人によって同じような情報のロケでも、イジり方とか、こなし方とか、コンビ芸とか、全然違うんだなと思いましたね。長谷川(忍)くんときょんはコンビじゃなかったから、そういう"阿吽の呼吸"は生まれず、ラジオの方はあまりうまく行ってなかったけど、スタジオでは長谷川くんがどういう温度にするか主導権を握ってやってくれたんで面白くなりましたね。さすがノってる芸人さんだな、と」

――佐久間さんはラジオのオープニングトークなどでは準備されるタイプだとおっしゃっていますが、そうしたトークではどんな盛りテクニックを使っているんですか?

佐久間「"盛り"というわけじゃないんだけど、自分の感情をどのくらい出すか、出さないかで面白さは違うんだなということは実感してます。このディテールを話さないとフリとして機能しないとか、ここを全部カットしたほうがいいというのは毎回勉強ですね。僕がよくやっちゃうのは、盛り上げてハードル上げて、オチが想定できちゃうこと。作家の福田から『この部分を落として、サラッと言ったほうが笑えますよ』とよく指摘されるので、意識するようにしてます。放っといても盛っちゃうほうだから、ラジオでは逆に削ぎ落としている感じですね」

――三四郎さんも削るテクニックを見せてましたよね。

佐久間「そうそう。ラジオ上手い人はそうなんだと思います。ただ、コンビとはちょっと違うところもあるんですけど。コンビだと嘘ついてももうひとりが訂正してくれるけど、ピンの場合はリスナーにツッコんでもらえない限り流れていっちゃうんで」

町田「佐久間さん、たまにとんでもない大盛りをしていることありますもんね(笑)。飼っている亀のサイズが50cmとか」

佐久間「あったね(笑)。面白い出来事を盛ったんなら自分の心情もわかるけど、別に19 cmを50 cmって言っても面白くないじゃない。だから、なんで盛ったのか自分でもわからない(笑)」

町田「すぐバレてましたし(笑)」

佐久間「そんなミドリガメ、日本にいねえから(笑)」

(※2022年5月11日放送の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』でのトーク。ミドリガメが50 cmほどに成長したと話した後、リスナーからの指摘で35 cmに修正するも、それでも大きいというリスナーの指摘が再び届き、下方修正を繰り返した)

演者としての今後は?

――「盛ラジオ」は必然的に芸人さんのトークを分析する形になっていますが、昨今、お笑いだけが批評や分析を良しとしない風潮についてはどのように思いますか。

佐久間「たとえば『M-1』でいえば、もう20年近く漫才に点数つけるという形で競技化してやっているんだから、それを見て分析されたりするのは当然の話だと思いますね。あと、芸人という職業が弱者のマイノリティなものでカウンターカルチャーだったら、まだその言い分は通用するけど、芸能界で最強の職業になって、バラエティだけでなくワイドショーやニュースも司会が芸人という時代で、"自分たちの解説だけは自分たちにしかできない"っていうのは、そんなわけないと思いますね」

――町田さんは演出家として見て、佐久間さんのMCはどのように評価されますか?

町田「評価できるような立場ではないですけど、めちゃくちゃ優秀」

佐久間「これ記事になるとホントかウソかわからない。俺が言わせてるみたいになっちゃう(笑)」

町田「お願いした時点では、まだ番組MCをたくさんやられているわけではなかったんですが、1回目の収録したときに、本当にスゴいなと思いました。こちら(制作)サイドの気持ちも分かっているし、"どっちの方向に行きたい"と伝えたら、すぐ進行していただけるし」

佐久間「いや、番組によりますよ。『盛ラジオ』は町田のやりたいことも、出ていた芸人さんたちの得意技もわかっていたので、求められる仕事ができたんですけど。番組によっては"明らかに制作側の詰めミスだな"ということが現場で起きたりして、後に起きる悲劇が想定できちゃうんですよ。"絶対にどスベりする"ってわかりながら、なんとかしようとしながら、"多分無理だな"と思いながら...というときもあります(笑)」

――とはいえ、2022年は"演者"としても佐久間さんは飛躍の年となりましたね。ソフトバンクのWEB CMに出演されたり、NHKのゴールデンタイム(『「鎌倉殿の13人」ウラ話トークSP』)のMCをしたり。

佐久間「あれは驚きの仕事でしたね。お引き受けしたからにはちゃんとやろうと思っていますが、実は出る仕事は結構お断りしてるんですよ。作る仕事のスケジュールで埋まっている状況なんです」

町田「でも役者の欲、出てきてるんじゃないですか?(笑)」

佐久間「いや、出てきてはないんだけど(笑)。ソフトバンクのCMに出たとき、"下手だからもう出るのやめよう"と思ったけど、ディレクターの方に『佐久間さんはこれからも出るべきだ』って言われて(笑)。プロの職業だから、"役者"はやらないと思うけどね」

――でも近い将来、深夜の秋元康さん企画のグルメドラマで主演してる姿が見えます(笑)

佐久間「いや......あり得るかもな(笑)。よっぽど面白いと思ったらやるかもしれないけど、まだまだ作りたい企画がありますからね。50歳までにそれをちゃんと世に出すことを優先して。そこから先は何も考えてないです」

明日公開の【後編】では、佐久間さんが考える仕事においての"盛力"などについてうかがいます。

【プロフィール】
佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
1975年11月23日生まれ。福島県いわき市出身。1999年、テレビ東京に入社し、「ゴッドタン」「ウレロ☆シリーズ」「NEO決戦バラエティ キングちゃん」「青春高校3年C組」などを担当。2021年3月にテレ東を退社しフリーランスとなり、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」、「東京03とスタア」(日本テレビ系)、スマホ映画「夢の雫と星の花」などを手掛ける。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティも務め、2022年10月には横浜アリーナで1万人規模のイベントを開催。著書に「佐久間宣行のずるい仕事術」(ダイヤモンド社)など。
Twitter:@nobrock
YouTube

町田拓哉(まちだ・たくや)
1994年12月24日生まれ。東京都出身。2016年、テレビ東京入社。「盛ラジオ」「真夜中のデパート自由に使えたら」「カマシ愛」「この世は【ご報告】であふれてる!?」「世界のお店にツッコみたい!」を企画&演出。 現在は「家、ついて行ってイイですか?」のディレクターを担当。
Twitter:@takuyamachida


(取材・文/てれびのスキマ)
Twitter:@u5u