遺品整理のプロに聞く”生前整理のコツ”遺族に見せられない”やばいもの”が出てくることも

公開: 更新: テレ東プラス

「人目に触れさせたくないもの」どうしておけば...

――遺品整理の場合、ご遺族に確認を躊躇するようなものが出てくるケースもありますよね?

「ありますね。アダルト系の本やDVDなどはザラですが、これらはまだいい方で、グッズなどはかなり生々しいものもあります。故人とはいえプライバシーの観点もありますし、確認したらご遺族がショックを受けるようなものについては、配慮して処分します。

写真がご趣味の方のケースでは、ご家族も入らないようにしていたスペースから、かなりきわどいお写真が大量に出てきまして...。完全にお任せいただいている状況なら、私たちも落ち着いて対処できるのですが、ご家族も一緒に作業している場合、『これはご遺族の目に触れさせてはいけない』と思うものが出てくると、そっと処理するために苦慮するケースもあります」

――もしもそういった趣味を持つ人の場合、家族や他人に見られたくないものは、どうしておくのがいいのでしょう?

「ご自身で処分するのが一番ですが、お手元に置いておきたいから所有されているわけで...。怪我や病気などで入院される際は、万が一を考えて一度処分し、『元気になったら、また所有しよう』と励みにされるのがいいと思います。
どうしても手放したくないのであれば、箱や袋にまとめておき『これはこのまま捨てて』と貼り紙をしておくこと。業者はそれだけで状況を把握し、適切に処理すると思います」

――そうした趣味のもの以外で、対処に困るものはありますか?

「ご遺骨ですね。ある時、水子供養の紙と一緒に保管されたお骨が出てきたことがあります。ご依頼くださった息子さんも存在自体をご存知なかったそうで、ちょっと取り乱していらっしゃいました。そうしたものは私どもでは対処できないため、お寺といったご供養できるところへご相談いただく形になります。

人のお骨ではなく、ペットの遺骨をご自宅に保管されているケースも多いと思います。そうしたご供養はどうするのか、ご家族で確認しておいた方が安心ですね」

――先々のことを考えて、"遺される人に、わかるようにしておいた方がいいもの"はありますか?

「部屋や倉庫、引き出しなどの鍵です。整理のために開けようとしたら、鍵がない。使わなくなったものを含めて、たくさんの鍵がまとめて置いてあるけれど、どの鍵でどこが開けられるのかわからない...といったケースがかなりあります。

一つひとつ試すのは時間がかかりますし、バールなどで開けると扉がダメになってしまいます。業者を呼んで開けてもらうとなると高額になってしまうので、使わない鍵は処分し、どこを開ける鍵なのか、ご家族がわかるようにしておいてください。

若い方ですと、写真を全てスマホに保存していて、遺影に使うお写真を取り出せないといった話もよく聞きます。パスワードの管理は大事ですが、もしもの時のために、ご家族にわかるようにしておく必要性を感じますね」

遺品整理や生前整理をする時のコツ

――遺品整理や生前整理を一般の方が作業する場合、どういったことがハードルになるのでしょう?

「まずは片付けるべきものが多くて、心が折れるところですね。気持ちがくじけてしまうと、そこで思考停止してしまって手が止まり、さらに時間がかかってしまいます。量が多いことで、『何から手をつけていいのかわからない』となる人が、ほとんどではないでしょうか」

ihin_20230125_2_03.jpgPIXTA

――進め方のコツはありますか?

「早く判断できるスペースから手をつけること。ご実家の場合、ご自分の荷物であれば、残すもの、捨てるもの、後で判断するものを選り分けることから始めるのもいいと思います。下駄箱や納戸も、割と早めに判断できる場所です。素早く片付けやすい場所から始めると、ペースがつかめて、作業しながら自分の中の判断基準が固まってスムーズに進められます。

逆に後回しにした方がいいのは、傷んでいるものの処分などで気持ちが下がる台所、物が多い上に、思い出の品も多く置かれているリビングです。そうした時間がかかる場所は、他の部屋が片付いてペースができてから手を付けてください。

また、写真やアルバム、文集、思い出深いものなどは見始めるとキリがありません。完全に手が止まってしまうので、中身は見ずにまとめておきます。写真や文集くらいのボリュームであれば、持ち出して時間のある時にゆっくり整理できますから、最後まで手を付けないようにしましょう」

【松井麻律 プロフィール】
1984年栃木県栃木市出身。遺品整理や生前整理、引っ越し事業などを行う「株式会社トカノ ハート&ハート」代表、遺品整理アドバイザー。映像制作やフィットネスジムのインストラクターを経て、遺品整理や生前整理業を起業。処分品を無料で引き取り、生活困窮者へ寄付するなどのボランティア活動も行っている。

(取材・撮影・文/鍬田美穂)