「一番見られたくなかったのは裸でした」ノーブラノーパン旅作家・歩りえこの”ドM”な人生の歩き方

公開: 更新: テレ東プラス

――『ブラを捨て旅にでよう』では、20ヵ国分の衝撃エピソードが紹介されています。女性の一人旅でかなり危険な目に遭われていて、本当に驚きました…。

「そうですね。アルゼンチンでは、人通りの少ない道で首絞め強盗に襲われましたが、それこそ全身フルボッコされ、死にかけた事件だったので、当時は本当に落ち込みました。むち打ち症になり、体もアザだらけでしたし、“このまま旅を終わらせて日本に帰って、温かいご飯を食べてお風呂につかりたい”と思いましたが、“ちょっと待てよ。このまま帰ってしまったら嫌な記憶のまま私の世界一周が終わってしまう…。だったらもうちょっと踏ん張って、いい記憶を持って帰りたい”と、逆にポジティブに考える自分がいたんです。
首絞め強盗は、私の死生観が人生で最も揺らいだ出来事でしたし、普通なら思い出したくもない恐ろしい記憶です。けれど、自分の中に元々ドМの要素があったからか、命の危険を感じた瞬間、“私は生きている”ということをリアルに感じられたような気がしました。
私のこれまでの人生を振り返ると、どん底まで悪いことがあった後は、必ず素晴らしいことが起きる、まさに山あり谷あり。だから今回も、“次はいいことが起きる”と信じて、治療しないまま、すぐブラジルに向かいました」

――普通の人では、なかなか見習うことができないポジティブさですね。歩さんは、昔からドMな部分があったのですか?

「母がものすごく厳しかったからか、小さい頃の写真が全部泣き顔なんです。怒られ続けるのが当たり前、だから気持ちをどうにかポジティブに変換して、悲しみを喜びに変えなければ生きていけないと子どもながらにわかっていて…。“怒られる=楽しい”に変換しようと頑張ったのが、ドМになるきっかけだったのかもしれません。
意外と思われるかもしれませんが、実は17歳くらいまで人前に出ることが嫌で、誰にも認められていないと悩んでいました。両親が厳しく、自分を出せず苦しかったので、もっと認めてもらいたいという気持ちから海外へ向かい、世界旅行に繋がっていったのだと思います」

――なるほど…。認められたいという気持ち、自分を解放するために海外へ出たわけですね。

「実は小さい頃から『算数障害(ディスカリキュリア)』があり、国語や社会は満点でも、例えば1+1=2という数の概念などがうまく理解できないんです。持って生まれた認知特性で、時間の感覚やお金の計算など、数量に関することが苦手。1度気になったことは、納得しないと先に進めない。
家や学校では問題視されてしまいましたが、私はそれを自分の長所だと思っていましたし、こういう特性があって今があるので、本当に良かったと。いろいろな強いこだわりを持っているからこそ、世界中を自分の足で歩き、自分の目で直接確かめようと思えた。それに海外では、それを問題と考えず、特性として捉えるのが一般的で、他がダメでも良い特徴だけを伸ばそうとしてくれます。だから私には海外が合っているんだと思います」

12月18日(日)夜10時に公開する【後編】では、歩の結婚そして離婚、シングルマザーとしての奮闘、将来のことについて話を聞く。

ayumi_20221217_04.jpg歩りえこ1st写真集『スフィア』Ⓒ山岸 伸/講談社

【歩りえこ プロフィール】
1981年9月22日生まれ。東京都出身。清泉女子大学文学部卒業。作家・女優・タレントとして幅広く活動。学生時代に訪れたアメリカでノーブラで闊歩する女性の自由な姿に感銘を受け、一人旅に没頭。世界94カ国をバックパッカーとしてめぐる。その恵まれた容姿からスカウトされて芸能デビュー。モデルやキャンペーンガールなどをこなす傍ら、旅先で撮りためていた写真にエッセイをつけて発表するようになり、『エガオノオト』(2010年・自由国民社)をはじめ2014年までに書籍を5冊刊行。特に『ブラを捨て旅に出よう』(2012年 講談社文庫)は14刷、4万2千部のヒットとなり、2020年に水原希子主演でドラマ化されている。
講演会、さらにはワークショップを開くほか、雑誌やネットへの寄稿なども精力的に行っている。

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(取材・文/宮﨑まゆ)