そこまでやる!?異色スーパー「激安」の秘密は...売り切れ御免!:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

12月16日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「常識を破る!異色のスーパー~『食品ロス削減』に挑む~」。
経済の発展と共に増加した食品廃棄物。「食品ロス」削減の国際的な機運が高まる中、その先頭を走る人々の奮闘をカメラが追った。

スーパーの常識を覆し「そこまでやる!?」

値上げラッシュが止まらない中、開店するや、お客が殺到するスーパーがある。
中国地方を中心に展開する「エブリイ」。広島県や岡山県などに45店舗、新鮮な食材を手頃な値段で販売する人気の店だ。

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「エブリイ」の基本方針は、生鮮食品をその日のうちに完売させる「売り切れ御免」。売れ残りが無く、廃棄コストがかからないため、その分、安く売ることができる。
しかし、お客としては、売り切れがあると困るのでは...? そこで聞いてみると、
「売り切れになってでも、値段を抑えて届けてもらえるというのはうれしい」
「なくなることもあるかもしれないが、今、すごく物が高くなっているので助かる」
とのこと。

午前4時、岡山市の中央卸売市場。やってきたのは、「エブリイ」津高店 鮮魚部門の責任者・藤井和敏さんだ。売り場の責任者が商品を仕入れるのが「エブリイ」流。
この日、藤井さんは旬のアジに目をつけた。長崎産の新鮮なアジは、目玉として1匹100円で売り出すと、開店からわずか3時間で完売に。
アジ以外の魚にも、売り切る方法があった。時間に余裕のあるお客さんが多い朝は、魚を丸のまま販売。昼が近づくと、調理がしやすい刺身用のブロックに。夕方まで売れなければ、ブロックを切ってお刺身に。それでも売れなければ、すぐに食べられる寿司にする。

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「エブリイ」は、こうした工夫で徹底的にロスを削減。スーパー業界で水産物のロス率は8.4%(※2021年スーパーマーケット年次統計調査)だが、「エブリイ」は、仕入れと販売の工夫で、ほとんど売り切ってしまう。

お客からのクレームや販売機会ロスを防ぐため、多くの店にとって、商品の売り切れはご法度。しかし「エブリイ」は、徹底的に売り切る手法で、業績は右肩上がりだ。
野菜や魚は完売続出で、精肉も人気。岡山県産の鶏もも肉100グラム118円(※取材時)を始め、国内屈指の高級ブランド「宮崎牛」も、生産者から一頭買いするなどして価格を抑えている。

しかし精肉には、一つ問題が。宮崎牛は、売ることができていない部位が約20%もあったのだ。ネックやスネ、うちモモなどは神経や筋が多く、調理に手間がかかる。そのため、お客に敬遠され、スーパーでは売れ残りやすい。さらに見栄えを良くするため、カットされる肉。この時に出る脂身などの端材も、ロスになりやすい。

4月、広島・福山市にある「エブリイ」本部で、あるプロジェクトが動き始めた。
肉のあらゆる部位を売り切り、徹底的にロスをなくすため、わざわざ専門店を作るというのだ。
プロジェクトを託された、商品統括精肉バイヤー・小野優太さんと開発スーパーバイザー ・小林良平さんは、早速、売れ残りやすい部位を使った惣菜の開発に取り掛かる。
まずは、ネックやスネなど筋の多い肉をミンチにし、牛脂を加える。さらにスネや内モモなどを入れ、キャベツを投入。油で揚げて出来上がったのは「メンチカツ」だ。

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見た目はおいしそうだが、味については、「和牛の風味は付いているが、ちょっと油分が多い。割合を変えた方がいい」と小野さん。そこで小林さんが繰り出したのは、「その手があったか!」と膝を打つアイデアだった。肉のロスゼロに挑む専門店。その全貌はいかに――。

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欲しい分だけ買えます!「量り売り」スーパーの挑戦

東京・北千住にある駅前のデパート「北千住マルイ」に、一風変わった期間限定の店「斗々屋」がオープンした。必要なものを必要な分だけ買える「量り売り」の店で、期間限定で東京都心に度々出店し、ファンを増やしている。

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オートミールやお米、豆やナッツ類...。容器は持参するか、店で買ったり借りたりするのもOK。借りた場合、洗って返却すれば全額返金されるため、実質無料で借りられる。

「斗々屋」最大の店舗は京都・上京区にあり、約700種類の食品を販売。その多くは量り売りで購入できる。セルフで金額が分かる装置が設置され、自動で容器の重さを引いてくれるため、お客からも「必要な分だけ買えるのは、ロスが少なくていい」と好評だ。

有機栽培の京野菜や果物ももちろん量り売り。「斗々屋」のマネージャー・北野岬さんの毎朝の日課は、店頭の野菜をチェックすることから始まる。
売るのが難しくなった野菜は、廃棄するのかと思いきや、店の奥にあるレストランでおいしく調理。しわしわになった野菜がおいしそうなミネストローネに。さらに真空でビン詰めにし、保存も。これが、「斗々屋」で"三毛作"と呼ぶ食品ロス削減の技だ。
わずかに残った野菜の端切れも堆肥にし、農家に渡す。これで野菜のロスはゼロになるという。

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おばあちゃん子だった北野さんがよく耳にしていたのは、「もったいない」という言葉。フランスに留学した際、町中に量り売りの店があり、地元の人たちはそこで買い物をするのが当たり前だったという。

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「こういうお店が日本に増えたら、ゴミ問題や食品ロス問題を解決できる」と北野さん。

一方で、「斗々屋」はある悩みを抱えていた。買い物をするには容器を持参するか借りなければならないため、近所に店がないと利用しづらいという声が多く寄せられていたのだ。
そこで北野さんは、ある秘策を考えていた。

5月下旬。北野さんが向かったのは、京都・北区にある商業施設「コープきぬがさ」。
軒先に車を停めて荷台を開けると、そこにはビンに入った「斗々屋」の食品が。北野さん、店から遠くに住むお客のために、移動販売にやって来たのだ。

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この移動販売車の制作を手掛けたのが、「ダイハツ工業」くるま開発本部・菅嘉毅さん。「斗々屋」の活動もサポートしている。
実は「斗々屋」の移動販売には、解決すべき課題があった。店と同じ、自動で重さが分かる装置を荷台に置くと、商品が半分しか置けなくなってしまうのだ。

軽自動車の大手として小売業を支えてきた「ダイハツ」は、移動販売車に力を入れ、ビジネスチャンスがあると考えている。今回「ダイハツ」が作ったのは、軽トラック「ハイゼット」をベースにし、荷台に商品を展示できるようにした車。

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「たくさん物を作って、たくさん売れる時代じゃなくなってきている。少量多種みたいな一つ一つのお客さんに向き合うことを積み重ねていくと、やるべきことが新しく見えてくる気がする」と菅さん。「斗々屋」の課題解決にも、協力を惜しまない。
ヒトとモノが動く環境を自ら作り出し、車の需要を増やす...それが「ダイハツ」の狙いだ。

1週間後、菅さんは、京都の「斗々屋」に新しい商品棚を持ってきた。フレームを小型化したもので、商品のレイアウトが自由に変更できる。これで商品の陳列を減らすことなく、秤も置けるようになった。
「定期的に1~2週間にいっぺんでも来てもらったら、いろいろなものを買えるからいいかなと思います」と、お客の反応も上々だ。

そして9月、「京都ダイハツ販売 五条カドノ店」(京都・右京区)に、北野さんと「ダイハツ」の奥平総一郎社長の姿が。「ダイハツ」と「斗々屋」のコラボレーションは、大きなものになろうとしていた......。

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