かわいい棺、骨壺、遺影を作る人が増加!入棺体験で「生まれ変わった気持ち」になる人が続出する理由

公開: 更新: テレ東プラス

かわいい棺であることの意義

――布施さんの作品は、どれも個性的です。どのような素材で制作しているのでしょうか。

「主に海外の壁紙を取り寄せて使っています。壁紙はさまざまなブランドが出していて種類も豊富ですし、汎用性が高く、お客様から『これがいい』とオーダーいただければ、すぐにお作りできます。火葬しても問題ありません。
洋服の生地を見て『この柄の洋服がほしい!』と思う感覚に近く、私自身も、作る度に入りたい棺桶が増えています(笑)」

――布を素材にしたものもありますね。

「そうですね。ツイードやファーを貼るなど、洋服と同じような感じでデザインができます。今後は布を使った作品も、もっと作っていきたいですね」

hitsugi_20221126_06.jpg▲ツイードの棺は、愛知県一宮市で生地を買いつけ、制作。シックで上品な洋服のような印象になっている

hitsugi_20221126_07.jpg▲お人形のパッケージをイメージして作られたキッチュなデザイン。「若い子が入棺体験で入ると、すごくキャッチ―な写真になりますよね」と布施さん

――かわいい棺を用意して『死んだら、これに入るんだ』と思うと、死への恐怖が軽くなる気がします。

「葬儀業界にはデザインの要素が少なくて、かわいい棺やかわいい骨壺というのがない。でも『これなら入りたい』と思える素敵なもの、かわいいものであることの意義が、すごくあると考えています」

生前葬は自己肯定感が上がる人生の披露宴

hitsugi_20221126_08.jpg▲遺影に本人の好きなものをあしらったフォトフレームの制作なども行っている

――自分らしい最期を想像した時、素敵な棺のある葬儀で周りの人たちに送り出してもらえると考えると、生きることにも前向きになれそうです。

「実は私も、来年大々的に生前葬をやる予定で、今年はリハーサルとして友達に集まってもらい、プロの納棺師さんをお呼びして、プチ生前葬を行いました。納棺式では死装束の着つけをしてもらい、納棺師の方が誘導してくださって、参加した友人が一人ずつ湯灌をしながら話しかけてくれました。それが本当に良くて。

私が忘れていた出会いのエピソードや、私と出会ってどう感じているかなどの言葉をかけてもらって、『えっ、この人こんな風に考えていてくれたんだ。自己肯定感がこんなに上がることってある?』と目を閉じて聞きながら嬉しくなって、ニヤニヤしてしまいそうなのを堪えました。
生前葬は、これまでお世話になった人に、感謝を伝える“人生の披露宴”だと考えているのですが、やってみたら自分自身の気持ちがすごく上がって、『これはやるべき!』と思いましたね。

そして棺が閉じられたら、みんなが『かわいい!』と口々に言ってくれて…。もちろん棺がかわいいのですが、棺桶に入っているだけで、自分がかわいいと言われているような気がして、また自己肯定感が上がりました(笑)。それに、葬儀で『かわいい』って言葉が出てくることって、まずないですよね。そういう意味でも、かわいい棺の意義があると強く感じました。『これは、死んでいても嬉しいわ。生きているうちに絶対体験すべき』と思いましたね」

――確かに、そういう自己肯定感が上がるイベントは、生きているうちにしたいですね。

「生前に棺をオーダーすると、保管場所に困るというネックもありますが、蝶番をつけてタンスのようにものを入れられるようにしたり、テーブルとして使えるようにしたりなどの提案もしているので、スペースの問題はそれなりに解決する方法を考えることが可能です。

自分が入る棺を考えたことのある人は、まだまだ少ないと思います。でも、自分らしい最期を迎えたいと思って終活を考える時『自分なら、どんな棺桶に入りたいのか』ということも、イメージしてみてもらいたいですね」

【布施美佳子 プロフィール】
秋田県能代市出身。棺作家、内装職人、クリエイティブプロデューサー。文化服装学院卒業後、アパレル、玩具メーカー勤務を経て独立。現在は、自身のアトリエで作品制作を行うのと並行し、入棺体験や終活などのワークショップも実施している。

(取材・文/鍬田美穂)