襖と欄間の作り方を学んだフランス男性が、帰国後”驚きの作品”を生み出していた!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお送りします。

手まりを愛するアメリカ女性が、藍手まりの産地で藍染めを体験

紹介するのは、アメリカに住む、「手まり」をこよなく愛するダナさん。

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平安時代、貴族の男性に親しまれていた蹴鞠が、江戸時代に木綿糸の普及によって母親の手芸として広まり、完成した手まりは、母から子にプレゼントされていました。
その後、歌に合わせて手まりをつく「手まり歌」が女の子の間で大流行。「あんたがたどこさ」は手まりをつきながら歌った童歌のひとつです。

ニッポンには、20カ所ほどの手まりの産地があり、草木染めで作られる香川県の讃岐かがり手まりや、絹糸を使った豪華絢爛な金沢の加賀手まりなど、その土地ならではの郷土手まりが今も作られています。
かつてはお城で暮らすお姫様の遊び道具だったことから、参勤交代で江戸に訪れた各地の姫君たちが故郷に持ち帰り、進化したともいわれています。

ダナさんが手まりと出会ったのは15年前。本屋で行われていた手まりの実演制作を見て、その美しさに感動。その後、地元の手まり教室に通って猛勉強し、150点ほど自作したそう。

ここで、手まりの作り方を見せてもらうことに。最初に米の籾殻をストッキングに入れ、丸く整えます。次は太い毛糸でグルグル巻きにし、その上から細い糸を巻いて真ん丸の形に。使う糸は、10センチほどの手まりで1キロ近くになるとか。

ベースができたら刺繍をしていきますが、その前に重要な工程が。それは、手まり全体の模様を決める「地割り」。球面を糸で分割し、独特の模様を作るための案内線を縫う大事な工程です。
地割りの種類は無数にあり、上級者になると細かく複雑な模様を作ることができます。

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最後は、手まりの良し悪しが決まる刺繍。ダナさんは難しい模様は一度図面に書き起こして仕上げるなど、スキルアップに余念がありません。

「日本てまりの会」に所属するダナさんは、会長の尾崎敬子さんが書いた本で勉強しています。尾崎さんは、戦後手まりの復興に人生を捧げた母・千代子さんの遺志を受け継ぎ、60カ国近くを訪れ、手まりの普及に尽力しています。

「私は、日本手まりの会が認定するレベル3の試験に合格したいんです」。年に1度開かれる検定審査は4段階に分かれており、ダナさんはすでにレベル2の高等科まで取得。レベル3(師範科)の合格を目標に、日々手まり作りに明け暮れています。

そんなダナさんを、ニッポンにご招待! 6年前に来日しました。

向かったのは、東京・世田谷区にある「てまり文庫」。日本てまりの会の本部が併設された、ニッポンでも数少ない手まり専門のミュージアムです。館内には日本各地の郷土手まりやコンクールの優秀作品など、100点ほどの手まりが展示されています。

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レベルの高い作品を、興味深く見て回るダナさん。すると、日本手まりの会の会長・尾崎敬子さんが登場! 来日の記念になればと会いに来てくださったのです。憧れ続けた尾崎さんとの対面に、「夢のようです」と大感激!

尾崎さんにダナさんの作品を見ていただくと、「いい色合いですね。素晴らしい」とお褒めの言葉が。検定でレベル3を目指すダナさんを「挑戦してください、楽しみにしています」と激励し、練習の励みになるようにと92色の刺繍糸をプレゼントしてくださいました。

さらに、尾崎さんが作った手まりと、手まりの刺繡が入った着物までいただいたダナさん。「ありがとうございます、一生忘れません」と感謝を伝えました。

続いて向かったのは、島根県安来市。島根には、ニッポンで唯一藍染めの糸を使った「藍手まり」という郷土手まりがあり、安来市は藍染めの織物「広瀬がすり」で江戸時代から栄えた街です。藍染めも勉強したいというダナさんは、152年続く老舗の藍染め工房「天野紺屋」でお世話になります。

早速、四代目・天野融さんの作業場を見せていただきます。藍染めの染料は、タデ藍と呼ばれる植物の葉から抽出される色素に石灰などを加え、発酵させたもの。職人は、温度や発酵具合を目と鼻と舌で確認します。この染料をかきまぜ、「藍の華」と呼ばれる泡の固まりができれば、染める準備ができた合図。

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いよいよ糸を藍甕へ。染料を約5分染み込ませて水分を搾り取ると、深い緑色が、空気に触れた瞬間に酸化して鮮やかなブルーに! ダナさんは「まるでマジックですね」とびっくり。染色の回数を増やすほど色は濃くなり、糸も丈夫になるそう。ダナさんも体験させていただき、色の変化を体感しました。

作業終了後は、天野さんのお宅で夕食をいただきます。のどぐろの煮付けなど、島根の郷土料理に舌鼓を打ち、ご夫婦との交流を楽しみました。

そして別れの時。お世話になったお礼を伝えると、天野さんから素敵な贈り物が。昨日ダナさんが染めた糸をプレゼントしてくださったのです。大感激のダナさんは、アメリカで作った藍色の手まりを天野さんにプレゼントしました。

あれから6年。ダナさんからのビデオレターを、天野さんと、日本手まりの会の尾崎さんに届けます。

帰国後も手まりを作り続け、この6年で作った数は100個以上! 尾崎さんにいただいた糸のセットは貴重なものなので、友人の結婚祝いの手まりなど、特別な時に使っているそう。

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6年前はリビングで手まりの製作をしていましたが、帰国後は引っ越しをし、専用の作業場を作って、一日中手まり作りをしていることも。来日した際、尾崎さんから「レベル3に合格するためには、難しいデザインに挑戦した方がいい」というアドバイスを受けたダナさんは、複雑な模様にも挑戦しています。

さらに新しい取り組みも始めていました。尾崎さんからいただいた着物に刺繍された手まりを実際に製作し、着物と一緒に展示しようと計画しているのです。
着物が好きな人と手まりを作る人、双方に興味を持ってもらえるということで、「なかなか面白いですね」と尾崎さん。2年前からは、手まり講座を生配信。登録者は400名に上り、中にはイギリスやドイツの視聴者もいるそう。

精力的に活動しているダナさんですが、実はまだ納得のいく作品ができておらず、レベル3の検定を受けていないそう。「来年にはチャレンジしたいと思っています。絶対合格してみせます!」。

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最後にダナさんは、尾崎さんに「私はいつも先生にインスピレーションを受けて、毎日手まりを作り続けています。またお会いしましょう!」と呼びかけます。「自信があるものを送っていただけたら、拝見させていただきたいと思います。楽しみにしています」と尾崎さん。

天野さんにも、藍染めを教えていただいた感謝を伝え、「これからも世界に手まりの美しさを発信していくとともに、より良い作品作りをしていきたいです」とダナさん。天野さんも「うちの藍染めの糸がもし必要でしたら送りますから、じゃんじゃん糸を使って土台作りからやってもらったらなと思います」と心強い言葉を送りました。

ダナさんをニッポンにご招待したら、手まりへの情熱が一層増し、その素晴らしさを世界に広めようと動き出していました!