「ジブリパーク」開園までの舞台裏を独占取材!前代未聞の接客術:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

11月4日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「開園!ジブリパーク~舞台裏を独占取材~」。
制作現場の指揮をとる宮崎吾朗監督と、前代未聞の公園施設運営に奮闘する人々、パークを支える地元・愛知の人々の底力を独占取材。そこにはどんな秘密が隠されているのか? ジブリパーク開園までの舞台裏に迫った。

ジブリパーク運営担当は、元新聞記者!

11月1日、数々の名作アニメを作ってきたスタジオジブリが手がける「ジブリパーク」が開園した。「ジブリパーク」は、名古屋駅からは電車で50分ほど、東京ドームの40倍以上ある「愛・地球博記念公園」内につくられた。事業主は愛知県で、スタジオジブリが監修。運営を、スタジオジブリと地元企業「中日新聞」が共同出資した会社で行う。

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広大な公園の中に、今回3カ所のエリアがオープン。ゆったり楽しんでもらうため、日時指定の予約制となっている。
ここは、2005年に開催された「愛知万博」の跡地。「自然の叡智」という万博のテーマを受け継ぎ、森や施設はなるべくそのまま生かされている。

メインエリアとなるのは「ジブリの大倉庫」。元々温水プールだった場所だ。巨大なガラス張りの建物の中に、2年以上かけて不思議な街をつくった。
完成したのは、ジブリがいっぱいの宝箱。「天空の城ラピュタ」や「千と千尋の神隠し」など、さまざまなジブリ映画の世界を詰め込んだエリアだ。

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アトラクションやパレードはなく、お客さん自身がジブリ映画の舞台に迷い込み、歩き回ったり登ったりのぞいたり...見れば見るほど、色んな発見と出会うことができる。

もう一つのエリアは、「青春の丘」。 映画「耳をすませば」の世界観が広がっている。

こちらは、映画「となりのトトロ」の世界がテーマの「どんどこ森」。山の上には、主人公の姉妹、「サツキとメイが住む家」があり、万博で展示されていたものを引き続き楽しむことができる。

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9月9日、「愛・地球博記念公園」に、「ジブリパーク」のアルバイトスタッフが大勢集まった。この日から約2カ月、「ジブリパーク」流の接客を学ぶ。若いスタッフたちのリーダーとなるのは、元新聞記者で「ジブリパーク」運営本部の本間貴子さんだ。

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本間さんがアルバイトスタッフを連れて向かったのは、「どんどこ森」。「となりのトトロ」の時代設定は昭和30年頃で、「サツキとメイの家」も当時の雰囲気が表現されている。かまどを始め実際に使えるものが展示され、お風呂も薪で沸かすことができる。

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パーク内にある大抵の物は触ることができ、本間さんが説明すると、「へぇ〜」と驚くスタッフたち。「ジブリパーク」制作の指揮を執る宮崎吾朗監督は、「ただ見るだけのセットとしてつくるのではなく、実際に使えた方がいいし、触れてもらった方がいい。そうすると、物が生き生きしてくる」と話す。

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別の日、今度は「青春の丘」エリアで研修。小高い丘の上には、映画「耳をすませば」の重要な舞台「地球屋」が。中にはお爺さんが営むアンティークショップと、天沢聖司がバイオリンを作る工房が再現されている。

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通常、楽器やアンティーク品は、壊れてもいいようにイミテーションを置くが、「ジブリパーク」では、製作中のバイオリンも、使い込まれた工具の数々も、飾られた楽器もすべて本物。机の下の木屑も、わざわざ本職のバイオリン製作者に散らしてもらうほどのこだわりだ。
「ジブリパーク」が目指すことの一つが、お客さんに、いかにジブリの世界へ入り込んでもらうか。本間さんは「スタッフの役割は監視するのではなく、あくまでもお客様の見守りやサポート」と、アルバイトスタッフに語りかける。
しかし、各エリアのリーダーたちも手探り状態。特に、テーマパークでの接客経験がある人ほど、戸惑いが大きいようだ。反省会では、
「(これまでは)どうやって楽しませるかということばかり考えていたので」
「難しい。今までは『こういうところもありますよ』とかいっぱい言ってきた」との意見も。
本間さんも、「お客様が主人公で、私たちは脇役として陰から見守る。一般アルバイトの方だと学生もいるので、どうやって伝えていくかが難しい」と悩む。

10月中旬、本番を想定した運営シミュレーションが行われた。やって来たのは、想定される来園者の最大5000人に近い関係者とその家族。連日トレーニングを積んできたスタッフたちは、"見守る接客"ができるのか......。

地元愛知の企業、そのワザを結集!

9月下旬。「ジブリの大倉庫」の工事が完了し、ここで働くスタッフたちは、初めて中に入ることができた。敷地はサッカーグラウンドほど。ジブリ映画に出てくるような建物が、所狭しと並んでいる。
「天空の城ラピュタ」に登場するロボット兵や、「借りぐらしのアリエッティ」の小人目線の世界、「千と千尋の神隠し」に登場する湯婆婆なども。その他、スタジオジブリがさまざまな展示会のためにつくった美術品やオブジェなども見ることができる。

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そんな「ジブリの大倉庫」のシンボル、タイル貼りの中央階段を手がけたのが、タイル職人の白石普さん。1年前から制作を始め、宮崎吾朗監督が描いたイメージ画をもとに腕を振るった。目指したのは、動いて見えるタイル装飾だ。

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白石さんは、「ジブリパーク」にほど近い瀬戸市をタイルづくりの拠点にした。陶磁器を「セトモノ」と呼ぶのは、瀬戸が材料の土に富み、陶磁器の一大生産地だったから。しかし今、産業は廃れ、町も寂しくなっていた。

そんな中、中央階段のタイル制作に協力したのが、瀬戸市でわずかに残ったタイル工場「ダイワセラミックス」。会長の増岡錦也さんはかつて瀬戸市長でもあり、「白石さん、ここで焼いとったよ。うれしそうに。うれしそうなんだよ、やっぱり! 自分で作るのが」と話す。

日本の製造業を支え、"モノづくり県"と言われる愛知の技術は、「ジブリパーク」のグッズにも生かされていた。
どんぐりの形をした、鳥の鳴き声のような音が出るバードコールは、「島村楽器」マーケティング部の岡田拓也さんが企画し、愛知県産の木材で作ることにこだわった。

国内の林業は衰退し、多くの人工林が荒れている状態。「島村楽器」は、愛知産の木材を使うことで地元の森の保護につながればと考えた。しかし、細かい木工加工は手間とコストがかるため、多くの工場から断られたという。

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そんな中、岡田さんが出会ったのが木工作家の渡辺啓範さん。渡辺さんは
「僕自身も、森を守りながらものを作っていくというテーマを持っていたので、やりたい話でしたし、すごくうれしかった」と話す。

続いて岡田さんが訪れたのは、愛知・刈谷市にある木製ベッドの製造会社「友澤木工」。
「友澤木工」では、南米発祥の打楽器「カホン」も作っており、岡田さんは「ジブリパーク」のグッズを作ってほしいと依頼した。

友澤優之社長は、「コロナでビジネスホテルやレジャーホテルが業績悪化で、そのあおりを受けてベッドの売り上げを落としたので、とにかく『木工屋としていろいろなものにチャレンジしよう』ということで」と意気込む。

作ろうとしているのは、アフリカの民族楽器「カリンバ」。小トトロの形にくり抜いた木材を土台に使う。最大のこだわりは、小さな子どもでも気軽に弾ける楽器にすること。きれいな音を追い求め、ギリギリまで制作を続けた。

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また、多くの企業も「ジブリパーク」に注目。オフィシャルパートナーには「トヨタ」や「敷島製パン」「名古屋鉄道」など、愛知の企業を始め、22社が名を連ねる。
使用済みのコーヒー豆や廃棄される野菜などを再活用するプロジェクトを続ける、繊維商社「豊島」(愛知・名古屋市)も、オフィシャルパートナーとして支える地元企業の一つだ。

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10月に名古屋市で開かれた懇親会には、「ジブリパーク」を新たな名所にするため、応援する人たちが集まった。「KDDI」雨宮俊武副社長は「名古屋の地元企業と新しいつながりができると思っていて、それは非常に良いこと」、「三菱UFJ銀行」高原一郎副頭取(中部駐在)は「『自然との共生』というところに共感している」、「プリマハム」の千葉尚登社長は「大きな発展に貢献すると思っている」と話す。

たくさんの期待を背負った「ジブリパーク」。番組では、開園当日の様子も伝えていく。

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