リトアニア男性がニッポンの職人に畳を学ぶ!職人一家との心温まる交流も!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ヴァルダスさんが来日した翌年、成田国際空港に、髙濱義和さん、豊さん、ツギエさんの姿がありました。なんと、ヴァルダスさんの部屋に畳を敷きに行くというのです。
自分で建てた日本家屋に、畳を敷きたかったヴァルダスさん。しかし、時間の都合で、来日時には畳作りを教えることができまず、豊さんにとって、半畳の畳1枚しかプレゼントできなかったことがずっと心残りでした。
そこで、畳作り専用の道具や物差し、さらには畳表と大荷物を携えてリトアニアに向かうことに。

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ニッポンから飛行機で約17時間。リトアニアに到着した髙濱さんご家族は、ヴァルダスさんのご自宅を訪れ、1年ぶりの再会を喜び合います。義和さんがヴァルダスさんのロゴを入れて作った、畳カラーのポロシャツを渡すと、サイズもピッタリ。これでヴァルダスさんも髙濱畳店の一員です。

畳を作りに来たことを豊さんが告げると、「信じられません!」とびっくり。早速、3年かけて建てた日本家屋を見せてもらいます。

玄関を入ると、6畳のリビングが。プレゼントの畳は寝室に敷き、大切に使っていました。今回畳を敷くのはリビングですが、今あるスペースに敷くことができるのか、採寸します。義和さんたちのイメージは、すでにあるソファーを生かしつつ、足元のスペースに半畳畳を4枚敷き、小上がり風に仕上げるというもの。

向かったのは、大型のホームセンター。ニッポンから畳表と縁は持って来たものの、畳床だけはどうしても持ち込めなかったため、ホームセンターで代わりの資材を探します。

畳床の材質は、かつては圧縮した藁だけでできていましたが、近年は藁で発泡スチロールを挟む構造が主流。断熱性が高く耐湿性も良いので、湿度の高いニッポンの四季に合う構造になっています。
しかしリトアニアでは、藁は簡単には手に入りません。代用品として厚さ2ミリのコルクが見つかりましたが、薄すぎて藁の代わりにはならないそう。

他を探すと、通常は壁材にする、木くずを圧縮した板を発見。自然素材で通気性も藁に似ています。ヴァルダスさんが自分でも畳を作れるようにと、この素材を使うことに。発泡スチロールは、床下用の断熱材で代用します。

材料が揃ったところで、早速、畳作り開始。木くずの板と断熱材を重ね、畳床を作ります。ヴァルダスさんが一人でも作れるように、両面テープで簡単に接着。続いて、畳表を縫い付ける作業へ。普段使っている裁断機は持ち運べないので、昔ながらの畳包丁を使い、畳床の形に合わせて畳表をカットします。

普通の畳と違い、木くずの板で作った畳は柔らかく、縫う力加減が難しいと話す義和さん。細心の注意を払いながら畳表を縫い付け、余った部分を切り落とし、縫い付けが完了しました。

そしていよいよ、畳縁を縫い付ける重要な工程に。今回特別に用意したのは、ヴァルダスさん考案のロゴをあしらった、世界に1つだけの畳縁です。ヴァルダスさんも、初めての縫い付けに挑戦。畳職人が針を刺す時に使う「手当て」というサポーターを装着し、豊さんの指導を受けながら、ゆっくり集中して縫っていきます。

最後の仕上げは豊さんが担当。こうして、ニッポンの畳職人がリトアニアで材料を集めて作った畳が、ようやく1枚完成しました。

翌日は、お客様の笑顔を黄色で表現した、黄色いポロシャツで作業。ヴァルダスさんは、畳表をカットしたところから出る縦糸をまとめる作業をお手伝い。1枚あたり130カ所あり、1つでも緩むと畳表がバラバラになってしまうので、確実にこなす必要があります。

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ヴァルダスさんの作業を「上手ですね」と褒める豊さん。しかし息子の義和さんに対しては、口に出して褒めることはないそう。「『よくやっているね』と心で思っていても言えません。死ぬまで勉強だと思っていますので、褒めんとですよ」。息子さんに、無言で職人の世界の厳しさを教えているのです。

この日の昼食は、なんと熊本の郷土料理「だご汁」。ヴァルダスさんが来日した時、ツギエさんが振る舞ってくれた料理です。この料理を覚えていたヴァルダスさんは、「リトアニアでよくできましたね!」とびっくり。ツギエさんは慣れない海外ながら、スーパーに買い出しに行き、ヴァルダスさんのためにだご汁を作ってくださったのです。

スルメの代わりに干したアジでコクを出し、全てリトアニアの食材で作られただご汁。
「美味しい、とても美味しい」というヴァルダスさんの言葉に、ツギエさんもうれしそう。

お昼を済ませると、畳作りもラストスパート。教えていただきながら、ヴァルダスさん自らリビングに完成した畳を敷き詰めていきます。畳の枠をきっちり固定し、釘穴に木ネジを埋め、仕上げをして完成です。

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材料がなく、畳を敷くことができなかった板の間のリビングに、おしゃれな小上がり風の畳ができました。ヴァルダスさんがデザインしたロゴをあしらった畳縁が、モダンな印象。「またニッポンに戻ったみたいです」と大感激です!

そしてついに、別れの時が。「寂しいです」と別れを惜しむ豊さんに、「私も寂しいです」と返すヴァルダスさん……。豊さんは、「これからも畳を作ってほしい」という願いを込めて、ロゴ入り畳縁と手当てを贈りました。

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「本当に別れるのが辛いです。私は髙濱さんを本当のお父さんのように思っています。またニッポンかリトアニアで会いましょう」。
豊さんは、ヴァルダスさんの顔を見ながらずっと手を振り続けました。

あれから4年。ヴァルダスさんからのビデオレターを、髙濱家の皆さんのもとへ届けます。

実は今年7月、がんで闘病していた豊さんが逝去。亡くなる1カ月前まで仕事をしていた豊さんは、ヴァルダスさんのことを気にかけ、「ヴァルダスさんは俺の弟子」と話していたそう。豊さんの職人芸は、義和さんとその息子さんに受け継がれ、現在も伝統の手縫い畳が作られています。

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訃報を知ったヴァルダスさんは、突然のことに悲しみながら、「親方はシャイなところはありましたが、寛大な心の持ち主で、強い信念を持った方でした。あそこまで丁寧に教えていただき、もう一度感謝の気持ちを伝えたいです」と語ります。
「うれしいですね。(豊さんが)いたら、多分相当喜んでいると思いますよ」と義和さん。

ここでヴァルダスさんから、「天国の親方に自分の畳作りを見てもらおうと思います」と提案が。
いただいた畳表と特製の畳縁を使い、自宅の庭で作業を始めます。プレゼントの手当てに傷をつけたくないと、今回は自作の手当てを使用。畳表を固定する道具も、ネジ回しの先を尖らせて作りました。

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まずは畳床から。来日した際にいただいた、髙濱畳店の秘伝の書を見ながら作業します。その様子を見た義和さんによると、針を刺す時の角度が、作業を教えた豊さんと同じだとか。豊さんが教えたかった畳作りの技は、ヴァルダスさんにしっかり伝わっていました。

そして、畳作りは仕上げの工程へ。ヴァルダスさんがデザインした、髙濱畳店のロゴが入った畳縁を縫い付けます。角が丸くなると隙間があるように見えるため、ここでは角を出すことが大事。しっかり角を出して仕上げる様子に、「上出来!」とツギエさん。

亡き豊さんに捧げる、ヴァルダスさん渾身の畳が完成しました! ここで、遠く離れた絆を、4年ぶりに中継で結ぶことに!

久しぶりに顔を合わせた義和さんとツギエさんに、お悔やみを伝えるヴァルダスさん。
義和さんはヴァルダスさんの畳について「ちゃんとできていますよ!」と伝え、「父はヴァルダスさんを弟子と言っていましたので、ヴァルダスさんに受け継がれているんだと確信しましたよ」と話します。

ここで、ヴァルダスさんからもらったロゴマークについて、義和さんから報告が。リトアニアから帰国後、ロゴマークを気に入った豊さんが特許庁に商標登録を申請。正真正銘、髙濱畳店のシンボルになったのです。

今後について、「私の目標はリトアニアで畳文化を広めることです。親方に教えてもらった技術をもっと極めます!」と語るヴァルダスさん。義和さんも「もっと勉強して、海外に日本の文化を届けていけたらと思います」と意気込みを語りました。

ヴァルダスさんをニッポンにご招待したら、一生忘れられない畳職人と出会い……その技術を受け継ぎ、畳文化を世界に広めようと頑張っていました!


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どうぞお楽しみに!