妻に怒られた時もアイデアが?人気「カプセルトイ」を生み出す”チャラ社長”が企画・製造の裏側を明かす

公開: 更新: テレ東プラス

――気軽に購入、集めることができるカプセルトイですが、私たちの手に届くまで、どういう工程があるのでしょうか?

「当社の場合、オリジナル商品がメインなので、商品企画から始まります。その部分は後ほどご説明しますが、一般的にはアニメなどの既存キャラクターを中心に作ることが多いです。その場合は、アニメなど元のイラストを3Dに起こし、原型と呼ばれる大量生産の基となるフィギュアを出力。次に、原型を磨いて正確な造形ができたら、それを型取りして金型を作ります。

金型というのは、鯛焼き器をイメージするとわかりやすいですね。鯛焼きを焼く時、鯛焼き器に生地を流し込んで餡を入れて作るように、金型に樹脂などの素材を流し込んで、大量に本体を作ります。この時点では、まだ色は付いていません」

――本体ができたら、着色していくわけですね。

capsuletoy_20220930_03.jpg▲12月発売予定の『狛レオパ』シリーズ「吽形フトアゴ 白」の各段階。左から「原型」、量産の見本となる「彩色原型」、中国で製作された「量産サンプル」

「大量生産の部分は基本的に中国で製造するため、量産の見本となる彩色原型を日本で製作します。色指定をデジタルで行うことも可能ですが、出力機によって色の出方が違うため、必ず日本で彩色原型を作って、中国の工場へ渡します。

大量生産の現場では全て手作業での色付け作業になるため、どこまで彩色原型に近づけられるか...最終的なOKを出すまで確認を繰り返します。こうした作業と並行して、製品の撮影やPOPのデザイン制作も進めます」

――サンプルの方が全体的に白いですが、彩色原型に合わせて汚れを付けるのですか?

capsuletoy_20220930_04.jpg▲中国から届いたサンプルと彩色原型。サンプルの方は頭部が全体に白いが、彩色原型では雨風などの汚れ感も再現されている

「例えば『狛レオパ』シリーズの場合、狛犬がベースです。狛犬は外にあるので、苔がついたり、汚れたりしますよね。フィギュアとしてのキャラ設定など、リアルさや雰囲気のあるクオリティを追求しています。こだわったからといって、売り上げが変わることはないのですが(笑)、そういうディテールへのこだわりの積み重ねが大事だと思っています。

一般的な既存キャラクターの場合は、彩色原型の時点で、原作と色を合わせる監修チェックなどが、一番苦労するところだと思いますね。テレビ東京のアニメで人気のあのキャラだったら、黄色の色味とか...(笑)。そこから量産サンプルの修正を繰り返し、最終版の量産サンプルが確定次第、量産をスタートさせます。そのままカプセルに詰めるところまで進み、製造工程は完了です」

――カプセル詰めまで済んだ後、販売機に入れる作業はどこが行うのでしょう。

「オペレーション会社、いわゆる問屋さん的な企業がメーカーから商品を仕入れ、小売店への納品や販売機に入れる作業をします。飲み物の自動販売機は、飲料メーカーの系列会社のスタッフが商品を販売機に入れますが、カプセルトイの場合は、基本的にオペレーション会社が、販売機への商品入れや料金回収をする仕組みになっています」

人気のカプセルトイ企画開発の裏側

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――「Qualia」では、キャラクター商品もありますが、オリジナル製品をメインに作られていますよね。

「作家さんとのコラボもありますが、社員や私がゼロから考えるものが多いです。月に1度、企画会議をしますが、例えば、『ゴリランドセル』シリーズ。これは、社員が原案となるイラストを会議に持ってきて、ネーミングやコンセプトなどの枠組みを決めました。その後のブラッシュアップは、私と担当者の2人で行います。

最初に『ゴリランドセル』のイラストを見た時、バナナを持たせるみたいな"ゴリラ寄り"にするよりも、小学校高学年男子のピチッと感="体が大きくなって、パツパツな状態でランドセルを背負っている姿"の方が面白いなと思いました。ぽっちゃりゴリラだとメタボなおじさんっぽくなってしまうので、スマートだけど筋肉質で、小学5・6年生男子のピチッと感を出す方向にブラッシュアップしました。

バリエーションも『小学生だからリコーダー吹くよね』『友達がイタズラでランドセルの鍵を開け、物を拾わせて中身が全部出ちゃうやつ』とか(笑)、みんなが共感して、喜びを感じる部分を大切にしています」

capsuletoy_20220930_06.jpg▲ゴリラ寄りから小学校高学年男子のリアル感を追求したことで、「わかる!」「あるある」な共感が増す

――ディテールが本当に細かいですね!

「コンセプトワークと細かいディテールへのこだわりが一番苦労するところでもあり、力を入れています。当社の製品を好きになってくださるお客様は、コンセプトやこだわっている部分を理解して、面白いと感じてくれるので、原型を起こす前のイラストやイメージの調整はしっかりやります」

capsuletoy_20220930_07.jpg▲学習帳の表紙イラストまで描き込まれていて、ディテールの細かさがすごい!

「昔のカプセルトイは、単純にかわいいキャラを作るとか、リアルさをひたすら追求する方向で作られていました。でも、今はそれだけでなく、背景やストーリーが感じられる要素が必要です。人気キャラクターの表情はシンプル=無表情が王道で、シチュエーションやディテールとの組み合わせで、笑顔だったり、困っていたりする表情に見えるのです。『ゴリランドセル』も、あえて表情をシンプルにすることでジワるというか、おかしみが増していると思います」

capsuletoy_20220930_08.jpg▲人気の『むぎゅっ鳥』シリーズPart3の「おにぎり」バージョンは11月発売予定

capsuletoy_20220930_09.jpg▲11月発売予定の『タコさん!!! WINNER』シリーズ。定番のタコさんウィンナーが、勝者=Winnerと組み合わさったダジャレにツッコミたくなる。会話のきっかけにもなりそうだ

――企画のアイデアは、どうやって生まれるのでしょう?

「いろいろとインプットもしていますが、使えそうなキーワードをスマホにメモするとか、SNSでイメージが膨らみそうなビジュアルを見かけたらスクショしておくなど、あらゆる場面で思いつくことがあります。

例えば、この『シャキッとしな菜(さい)!』シリーズは、妻から『シャキッとして』と怒られた時、『ちょっと待って! グテッとした野菜が...』という感じで思いつきました(笑)」

capsuletoy_20220930_10.jpg▲『シャキッとしな菜(さい)!』妻に叱られている最中でも、企画を思いつく小川社長。大物すぎます(笑)

たくさんの資料やサンプルだけでなく、通常なら「超極秘ネタ」であるはずのスマホのメモも、惜しげもなく見せてくれた小川さん。その様子を通じて、多くの人が集めたくなる理由は、見た目のかわいさ、面白さだけではないと感じた。
大人が思わず引き寄せられてしまうのは、作り手のこだわりや「楽しんでほしい」という思いが、カプセルから溢れ出ているからなのかもしれない。

【小川勇矢 プロフィール】
カプセルトイの企画・製造・販売を行う株式会社Qualia代表取締役。YouTube「クオリアらしさチャンネル」で、YouTuberとしても活動。カプセルトイ業界で多くの人気商品を生み出すヒットメーカーとして、人気を集めている。

(取材・文/鍬田美穂)

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