その後、鹿毛さんの雪印乳業でのドラマチックなリスクテイクはNHKの目に留まり、奮闘の様子は世の中に知れ渡ることになる。
そして、NHKの放送でエステーの重役が鹿毛さんの存在を知り、ヘッドハンティング・・・という綺麗なストーリーが公になっているが、実は違うと暴露。
変革運動を終えて退職してからしばらくはどの企業にも入れず、プー太郎になっていたというのだ。ヘッドハンティングの人材サービスに登録をしていたが、何社も落ちてしまっていたという。
困った鹿毛さんは、ヘッドハンターに「面接官が課長級ではなく社長級がやってくれるところを紹介してほしい」と相談したそう。現場のトップレベル＝課長級では鹿毛さんのことを「リスクをもたらすヤツ」としか見ないが、社長級であれば「リスクテイクして面白いことをするヤツ」と見てくれるかもしれないという算段があったよう。
この戦略転換が功を奏し、そこから受けた企業の全てから内定を獲得。ただエステーは、内定企業の中で最も給与が低かったため断ろうとしたそうだが、当時の鈴木喬社長（現・会長）からの熱心な引き留めもあり、入社を決意した。
結果としては良い出会いにつながったとも言えるが、鹿毛さんは「退職する時は"次を決めたら"。これをおすすめします」と当時の苦労を振り返った。
社長に対して「会社の問題は社長にある」と進言
社長から懇願されるほどだったので、エステー入社後は順風満帆な会社人生を送る・・・かと思いきや、そんなことはなかった。
当時のエステーはまだ中途入社は少なく、ましてや中途入社でいきなり部長級というのは鹿毛さんが最初だった。そのような背景もあり、社内では悪目立ちはしながらも、入社早々干されているような状態で、3ヵ月間全く仕事がなかったらしいーー。
3ヵ月の社内ニートの後、引き抜いた社長に「3ヵ月会社を見てどう思った？」と聞かれると、「色々な問題が見えてきたが、原因は社長のワンマンです」と忖度なしの回答。このリスクテイクしまくりの回答が社長のハートをつかみ、宣伝部長に就任することになったそうだ。
ゴマをすりがちなビジネスパーソンにはなかなか難しい回答だが、ワンマン社長ほど、周りにイエスマンしかいないので、鹿毛さんのような忖度なしのリスクテイカーがいるとうれしいのかもしれない。
震災後の自粛ムードを突破したリスクテイク
鹿毛さんが宣伝部長に就任した当時のエステーはあまりヒットCMはなかったそうだが、就任以降はCM人気ランキングでトップクラスを何度も獲得するような大躍進。鹿毛さんも自身を「天才だと思った」と自画自賛したくなるほどの活躍だった。
ただ、大活躍の裏でも多くのリスクテイクを行っており、代表例が2011年3月11日に発生した東日本大震災だという。大震災以降、全ての日本企業がCM放映を自粛し、新作CMの制作もストップしてしまった。理由は、不謹慎というバッシングを恐れてのことであった。
しかし、鹿毛さんは辛い状況の時こそCMにできることがあるのではないかと模索し、震災以降、最初の一般企業の新作CMを制作した。当然、鹿毛さんも「不謹慎」というバッシングは恐れており、もし大炎上してしまったら退職する覚悟で実施に踏み切ったそうだーー。
蓋を開けてみれば、心配をよそに炎上どころか大きな反響を生む歴史的なCMになった。過去に津波で大きな被害を受けたリスボンの市街地で少年のミゲルくんが力強く消臭力の曲をアカペラで歌い上げるというシンプルなクリエイティブが、落ち込んでいた多くの日本人に勇気や元気を与えた。
ここでも鹿毛さんはリスクテイクをしたことで、多くの消費者の気持ちをつかんだのだ。
まだまだ鹿毛さんのリスクテイク秘話は続く！
周囲が避けて通るようなリスクだらけの道をあえて選ぶことで、実績を残し続けてきた鹿毛さん。会社や上司とはケンカだらけと言いながらも、エステーでは最終的に役員まで昇進している。
そんな鹿毛さんからまだまだ仕事術や処世術を学びたいところだが、動画内だけでは話が終わらない模様ーー。
そんな鹿毛さんのリスクテイク秘話の続きは、9月21、22日に開催される『みんなのお仕事文化祭』で語られるようだ！ 気になる続きは、『みんなのお仕事文化祭』で！
「日経テレ東大学」YouTubeチャンネルで配信中！です。お見逃しなく！
※番組情報
【エステー消臭力CM】マーケター／クリエイターのリスクだらけ人生
出演：
鹿毛康司（かげこうじ事務所代表 マーケター/クリエイティブディレクター）
高橋弘樹（テレビ東京プロデューサー）
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