遺骨ダイヤ、空中散骨...もうお墓はいらない?専門家に聞く<最新お墓事情>”もしもの時”を家族に伝えていない人が8割超!

公開: 更新: テレ東プラス

多くの人が、直面せざるを得ない「お墓」問題。アンケートの結果や、ご意見・疑問などを踏まえ、お墓や葬儀などの葬祭関連企業「彩石」の代表で、お墓の専門家として終活セミナーなどの講師も務める、大西正也さんにお話を伺いました。

Q.アンケートでは、「今あるお墓をどうしたらいいのか?」「お墓の世話や費用など、負担を残したくない」という声が多く寄せられました。お墓の維持や墓じまいに関する相談は、増えているのでしょうか?

「核家族化が進み『お墓の継承者がいない』、都市部へ移住された方などが『地元のお墓を維持するのが難しい』という背景から、そうした相談は非常に増えています。

解決方法として、一つは維持しやすい場所、ご自宅からアクセスしやすい生活圏などにお墓を移すこと。もう一つは、墓じまいですね」

Q.墓じまいをすると、お骨はどうなるのですか?

「お骨は残ります。ご自宅に引き取られ、仏壇などに保管するケース、納骨堂に納める形も多いです。納骨堂もお墓と同様に、お寺や自治体、民間が管理・運営しているものがあります。

自宅や納骨堂へお骨をご供養する場所を移す以外では、お寺などの無縁墓、合祀墓(ごうしぼ)や合葬墓(がっそうぼ)に納めてご供養する形になります」

Q.無縁墓や無縁仏と聞くと、ネガティブなイメージや、「きちんとご供養されないのでは?」といった印象を持つ人が多いようです。

「日本では、代々のつながりから先祖を敬い、今の自分や家族があることへの感謝を込めて、ご供養する文化があり、そのよりどころとして、お墓やお仏壇があります。宗教を意識していなくても、生活に根差した大切な文化ですし、潜在的な『代々のご供養をきちんとしなければ』という気持ちが、そう感じさせる要因かもしれません。

ただし、仏教の場合、いろいろな考え方はありますが、基本的にお骨はあくまで物質でしかなく、亡くなった方は魂の存在になって、ご供養を考え、手を合わせた先にいらっしゃいます。無縁墓に合祀されても、お寺などできちんとご供養しますから、ネガティブなことではないですよ」

Q.お骨をご自宅に引き取る場合、考えるべきポイントはありますか?

「お骨をご自宅で保管すること自体、問題はありません。ただし、子どもや孫の代といった先々まで、保管し続けるのかは考えた方がいいですね。墓じまいを選択される背景には、主に『維持や管理の負担を残したくない』との考えがあります。

お骨は簡単に処分できるものではないですから、『保管し続ける』という、ある意味で負担になるかもしれない状況を残すことになります。また、将来的に保管が難しくなった際は、『お骨をどうするのか?』の決断を先送りした形になってしまいます。

自宅でのご供養もいいと思いますし、否定するものではありませんが、その先のこととして、納骨堂での永代供養や合祀などを決めて、しかるべき手配をしておく。それが本当の意味で、『負担を残さない』ことになると思います」

墓地、埋葬には法律や条例が

Q.アンケート結果では、従来の埋葬とは異なる、樹木葬や海中散骨などに興味を持つ方が一定数いるようです。そうした埋葬方法を考える場合、注意すべき点はありますか?

「私のお客様では、従来のお墓や納骨堂以外ですと、墓石の代わりに樹木を墓標にする、樹木葬を選択する方がかなり多いですね。次いで、お骨をパウダー状にして海に撒く、海中散骨をご希望される方が多くいらっしゃいます」

ohaka_20220903_04.jpg画像素材:PIXTA

「空中散骨や宇宙葬は話題になりますが、実際に行うケースは滅多にない印象です。また、お骨などを人工ダイヤモンドにする『遺骨ダイヤ』は、ご興味を持たれる方はいますが、高額なので断念されることも多いようですね。

埋葬に関しては、『墓埋法(ぼまいほう)』と呼ばれる『墓地、埋葬等に関する法律』がある他、自治体ごとの条例もあります。そのため、個人が勝手にお骨などを埋葬したり、撒いたりすることはできません。従来とは違う形を希望される際も、お寺や葬儀社、石材店など、きちんと手続きができる所に相談してください」

ペットと同じお墓に入りたい場合は…

Q.家族であるペットも、自分と同じお墓に入れたいと考える人が増えています。ただし、墓所によっては、断られるケースもあるようです。

「宗教的な話になりますが、仏教では、動物は人間界とは別の生き物という位置づけで、同じお墓に入れることはできない方針のお寺が多いと思います。また、公営や民営の墓地でも、多くの方が眠る場所として『動物が苦手な故人や、それを知るご遺族』への配慮から、ペットの埋葬をお断りしています。ペットの埋葬自体はOKでも、専用のスペース限定のところも少なくありません。

物理的な問題として、各お墓の収骨スペースには限りがあります。人のお骨が入るべき場所がペットのお骨で埋まってしまい、先々に入る人のスペースがなくなってしまうといったことを避けるためにも、ペットのお骨を受け入れない場合が多いです」

Q.ペットも大事な家族の一員と考え、どうしても同じお墓に入りたい場合は、どうしたらいいのでしょう?

「近頃は、お墓に関して、方針や対応を見直すお寺も増えています。例えば、お墓の区画が広い場合、区画内にペット用のお墓を作り、ご家族と同じ敷地に埋葬できるようにするところも、徐々に出てきました。

また最近は、新たな墓所で、ペットも人と同じ収骨スペースに納める契約の“永代供養プラン”などが増えています。今あるお墓で希望するご供養の形が叶わない場合、要望に合うお墓に移すことを検討してもいいかもしれません」

Q.お墓を取り巻く環境も、現代のニーズに合うように変化しているんですね。

「ジェンダーに関する側面を含め、さまざまな部分で既存の宗教要素にこだわらない、柔軟な対応をするお寺が増えています。比較的新しいお寺だけでなく、名刹と呼ばれるような伝統・格式あるお寺でも、そうした動きが出てきている状況ですね」

葬儀だけでも、決めておくべき理由

Q.「今、お墓のことは考えていない」「心に決めていることはあるけれど、家族や周囲に話していない」など、お墓や葬儀について、準備をしていない方も多いようです。

「昨今は、生前にお墓や葬儀についてご相談されたり、お決めになったりする方が本当に多いです。でも、どうしても『先のこと』と思うし、自分が死ぬことをあまり考えたくはないですよね。最低でも葬儀のことだけは希望をご家族に伝える、できれば、どういった葬儀をするのか、きちんと決めておいた方がいいと思います」

Q.葬儀だけは、決めておいた方がいい理由は?

「一般的に、多くの方は病院で最期を迎えます。亡くなった時のことを決めていない場合、病院に紹介される葬儀社に、ご遺体を自宅や葬儀場に移すことから始まり、葬儀やお墓まで、手配を任せるケースが少なくありません。

もちろん、良心的な対応をする葬儀社も多いですが、ご家族を亡くし、気落ちしている状況では、どうしても葬儀社のペースや言いなりになってしまいます。ネットなどで調べて手配した場合を含め、急なお取引きは、トラブルやクレームになることが本当に多いです。

お墓については、納骨まで、ご家族が考える時間的な余裕が多少あります。ただ葬儀は、すぐに手配や手続きが必要になることが多い。トラブルや遺されるご家族の負担を減らすためにも予め考えて、家族や周囲に伝えておくことをお勧めしたいですね」

お寺とつながるメリットとは?

Q.生前に葬儀やお墓について決める時は、葬儀社などに相談するのが良いのでしょうか?

「ネットなどで調べて検討し、実際に葬儀社の担当に相談してみるのもいいですが、もう一つ、お勧めしたい相談先はお寺です。家族のお墓があるお寺であれば話が早いのですが、そうしたお寺が身近にない場合、相談に乗ってくれる近くのお寺を探してみましょう。

お墓や葬儀のことを相談し、ご家族には『もしもの時は、このお寺に連絡』という形にしておくと、葬儀社への手配なども安心だと思います」

Q.菩提寺や檀家、信者でなくても、お寺で相談に乗ってもらえるのですか?

「すべてのお寺ではありませんが、今は信者や檀家だけでなく、一般の方のよりどころになるような、開かれたお寺が増えています。宗派や檀家にこだわらず、気軽に参加できるイベントなどを開催し、お寺と触れ合う機会を積極的に作っているところも多いです。

いろんなお寺があり、さまざまな住職がいます。地域との接点を持ち、気軽に相談してほしいと考えているお寺がたくさんありますから、まずはイベントなどに参加して、ご自身の終活を相談したいと思える住職を探してみてください」

【大西正也 プロフィール】

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墓所・墓石の建立やリフォーム、葬儀ほか、多角的に葬祭関連事業を展開する「株式会社彩石」の代表取締役。お墓の専門家として、終活セミナーなどで講師を務め、多くの人のお墓や葬儀に関する相談に乗っている。

(取材・文/鍬田美穂)

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