山林に潜む最凶の毒虫は?アウトドアで虫刺され!かゆい、腫れる<絶対に刺されてはいけない虫4選>

公開: 更新: テレ東プラス

山林のあちこちに潜む!身近でもアウトドアでも、刺され(噛まれ)るとヤバい虫4選

◆ブユ

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地域によって「ブヨ」「ブト」など、呼び方が微妙に異なる吸血昆虫。幼虫は水がきれいな渓流で育つため、キャンプで襲われることも多い。
産卵のため、メスだけが人や獣を狙って吸血するが、するどい口で皮膚を噛み切って血をすすり上げるため、その瞬間はチクリとした痛みを感じることもある。
そして数時間後、忘れたころに患部が赤く大きく腫れ、激しいかゆみと根底からうずくような痛みが発現する。それはもう蚊とは比べものにならない猛烈なかゆみのため、我慢ならずに掻きむしってしまうが、するとなおさら治らず、炎症が1週間以上続くこともある。
夜行性なので、日没直後と日の出前は特に警戒が必要だ。黒い衣類に集まる傾向があるので、こいつを寄せつけないためには、なるべく明るい色の着用をおすすめする。

mushi_20220824_02.jpg▲皮膚が噛みちぎられ、出血斑や水ぶくれで痛々しい状態に

◆イワサキカレハ(ヤマンギ)

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大型の蛾・イワサキカレハの幼虫で、頭の後ろに毒針毛の束を持ち、南西諸島でハブと並んで恐れられる猛毒の毛虫・ヤマンギ。毒針で刺された瞬間、皮膚に激痛が走るが、それは大人でも脂汗がにじむほどのエグい痛みである。
その後、患部が激しいかゆみを伴う炎症を起こし、1週間ほど症状が続いて茶色いシミが残ることもあり、万が一広範囲を刺されれば、発熱して重症化することも。日本産の毒毛虫の中でもトップクラスの毒性を誇るとされ、国内で遭遇しやすいチャドクガやイラガの攻撃がかわいらしく思えるほど。
終令幼虫になると体調およそ85㎜という巨大さで、見つけてしまったときのショックは大きいが、地味な体色で自然と同化し、発見が難しいので、気づかずうっかり触れないよう、アウトドアの際は十分な注意を!

◆ツクイムカデ

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日本の南西部でよく見られる、一見か弱そうな小型のムカデ。狂暴性では星1つ(★)という大人しい性格だが、一度キレて毒爪を突き立てたらしぶとく離れず、そのまま噛まれてしまうと、より大型のトビズムカデやリュウジンオオムカデをもしのぐ痛みに襲われる。患部はみるみるうちに腫れ、痛みとかゆみが続いて1日悶々と苦しむことになるだろう。
武器は毒爪のみだが、ひょっとすると日本産のムカデで最も毒性が強烈かもしれない。見た目と痛さのギャップが激しいので、貧弱なイメージで油断してはいけない毒虫だ。
他のムカデと同様に夜行性で、林の中や草むらに転がる石や倒木の下に潜んでいるので、アウトドアの際に発見しても、興味本位でつまみ上げたりしないように。

mushi_20220824_05.jpg▲毒爪にやられ、指が腫れて関節のシワも消える

◆【絶滅危惧種】タガメ

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水辺に近づいた時に注意したいのは、日本最大にして最凶といえるタガメ(肉食カメムシの一種)。日本で最も大きな水生昆虫で、鋭利なカマのような前脚、怪力、2種の毒液を武器にし、水辺では圧倒的に危険な存在だ。刺されればスズメバチに似た激痛が走り、患部は赤く腫れ、数日間は激しい痛みとかゆみが続く。
獲物として捕獲された虫がどうなるかも紹介しておこう。獲物を捕まえると、まず動きを止める麻酔薬と肉を溶かす消化液の2種の毒液を、注射針のような口で打ち込む。そして抵抗できずにフラフラになった獲物の溶けた肉を、吸い取るようにして喰らうのだ。
あまりに残酷な捕食だが、人間による水質汚染の影響で、現在は絶滅危惧種に指定されてしまった哀れな昆虫…でもある。身近ではないかもしれないが、平坂氏が水辺の最凶1位に推す毒虫だ。

mushi_20220824_07.jpg▲毒を注入されて2倍に腫れた哀れな右手。数日は痛かゆさに苦しむ

※最後にこれだけは警告しておくが、平坂氏のマネをして気軽に毒虫に手を出さぬよう、くれぐれもご注意を!

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「刺された!嚙まれた!危険・有毒虫図鑑」(平坂寛:著 発行:株式会社カンゼン)

【平坂寛 プロフィール】
1985年、長野県生まれ。生きもの専門のライターとして、世界各地で珍しい生きものを捕獲し、観察記録や実際に触れたり食べたりした体験記を精力的に執筆し続けている。これまでの主な著書に、『見たことのないものをつかまえたい!世界の変な生き物探訪記』(みんなの研究/偕成社)、『喰ったらヤバいいきもの』(主婦と生活社)、『深海魚のレシピ:釣って、拾って、食ってみた』(地人書館)などがある。取材執筆活動をしながら、公益財団法人の黒潮生物研究所の客員研究員として、深海魚の研究にも携わっている。
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