ディープな沖縄、四万十町の幻の米...観光客の心をつかむ”地域ぐるみのおもてなし”:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

8月12日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「変わる夏旅...地元でおもてなし」。
今年は3年ぶりに行動制限のない夏休みとなり、観光客を迎え入れる地方も「今年こそは!」という思いが強い。「地域ぐるみのおもてなし」は、観光客の心をつかめるのか? 「ガイア」のカメラが密着した。

集落の魅力で地域を元気に ツアー付き古民家の宿の挑戦

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沖縄北部に広がるやんばる地域は、1億年前の姿を残す"奇跡の森"が広がり、絶滅危惧種・ヤンバルクイナなどが生息する自然豊かな場所。固有種の多さなどが評価され、去年、世界自然遺産に登録された。約75%が森林で、40以上の小さな集落が点在している。

その中の人口約30人の謝敷集落に、やんばる地域限定の小さな旅行会社「エンデミックガーデン H」がある。ここでは、やんばるの自然体験ツアーを多く扱い、8人の社員は地元出身の若者が中心だ。
やんばる地域は那覇などに比べて宿が多くない。そこで、社長の仲本いつ美さんは、今年6月に古民家を改装、集落の中に初めて宿をつくった。

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生まれも育ちもやんばるの仲本さんは、沖縄の大学を卒業後、地元の役場に就職。観光に携わる仕事をしていたが、急速に進む地域の高齢化と人口が増えないことに危機感を抱いたという。

宿は沖縄の伝統的な建築を生かしたつくりで、宿泊客には、スタッフによる集落案内のサービスがつく。思いがけない地元民との触れ合いも、旅のいい思い出に。集落には、土地の神が祀られる場所や地元の人が祈りを捧げる場所が点在しているため、神聖なエリアに入らないようお願いするのも、この案内の目的だ。
夕食は宿の縁側で、島豚など地元の名産品の数々を味わうことができる。

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「もっとディープな沖縄を見てほしい。やんばるを好きになってもらい、友達を誘って『やんばるに来たい』と思ってもらえたら...」と仲本さんは話す。

7月。仲本さんは、行動制限がない今年の夏休みに向けて、2軒目の宿をつくっていた。持ち主が那覇に移住し、空き家になっていた木造平屋建ての建物をリフォーム。大棟梁、一級建築士も地元の人に頼み、地域に雇用を生み出すことにもこだわった。

この日、仲本さんが向かったのは、やんばる地域の別の集落。沖縄伝統の舟で海に繰り出す「サバニ(釘を一切使わない木造の舟)クルーズ」を実現するため、船大工に会い、自ら乗り心地を確かめる。

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深夜0時半、今度は登り窯で、焼き物を作る最終工程の一つ"攻め焚き"を視察。暗闇に浮かぶ炎が"映え"そうだ。

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「大手旅行会社の人は、夜中2時に、山の中の攻め焚きを見に来ないはず」。
仲本さんは、登り窯の見学をツアーの目玉にと考え、地元の焼き物をもっと広めたいと願っていた。

新しい宿のオープンまで1カ月。公民館に集落の住民たちが集まり、重要な会合が開かれた。仲本さんが、ここで初めて新しい宿とツアーについて説明すると、住民たちは不安を抱く。

「昼間、宿泊客が好きなように(集落に)入るのだったら、人の家には入らないでくださいとか、そういう話をやらんと」「変な客が来て、騒いだり問題になったりしたら困るでしょ?」と訴える住民たちを、仲本さんは「私たちが案内人となってお客様をご案内するので。集落の大事な場所や大事にしている文化を知ってほしい。集落の魅力を知って大事に思う人が増えてほしいという思いでサービスを提供していく」と説得。

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仲本さんは、この後も時間をかけて住民たちと向き合い、新しい宿とツアーが地域に果たす役割を丁寧に説明した。住民の理解と協力が得られなければ、成功とはいえないからだ。

そんな中、7月半ば、建築士から衝撃の連絡が入る。工事関係者の間で新型コロナの感染が広がり、7月25日の引き渡し日に間に合わないというのだ。この時、沖縄では、新型コロナの感染者数が急増し、全国でも最悪のペースで拡大していた。投資家は「ここまできて(工期が)ずれるのはあり得ない。コロナかもしれないが、他の大工を見つけて間に合わせればいいのでは」と憤る。

混乱が続く中、7月末、今度は仲本さんが新型コロナに感染したとの連絡が。宿のオープンは引き渡しから2週間後の8月8日だが、果たして間に合うのか......。

1300年の歴史を誇る寺が"異例な"取り組みで誘客作戦!

"日本最後の清流"と呼ばれる高知県四万十川。高知県は、ダイナミックな自然と絶景スポットが盛り沢山。お遍路さんも有名で、弘法大師・空海が辿ったとされる四国八十八箇所の霊場も。その1つが、1300年の歴史を誇る「岩本寺」(高知・四万十町)だ。

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門には、世界的な有名ブランドとコラボする日本人アーティストのポップアート、天井にはマリリン・モンローや聖母マリアの絵画──。岩本寺には、一風変わった仕掛けがある。

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町で屈指のアイデアマンと呼ばれる住職の窪博正さんは、「お大師様(弘法大師 空海)も、時代に合わせていろいろやらなければいけないという思いがあったのではないか。新しいものを創造しながら続けていくことが伝統だと思っている」と話す。
その思いは寺の宿坊にも反映され、サウナ付きの客室、敷地内にはキャンプ場や本格的な釜戸までそろう。

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両親の大変そうな姿を見ていたため「寺を継ぐ気はなかった」という窪さんは、1996年、関西の大学の経済学部に入り、一般企業から内定も得ていた。しかし周囲の薦めもあり、一念発起。仏教を学べる都内の大学に入り直し、3年前に先代の父から寺を引き継いだ。

ユニークな取り組みの背景には、2年前に亡くなった母・生喜さんの存在が。窪さんは
「人に来ていただける寺にしたいと、母はよく言っていた。文化は人が連れてくるという話をしていた。(寺は)いいものを残しながら、新しく変わっていけばいいという思いが(母には)あったのではないか」と話す。

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そんな窪さんは、和三盆を使った和菓子作り体験や、四万十町で江戸時代から続く「井上糀店」での味噌作り体験など、町を巻き込んだ寺での取り組みに力を入れている。
「この町の資源を使って何ができるかというのがスタートだった。地域の人にも"寺がこうやって使える"ということを知ってもらえればうれしい」。

四万十町の人口は、最盛期の約4割にまで減り、新型コロナの影響で観光客が激減。しかし、行動制限がない今年の夏、窪さんは起死回生を狙っていた。
住職の傍ら「街おこし応援団」の団長も務める窪さん。6月下旬に行われた会合では、7月に寺で開催されるマルシェで、米粉のピザを無料で振る舞う企画が持ち上がる。

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使うのは、コンテストで日本一を取ったこともある、四万十町のブランド米「仁井田米」。提案した精米店「岡田商店」の岡田憲典さんは、「四万十町を元気づけることができたらいい」と意気込む。

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8日後、岩本寺近くのカフェで、ピザの試作が始まった。窪さんと岡田さんは、粉はおろかピザ作りも初めて。米粉100%の生地にオリーブオイルや塩、砂糖などを入れて混ぜ合わせ、生地を延ばすも「難しいな。すごく不細工な感じ」と窪さん。しょうがやニラなど、地元産の食材をのせて寺の窯で焼いてみるも、粉っぽさが残る。しかし、「プロの力を使わず、自分たちで考えてやることにすごく意味がある」と窪さん。
マルシェまで約2週間、米粉100%のピザは完成するのか。

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