「膝も悪いし、お父さんを1人で置いて行くのも心配になってきたので」と、踊りの稽古をやめた理由を明かすれいこさん。実は、あきおさんは認知症。「人様に言ってもわからないような苦労をしてます」。
3～4年ほど前から「今日のことだってすぐ忘れる」ようになったそうで、最初はびっくりして受け入れられなかったれいこさん。実は、あきおさんも自覚しているといいます。「突拍子もないことを言ったりトイレがすぐわかんなくなっちゃう。初めの頃はイライラしてました」。
そんなご夫婦の出会いは職場。あきおさんから声をかけられたそうで、第一印象を聞くと、「ポーっとなってわかりません。好きとか何とかって初めてだったから、何もわかんなかった」と打ち明け、顔を布団に埋めて照れまくるれいこさん♡ 「じゃ～ん」と言いながら見せてくれたのはあきおさんからのラブレターがたくさん入った箱でした。
「僕の胸に力一杯抱いてあげたい」と、あきおさんの横で嬉しそうにラブレターを読み上げます。あきおさんは几帳面な性格で、手紙や書類はハサミで切って開封するそうですが、「私からの手紙はみんな破って開けてある。それだけ待っててくれたんじゃないかと思って。ハサミで切るのももどかしかったんじゃない？」と分析（笑）。あきおさんはただただ優しい眼差しで、れいこさんがはしゃぐ姿を見守っています。
「自分のことは二の次で家族の幸せだけを願って一途にやってきてくれて、長い間苦労した末の行く先だから、今大事にしてあげないと。たまにはこんちくしょうと思うけどさ、手紙を見るとつい優しくしようと思っちゃう。こんなに一生懸命想ってくれた人と一緒になれたんだから幸せかな」。
症状が再び進行しつつあるそうですが、妻のことは忘れたくないと話すあきおさん。「死ぬのは私が先なんです。そう決めたんです。決めたんです」。れいこさんへの想いが痛いほど伝わってきます。れいこさんも自分が死んだらお墓に手紙を一緒に入れてほしいとお子さんたちにお願いしているといいます。「そしたらずーっと一緒にいられる」。
ちょうど実家にやって来た娘さんが、れいこさんの普段の様子を教えてくれました。「私たちがいないところで1人で苦労しているみたいで。介護のために心の支えだった踊りもやめて本当に残念に思っているはず。それを感じさせない母はすごい」。お店で出会った時から朗らかで、介護の苦労を微塵も感じさせなかったれいこさん。娘さんの「すごい」という一言に尽きます。
これからも、ご夫婦が末永く素敵な笑顔で毎日を過ごせるよう、切にお祈り申し上げます！
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