卵かけご飯にラー油を一回しで”中華めし”に!約50年”思い出の味”を守り続ける三鷹の町中華:ザ・タクシー飯店

公開: 更新: テレ東プラス

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東京・三鷹駅の北口を出て目の前の大通りを5分ほど歩くと、鮮やかな赤い看板が見えてくる。水ドラ25「ザ・タクシー飯店」第8話(最終回)の舞台となった「中華料理 安楽」、約50年、この土地で愛されてきた人気の町中華だ。

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町中華らしい看板に、ラーメンやチャーハンなどのメニューサンプルがずらりと並ぶショーケース。しかし、一歩店に入ると、赤い壁に映画や演劇のポスターを飾った、まるでカフェのようなスタイリッシュな空間が広がっている。

町中華をこよなく愛するタクシードライバー・八巻孝太郎(渋川清彦)がさまざまな人々と触れあいながら、町中華の名店を訪れる人情味あふれるグルメドラマ「ザ・タクシー飯店」。第8話では、偶然、孝太郎のタクシーに乗り合わせた元妻・真紀(りょう)と思い出の「安楽」を訪れ、昔から変わらぬ味に舌鼓を打っていた。

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「まさかうちの店が2人の初デートの場所だったとは。食事というのはその場限りのものですが、思い出は残るもの。そういう存在になれることが、店をやっているものとして理想なんです」と語るのは店主の山田誠一さん。

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1966年、父親の徳重さん(写真左)が豊島区要町に「安楽」をオープン。有楽町線の工事の立ち退きにより、1974年この地・三鷹に移転した。小学生だった誠一さんは、「この辺りは今のようにビルもなく、田舎に来たなと感じました。駅前から何件かのお店が連なる小さな商店街で、お客さんも家族連れが多かったですね」と当時を振り返る。

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現在は、後を継いだ誠一さんとともに、88歳の先代・徳重さんも厨房で腕を振るっている。

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広い店内には4人掛けのテーブル席が7卓。コロナ禍ということもあり、全体的にゆったりとした印象だ。以前は、町中華らしく壁一面にメニューが貼られていたが、約20年前の改装時に現在のスタイリッシュな赤い壁に。ポスターを飾るようになったのもこの頃。

「大好きなハリウッド映画のポスターを飾れるように、壁には大きいサイズの額を掛けました。最近では映画関係の知り合いも増え、邦画や演劇のポスターを飾っています。芝居小屋も近くにあるので、芝居を見に来た俳優さんが寄ってくれたりとつながりを感じることも多いですね

大学では英米文学を専攻していたという誠一さん。店を継ぐつもりはなかったそうだが、「就職もせずこの先どうしようかと考えていた時期に母親が亡くなり、アルバイトで店の手伝いもしていたのでそのまま続けて。料理も好きだったので、なんとなくここまでやってきた感じです。まさかこの年になるまで自分が続けているとは(笑)」と微笑む。

現在59歳、「私は他の人より知識があるわけではなく、特別な材料を使っているわけでもないので、ひとつひとつ丁寧に作っていくことを忘れてはいけない。普通のものを作っているからこそ、真剣なんです。自分が作ったものをお金を払って食べていただくという責任感は非常に感じています」との思いで店の味を守り続けてきた。

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ここで、孝太郎を演じる渋川さんもインタビューで印象に残ったメニューとして挙げていた「ラーメンと卵めしのセット」(750円)を注文。

ラーメンは、昔ながらのシンプルな中華そば。卵めしは、チャーシュー、ネギ、のりをトッピングした具だくさんの卵かけご飯。醤油二回し、ラー油を一回しするのがポイントだ。

「まかないとして卵かけご飯を食べていたところ、アルバイトの子が、のりやネギなどを乗せて食べ始めて。それがメニューになりました。ラー油を回しかけることで一気に中華めしになるんですよ」

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孝太郎たちも食べた「肉天ぷら」(1600円)は、ふわっとした食感で箸が進む。まずは、からしだけで。続いて、孝太郎オススメのからし&酢醤油、元妻・真紀オススメのソース、そして定番の塩コショウでも食べ比べ。どれも違った味わいがあり美味しいが、取材陣3人はありそうでなかったからし&酢醤油に軍配を。

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お客さんに「美味しい」と評判だという「ニラレバ炒め」(650円)。シャキシャキのニラとしっとりレバーの相性抜群。

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昔から変わらぬ町中華の定番に加え、真紀が食べた「チキンライス」(700円)などの洋食、また夜は"町中華飲み"のお客さんも多いそうでビールなどお酒に合う料理も...と多彩なメニュー。「昔の中華屋は、今のファミリーレストラン的な要素もあって。うちもカツ丼なども出していた時期もあるんですよ。時代とともに密かに変化しています」

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ファンも多い「厚揚げのうま煮」(750円)は、「父が知り合いのお店のコックさんに教えてもらったレシピ」とのこと。ご飯のお供にも、ビールにもピッタリ!

メニューの豊富さに驚くが、「何を食べてても美味しいと思ってもらえるように手を抜かずに頑張っています」と誠一さん。「例えば、"炒める"にしても、普通に炒めるのと、油に香りを移すために炒めるのでは全く違う。中華は、ひとつひとつの手順がすごく大事なんです。頬張ったときにふわっと香りが広がり、噛みしめると旨味を感じる...など、どのようにして美味しさが伝わっていくのかを考えこだわって作っています。きっと食べたときに違いが分かると思っています」

昨今の町中華ブームにより、幅広い層のお客さんが訪れるように。また、このドラマのように、数十年ぶりにふらっと立ち寄ったお客さんが「味が全然変わっていないね」と懐かしんでくれることも。誠一さんは「それなりに努力をしているので変わってないことはないんだけど...と思ったりしますが」と笑いながら、「何十年経っても『あの味を食べたい』と思ってくれているわけですから、そう言ってもらえるのはすごくありがたいです。どんどん変わっている世の中で、誰かにとっての"変わらない場所"であり続けられるのはうれしいです」と。思い出は美化されるもの。その味と"変わらない"ということは、たゆまぬ努力があるからこそ。

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感動しながら料理を堪能していると、誠一さんが孝太郎たちのデートの思い出でもある裏メニュー「薔薇トマト」を出してくれた。数年前、真裏にオープンしたブックカフェの常連さんにサービスで出したことが始まりだとか。こうしたアイデアも長年愛される理由のひとつなのだろう。

「みんなの思い出の場所になりたい」 誠一さんの願い通り、「安楽」は多くの人々の思い出の場所になっている。時代に合わせて変化し進化しながらも、"変わらぬ味"はいつもここにある。

【お店紹介】
中華料理 安楽
住所:東京都武蔵野市中町1-10-5
電話:0422-54-5533
営業時間:11:00~22:00
定休日:日曜日
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

(取材・文/玉置晴子)

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