ネットやSNSの普及で”オカルトの世界”は変わったのか「ムー」三上編集長に聞く

公開: 更新: テレ東プラス

――オカルトに興味を持つようになったきっかけは?

「『ムー』の編集部に入ったのは、学研に入社して半年後のこと。詳しくは本にも書きましたが、あくまでも人事の都合で『ムー』に異動したわけで、『ムー』編集部に入ってから、オカルトの世界にどっぷり浸かることになりました。
1970~1980年代、世間ではサブカルがあふれていましたし、当時の文化を共有している多くの人たちが、オカルトに興味があったのだと思います。例えば、ユリ・ゲラーに影響されて、みんなでスプーン曲げをやる、そういう時代背景がありました」

――確かに! みんなユリ・ゲラーの特番を見て、テレビの前でスプーン曲げに興じていました(笑)。インターネットやSNSが普及したことで、オカルトの世界も変わってしまったのでしょうか。

「今は情報がたくさんありますからね。昔は、新聞、本、テレビぐらいしか情報媒体がありませんでした。あとは現地の人と会い、ようやくぼやっとした情報がつかめるという感じです。そういう意味でいうと、“あやしい世界”は、昭和の時代とまるっきり変わってしまったといえるかもしれません」

――「ムー」の在り方も変わりましたか?

「『ムー』は紙媒体なので、一貫して変わっていません。もし、ネットで同じ記事を掲載するとしたら、作りや見せ方がまったく別のものになると思います。紙媒体だからこそ、書ける記事はたくさんある。わざわざページをめくって見る紙媒体とネットの配信記事とでは、概念がまったく違うと思っています」

――読者層はいかがでしょう。昔と今では違いますか?

「昭和時代のターゲットは中高生でした。その方たちがそのままおじさんやおばさんになって、今も読んでいただいております(笑)。全世代にわたって読者の方はいらっしゃいますが、一番多い読者層は、やはり昔から読んでいる40~50代。たまに“お父さんが読んでいます”“おじいちゃんが読んでいます”など、2、3世代にわたって読んでいるという声も聞きます」

――昔の「ムー」は、お手紙交換などのコーナーもありました。

「“ペンパルコーナー”はありましたね。学研は学年誌を出版していたので、その流れで『ムー』にも交流の場があったんです。雑誌に堂々と名前と住所が記載されるという……今では考えられませんが、個人情報が駄々漏れの時代でした(笑)」

――オカルトに興味を持つ人たちの根底には、どのようなものがあると思いますか?

「世の中の人が興味を持つ事柄のひとつに、“わからないこと”があります。“得体が知れないわからないもの”は恐怖であり、好奇心の対象にもなります。自分の頭では理解できないもの、自分が持ってないもの、怖いものには“あやしい”魅力があふれているんですよ。だからこそ、人は虜になるのだと思います」

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三上氏のインタビュー後編は、7月16日(土)夜10時に公開! 都市伝説、コンプライアンス・コード、競合誌がない理由など、“あやしい”編集長の真実に迫ります。

(取材・文/今泉)

三上丈晴 プロフィール】
1968年生まれ、青森県弘前市出身。筑波大学自然学類卒業。
1991年、学習研究社(学研)入社。「歴史群像」編集部に配属されたのち、入社半年目から「ムー」編集部。2005年に5代目編集長就任。
2021年6月24日より、福島市の「国際未確認飛行物体研究所」所長に就任。
CS放送エンタメ~テレ「超ムーの世界R」などメディア出演多数。
趣味は翡翠採集と家庭菜園。

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