ポスターでもおなじみ!夫婦二人三脚で50余年間、地元で愛される町中華:ザ・タクシー飯店

公開: 更新: テレ東プラス

「常連さんは、みなさん『昨日、見たよ』と声を掛けてくれて。ほかにも渋川清彦さんと宇野祥平さんが食べたメニューを順番どおり頼むお客さんもいたり。(放送から)1日も経ってないのに、すごい反響だね」

「髙木(雄也/Hey! Say! JUMP)くんにタクシーの鍵をわたすシーンがあったんだけど、緊張したわね。手だけかと思ったら顔もバッチリ映ってて。もうちょっとキレイにしておけばよかった(笑)」

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そう笑顔で語るのは、水ドラ25「ザ・タクシー飯店」(毎週水曜深夜1時放送/テレビ東京系)の第4話の舞台となった町中華「中華料理 タイガー」のご主人・太田正七さんと奥さんのチヨ子さん。

ドラマは、渋川清彦さん演じる、町中華をこよなく愛するタクシー運転手・八巻孝太郎が、さまざまな事情を抱えた乗客と触れ合いながら、町中華の名店を訪ねる...そんな人情味あふれるストーリーが人気。第4話では、八巻が元同僚の東屋敷(宇野祥平)に誘われて、疎遠になった家族との思い出の味である町中華の"黄色いカレーライス"を食べるべく「タイガー」を訪れた。

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東京都大田区西六郷。京浜急行いちの歓楽街・蒲田駅の隣にある雑色駅から10分ほど歩くと、「ザ・タクシー飯店」のポスターでもおなじみの看板が見えてくる。第4話オンエア翌日の貴重な中休み時間、温かく出迎えてくれたのが、先のご主人・正七さんと奥さんのチヨ子さんだ。店は、おおよそ6坪。「夫婦2人でやるには、このくらいの広さがちょうどいいの。目が行き届くから」とは正七さん。

カウンターが6席、4人掛けのテーブルが3席。味のあるカウンターやイスは開業以来そのまま使用しているそうだ。

「カウンターの一番奥の席が常連さんに人気で。たくさん座るからそこだけカウンターが手前に傾いちゃった。イスもすぐ破れちゃうから何度も修理してるね」(正七さん)。

「撮影が終わった後、髙木くんがカウンターでビールを飲んで帰りましたよ。お客さん役のエキストラの方とも楽しそうにしゃべってましたね。渋川さんも宇野さんもキレイに食べていかれました」(チヨ子さん)。

「タイガー」開業は、昭和43年11月25日。夫婦二人三脚で50余年間、店を切り盛りしてきた。現在も朝8時ごろから仕込みを開始。閉店後に後片付けをして、帰宅するのは夜の11時を回るという。

「昔はこのあたりにもっとたくさん町工場があって。そこの工員さん目当ての中華料理とかそば屋が(店舗前の)通りにズラっと並んでて、ずいぶん繁盛したよ。よそが一杯80円でやってたのを見て、ウチは70円にしたのがよかった。毎日、夜の9~10時まで出前してたから、帰るのは今よりずっと遅かったよね」(正七さん)。

「この人(正七さん)がしょっちゅう出前に行ってるものだから、私も料理が作れるようになったのよ」(チヨ子さん)。

何とも勇ましい店の名は、昭和初期に「中華料理 タイガー」の前身である「タイガー食堂」を創業した"トラゾウさん"という方の名前が由来だそう。最盛期は雑色駅と同じ京急沿いの梅屋敷駅のほか5~6軒の店舗を構え、現在も残る京急鶴見駅の「中華そば 生そば タイガー」のみが空襲から焼け残ったのだとか。そして昭和28年に、正七さんの親戚が暖簾わけで蒲田駅近くに出店。かつては、線路を挟んで反対側となる東六郷にも正七さんの実兄が営む店舗があったそうだ。

「山形から上京してサラリーマンをやってたんだけど、兄貴が蒲田の店で働くことになったから、俺もそこで見習いを始めて。開業資金がないからもう一度、会社勤めをしてお金を貯めて。結婚を機に店を開いたのがココの始まり」(正吉さん)。

「私は渋谷の中華料理店で働いていて、この人とお見合いで結婚したの。お互い山形の出身だった縁もありましたね。2人だけでずっと店やってるから訛りが抜けないんだけど(笑)」(チヨ子さん)。

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壁に貼られたお品書きは、飲み物を除いて70品ほど(※ただし現在、品書きにあるハンバーグは作っていない)。その中から正七さんオススメの「タンメン」と、お客さんのリクエストから生まれたという「肉とにんにくのめイタメ」をいただく。

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「朝早く起きて一生懸命スープを取ってるからね、麺ものはオススメ。あと、にんにくのめとかレバニライタメもよく出るね」(正吉さん)。

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「お客さんから『こんなのが食べたい』って言われて作ってるうちに、どんどんメニューが増えちゃって。そのうち近くにファミリーレストランができたからスパゲッティとかハンバーグとか洋食はやめて、中華に絞ったのよ」(チヨ子さん)。

出来上がりのボリューム感はまさに"働く男の飯!"という感じだ。見た目に反して丁寧に取られたスープは優しい。

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もちろん、八巻らが飲んだ瓶ビールも一緒にいただく。最近では滅多にお目にかかれない栓抜き付きの冷蔵庫から自分で瓶を取り出して栓を抜く。「よく冷えてるでしょ? ほかのと比べて冷えがいいからずっと使ってるんだけど、今じゃ店の名物みたいになっちゃったわね」と、チヨ子さん。

「2人だけでやってるのを見て、いつの間にかお客さんが自分で水を注いだり、ビールを取り出したり、いろいろやってくれるようになって。食べ終わったどんぶりを下げてくれたりね。初めて来たお客さんも、それを真似てやってくれたり。ありがたいよね」(正七さん)。

ちなみに、名物の「タイガー丼」は、蒲田「タイガー」の時代からあるメニュー。「サンマ―メン(※野菜と肉を炒めて乗せ、あんをかけた醤油ベースの神奈川県ご当地ラーメン)のあんがかかった感じだな」とは、劇中で食した八巻の感想だ。

「サンマ―メンのあんに近いですね。蒲田では中華丼もタイガー丼と同じように醤油味だったんだけど、違いがわかりにくいから、ココを開いた時に私が中華丼を塩と醤油味に変えたの」(チヨ子さん)。

カレーライスに関しては「ラードの旨味と甘味を感じる」と八巻が感想を述べていたが、実際「ウチの料理はラードが決め手。サラダ油では出ない味になるから」と、正七さん。