女子相撲の世界王者を目指すポーランド女性が、ニッポンで猛稽古!相撲部屋でちゃんこも初体験:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお届けします。

ニッポンで女子相撲のトップ選手と共に本物の稽古を

紹介するのは、ポーランド在住の相撲を愛するアグニエシュカさん。

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ニッポンの国技、相撲。起源は1500年以上前、その年の収穫を占う神事から始まり、鎌倉時代になると武士の鍛錬として行われ、江戸時代には現在の大相撲につながる興行も行われるようになりました。そんな長い歴史の中で、女子相撲がスポーツとして確立したのは1996年。海外にも一気に普及し、3年後には国際大会が開催されるまでに。

ポーランドの相撲人口は5000人とも言われ、女子選手の数はニッポンをはるかに上回ります。当時高校2年生だったアグニエシュカさんは、8歳の時に相撲を習い始め、2016年にはヨーロッパ選手権に出場。軽量級のチャンピオンに輝いた実力の持ち主です。

「私はニッポンの国技と言われる相撲を愛しています。試合はもちろん好きですが、元々神様へ奉納するための儀式だったことなど、他のスポーツにはない神々しさを感じます」。

ニッポンにはまだ行ったことはありませんが、猛稽古を続け、軽量級で獲得したメダルは100以上。そんな彼女には、どうしてもニッポンに行きたい理由があるそう。

同じ階級で、憧れの選手でもある山中未久さん。立命館大学相撲部の選手兼コーチで、全日本女子相撲選手権大会を7回制覇。さらに国際大会で4回優勝した、軽量級の絶対的エースです。アグニエシュカさんの今の目標は、山中さんと対戦すること。

「私の夢は女子相撲の世界王者になることです。そのためにニッポンで本物の相撲文化に触れたり、一流の選手たちと稽古がしたいです」と語るアグニエシュカさんを、ニッポンにご招待! 6年前に初来日しました。

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向かったのは京都・立命館大学の相撲部。憧れの世界チャンピオン・山中未久さんが在籍しています。しかし、まだ会えることを知らされていないアグニエシュカさんは、稽古中の山中さんを見てびっくり! さらに、高校生の時に世界大会でジュニアチャンピオンになった野﨑舞夏星(まなほ)さんの姿も。

立命館大学相撲部は、創部100年を超える名門。女子部員4名と男子部員8名が稽古に励んでいます。山中さんは、立命館大学卒業後も選手を続けながらコーチとして後輩の指導に携わっており、女子相撲部は4月の国際大会の団体戦で優勝を果たしました。

憧れの選手たちを目の前にし、緊張気味のアグニエシュカさん。山中さんと野﨑さんに、「お2人を目標に相撲をやってきました」と伝えます。すると、山中さんから「ぜひ、一緒に稽古しましょう」と嬉しい言葉が! 特別に2日間、稽古に参加させていただけることに。

いよいよ念願のニッポンでの相撲稽古がスタート。ヨーロッパの土俵はマットだったため、初めての砂の土俵に戸惑う場面もありましたが、まずは江戸時代から続く伝統的な稽古、四股から始めます。四股は相撲の基本である腰割りから。すると、野﨑さんから指導が入りました。

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腰割りの際は、「腰が低すぎると疲れないし、高すぎても疲れないから、一番キツいところで止める」と野﨑さん。体重を全部片方の足にかけて四股を踏みます。

普段はストレッチ程度の準備運動しかしていなかったアグニエシュカさんには、目からウロコの基礎稽古。相撲にとって大切な、下半身や股関節周辺の筋力強化につながるため、立命館大学では四股を100回踏むそう。

続いて、相撲の伝統的な稽古、鉄砲。鉄砲柱と呼ばれる柱や壁に向かって、左右の突っ張りを100回繰り返します。アグニエシュカさん、鉄砲はこれが初めて。

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同じ側の手と足を同時に出すのは意外と難しく、ちょっと苦戦。押す力をつける稽古なので、100回やると腕がパンパンになるそう。「キツいですが、本物の稽古ができて嬉しいです」。

次は一丁押し。立ち合いの当たりの稽古です。パワーには自信があるアグニエシュカさんは、男子部員を押し出します。彼女のパワーは、他の選手も驚くほど。

最後は、女子選手同士で真剣勝負。すると、軽量級世界チャンピオンの山中さんと、世界ジュニアチャンピオンの野﨑さんが激突! 立ち合いからスピードで山中さんが圧倒し、最後は上手投げで勝利しました。

「立ち合いからの攻防が速すぎてびっくりしました。前さばきのスピードなど、私たち欧米人より格段に上ですね」と感心します。

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山中さんの提案で、アグニエシュカさんと野﨑さんが真剣勝負することに。すると、野﨑さんのまわしがつかめず、どうしたらよいかわからないまま負けてしまいました。この対戦で、ヨーロッパの選手たちは全く手を使っていないことが分かったそう。

山中さんによると、日本の選手と海外の選手では全くパワーが違うため、前でさばいて相手の力を逃がしながら重心を崩して押し出し、まわしを取られないようにしているとか。力勝負のアグニエシュカさんにとって、前さばきの大切さを学んだ一番でした。

稽古終了後は、空気を揉むようにして清める、塵手水(ちりちょうず)という作法を行い、天井のバーにまわしを投げて干します。アグニエシュカさんも投げてみると、なんとかバーに掛けることができました!

その後、女子選手たちと向かったのは、体育会クラブの学生が寝泊まりできる合宿施設。ここで皆さんが、歓迎会を開いてくれることになり、山中さんが、自らデザインした女子チームのTシャツをプレゼントしてくださいました。仲間になった証のTシャツを着て、歓迎会がスタート!

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憧れの山中さん、野﨑さんをはじめ、シャイだけど頼れる稲葉映美さんに、チームのムードメーカー・加古若菜さん。この春、青森からやってきた、愛されキャラの今日和(こん ひより)さんが揃い、好きな決まり手や男性の好みなど、さまざまな話に花を咲かせます。

アグニエシュカさんの「相撲をやっていて何か悩みはありますか?」という質問に、相撲をやっていることをバカにされ、つらい思いをしたこともあったと話す山中さん。アグニエシュカさんもポーランドで「女性なのになんで相撲なんだ」と言われたことがあったそう。

「大好きなことだし絶対気にしないようにしています」と話しました。

そして迎えた最終日。前日に習った稽古から始めます。新入部員の仕事である、土俵ならしを行いました。これは相撲を取る前に必ず行うことですが......ここで山中さんから、神棚にお尻を向けないようにと指導が入ります。

土俵は、神様が見守る神聖な場所。大相撲の本場所前には、15日間の安全を願い、お米や昆布、塩などを土俵に奉納して安全を祈願します。稽古の時も、神様に敬意を払いながら土俵をならさなくてはいけません。

この日も真剣勝負が行われました。山中さんがアグニエシュカさんの相手に指名したのは、80キロ以上の重量級、今さん。63キロと軽量級にもかかわらず、パワーがあるアグニエシュカさんは、重量級の今さん相手に大健闘。負けはしたものの、粘りの相撲を見せました。

ここで終わらず、なんと憧れの山中さんとも対戦することに! 立ち合いから、終始腰が低い山中さん。まわしを掴みかけてもすぐに外され、押し出されて完敗。「手も足も出ませんでした」と思わず悔し涙が......。

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「技術の差をすごく感じました」と話すと、山中さんはまわしをつかませない技術を教えてくださいました。肘で相手の手を締めて力を失わせることを「おっつけ」と呼び、まわしを与えず、差し手を封じる効果があるそう。相撲はパワーだけではないことを知り、「これからは技を磨きます」と決意しました。

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稽古終了後、向かったのは立命館大学相撲部女子行きつけのレストラン。いつも食べているというメニューが運ばれてくると、その大きさにアグニエシュカさんは驚きの表情。

相撲部女子鉄板メニューは、1皿で5人前もあるオムライス。1キロのお米と牛乳瓶1本分ほどの卵で作られ、デミグラスソースが滝のようにかけられています。さらに、810グラムのパスタと1キロのピラフも注文。合計なんと15人前!

稽古の後なので、女子たちの食欲は止まりません。15人前を約30分でペロリ。美味しい食事に大満足でした。

お世話になった皆さんと別れの時。「皆さんのおかげで、ニッポンで本物の相撲の稽古がしたいという夢が叶いました」と感謝を伝えるアグニエシュカさんに、立命館大学相撲部のタオルと、似顔絵入りの寄せ書きがプレゼントされます。

「また世界大会かポーランドで会おうね」という山中さんの言葉に感激し、ハグを交わします。「山中さんは素晴らしい選手なので、ここで対戦できて本当に光栄です」とアグニエシュカさん。山中さんのお母さんが作ってくれたお相撲さんの人形もいただきました。

翌日向かったのは、千葉県松戸市にある佐渡ケ嶽部屋。通常、一般の方は入れない大相撲の相撲部屋ですが、特別に受け入れていただけることになり、アグニエシュカさんは「本当ですか!?」と大感激。

中に入ると、そこには佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)と、鳴戸親方(元大関・琴欧州)が。見学中、一般の方は土俵に上がることや私語などは厳禁。静かに見学させていただきます。

朝稽古は6時半から始まり、約1時間半、幕下以下の力士たちの激しいぶつかり合いが続きます。そして8時を回った頃、現れたのは関脇・琴勇輝関。いよいよ番付上位、幕内力士たちの稽古が始まります。

ここで、大関・琴奨菊関も登場。日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした、アグニエシュカさん憧れの力士です。若手の力士が懸命に押しますが、さすがは大関、びくともしません。

午前10時、朝稽古が終了。ここでようやく、佐渡ケ嶽親方に挨拶をします。「彼女は目の奥に力があるんですよ」「相撲を見ている時の目がすごく集中して見ているなと。相撲が強くなる人は目の奥に光るものを持っているんです」との言葉に、「恐縮です」とアグニエシュカさん。

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親方に、まわしが取れない時にどうしたらよいか聞くと、「押し上げた時に相手がのけぞるんです、そうしたらまわしが近くなる」「自分の形にするために攻め込む」との答えが。
さらに、稽古の時に見て気になった、肘を相手の脇に入れる形についても質問。これはまわしを取らせない、「腕(かいな)を返す」という技術。親指を相手の背中に付けるようにイメージすると上手くいくそう。

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ここで、憧れの琴奨菊関が! ポーランドにもファンがたくさんいることを伝えると、「わ〜嬉しいな」と笑顔があふれます。そして、親方、琴奨菊関、琴勇輝関と一緒にちゃんこをいただくことに。佐渡ケ嶽部屋特製、鶏団子のスープ炊きのほか、かき揚げや炒めものなど、初めてのちゃんこを満喫しました!

食後には、嬉しいサプライズも。琴奨菊関、琴勇輝関の手形サインや佐渡ケ嶽部屋のタオルなどたくさんのお土産をいただき、大喜びのアグニエシュカさんでした。