ラーメン移住、離島に新卒女性...移住の新たなカタチ:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

6月17日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「こんな町なら住んでみたい!」。コロナ禍でリモートワークなど新しい生活様式が広まる中、都会から地方への移住を希望している人が増えているという。町も人も幸せにする、新たな移住のカタチを取材した。

ラーメン店主になって移住!?佐野市公認「らーめん予備校」

都心から車で約1時間半の栃木・佐野市。佐野には「厄除け大師」や「佐野プレミアム・アウトレット」があり、ご当地グルメとして「佐野ラーメン」が名物の一つになっている。
澄んだしょうゆスープと歯応えのある縮れ麺が特徴で、この味を求め、県外からも多くの人がやって来る。

gaia_20220617_01.jpg
市内にある約150ものラーメン店はどこも大盛況。人気店では3時間待ちにもなることも。しかし佐野市は、観光客が増える一方で、住民が減るという地方都市の現実に直面していた。現在約11万6000人の人口が、今後40年で8万人を割り込むという試算もある。

gaia_20220617_02.jpg
移住者を増やしたい...。その切り札となるのが、市役所のそばにある「佐野らーめん予備校」だ。2020年に市が始めたプロジェクトで、移住希望者にラーメン作りのノウハウを教えるだけでなく、開業までサポートする。手に職をつけて定住してもらうのが狙い。これまでに9人が受講し、すでに3軒が開業している。

今年3月にオープンしたばかりの「佐よし」もその一つ。店主の佐藤義之さん(40)は、去年まで東京で和食店の板前をしていたが、コロナ禍で転職と移住を考えるように。ラーメン作りは素人だったが、予備校に通い、わずか1年で開業した。
すると、店はいきなり月300万円を売り上げる人気店に。4人の子を持つ佐藤さんの自宅は、間取りが7LDKで家賃は月10万円。以前はほとんど持てなかった家族団らんの時間もつくれるようになった。佐藤さんは「東京では絶対に考えられない」と話す。

gaia_20220617_03.jpg
そんなラーメンドリームに魅せられ、東京・大田区から佐野市へ移住しようとしている人がいる。羽鳥公之さん(57歳)は、2年前まで大手外食チェーンでバイヤーをしていた。
第2の人生を考えた時、昔、住んだことのある佐野市が思い浮かんだという。

gaia_20220617_04.jpg
「幼少期から佐野ラーメンを食べていて、1~2時間並んで待つというのも普通に見ていた。そのお客さんも狙える」とやる気満々の羽鳥さん。だが一方で、奥さんが移住に乗り気ではないという悩みを抱えていた。妻の気持ちを動かしたい...。羽鳥さんが向かったのは、あの「らーめん予備校」だった。

5月12日は入学式だったが、第6期の受講生は、羽鳥さんただ一人。研修費用は約15万円(9日間)で、移住が決まれば、奨励金として10万円が戻ってくる。

いよいよ研修が始まった。指導する五箇大成さんは人気ラーメン店の店主だったが、市の取り組みに賛同し、店を辞めて講師を引き受けた。初日は五箇さんの指導のもと、羽鳥さんが粉から佐野ラーメンの特徴である"縮れ麺"を作る。

粉全体に水がいきわたるように少しずつ加水しながら混ぜていくのがコツだが、粉はべちゃべちゃに。お次は、佐野ラーメンの伝統技法"青竹打ち"に挑戦。

gaia_20220617_05.jpg
体重をかけて一気に生地を延ばすことでコシが生まれるのだが、これもなかなかうまくいかない。さらに麺を切ると、太さも長さもバラバラになってしまった。

gaia_20220617_06.jpg
外食業界に勤めていたこともあり、自信をもって挑んだラーメン作りだが、そう甘くはない。羽鳥さんはホテルに戻り、復習をしながら「正直疲れましたね...。結構ショックでしたね」とつぶやいた。

その後も、スープづくり、経営に関する座学、物件探し...。らーめん予備校の手厚いサポートを受けながら研修は続く。果たして羽鳥さん、佐野でしか味わえない"第2の人生"をスタートさせることができるのか。

移住者✖️"複数"の仕事 驚きの仕組みが過疎の離島を救う

gaia_20220617_07.jpg
日本海に浮かぶ離島、島根・隠岐諸島の一つ、海士町。後鳥羽上皇が島流しにあい、晩年を過ごした場所としても知られている。コンビニもスーパーもなく、信号機も1つしかない人口約2300人のこの島に、今、移住者が急増。島の人口の約2割が移住者だという。
子育て世代に手厚い支援がその理由の一つだが、さらなる秘密は、島での仕事にあった。

漁船の上にも、山の現場にも、島のいたるところに移住者の姿が・・・
さらに、林業の現場で働いていた人が、後日、島のレストランのスタッフにジョブチェンジ。
実はこれが移住者を呼ぶ秘密・・・その名も「海士町複業協同組合」。
その文字通り、複数の仕事を請け負う組合なのだ。

誰でも入ることができ、移住してこの組合に入った人は、最初の1年で少なくとも3つの仕事を経験。自分に本当に合った仕事を見つけることができる。

gaia_20220617_08.jpg
いくつかの現場を経験し、今は養殖の現場で働く雪野瞭治さん(30)は、1年半前に東京から一家3人でこの島に移り住んだ。大学院を卒業後、東京でコンサルタントをしていた雪野さんだが、子育てのことも考えての決断だった。雪野さんは、

「僕の持てる選択肢の中で、ここよりいい考えは思いつかなかった」と話す。

移住者は自分に合う仕事を見つけることができ、過疎で人手不足に悩む町は、やる気のある働き手を確保できる...まさに一石二鳥のこのモデルは日本中から注目されている。海士町の大江和彦町長は「(移住者の)修行の場として複業協同組合を捉えている。巣立って島で自立してもらう。この働き方は、全国の過疎地域に共通する」と狙いを話す。

gaia_20220617_09.jpg
福岡市から海士町への移住を決めた人がいる。
空閑みなみさん(22)は、この春、大学を卒業したばかり。

「都会だと、お金さえあればいろんなものが手に入る。もっと人と関わって生きていきたい。仕事面でもプライベートでも人と関われるような地域の町、海士町を選びました」と移住の動機を話す。

福岡で母親と2人で暮らす空閑さん。この娘の決断に、母は戸惑っていた。

「不安、ほぼほぼ不安。どの仕事に就くかも分からないのに、林業とか漁業とか、やったことないでしょって」。

3月末。海士町へ向かうフェリーの客室には、空閑さん親子の姿があった。到着した2人は、島自慢の美しい海や夕日の絶景に目を奪われる。

gaia_20220617_10.jpg
その日の夜、2人で話し合い、母は「やってみたらいい所かもね。あなたの人生だから」と娘に声援を送った。

翌日。島を離れる母を見送り、空閑さん一人の生活が始まった。
4月に複業協同組合に入ったのは空閑さんただ一人。後はみな、先輩たちだ。

空閑さんの仕事選びが始まった。最初に向かったのは島の海産物を扱う水産加工場。次は船に乗り、漁業も体験。どの職場でも複業組合の先輩が働いているので、丁寧に教えてくれる。
新卒で移住を決めた空閑さんは、最初にどの仕事を選ぶのか?

番組では、新人・空閑さんの島での仕事ぶりや移住生活に密着。島で新しいコミュニティーが生まれていく瞬間にも立ち会った。

gaia_20220617_11.jpg
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!