久我は浅野から取り調べを受けていた。
「どうして桑村みどりを監禁した」
「愛してるからだよ」
「ちゃんと答えろ!」
「男の嫉妬はみっともない。この先、みどりは君じゃなくて僕だけを思い出す。君はただの過去の男」
久我は自らの肩に彫ったみどりのタトゥーを見せつけ、
「僕とみどりは、お互い魂レベルで刻み込まれてるんだよ。お互いに殺したいほど愛し合ってる」
と言って、タトゥーのみどりにキスをする。
「これ以上の愛はないよ。あ、君も自分を逮捕した男として覚えていてもらえるかもね。羨ましいなぁ〜」
ニタニタ笑う久我の襟元をつかみ、壁に押し付ける浅野。そして、怯えて何も言えない久我に、「俺は何度でもお前を捕まえる」と迫る。
「お前がシャバに出てきてもすぐに捕まえる。どんな些細な罪でもだ!」
「け…警察が一般人を脅しちゃダメでしょ…」
「脅しじゃない、本気だ。どこまでもお前を追い回してやる。覚悟しとけ!」
浅野の勢いに圧倒され、久我はその場にへたりこむのだった。
◆
拘置所にいるみどりのもとに、一冊の本が差し入れとして届けられる。それは、みどりが敦子に修復を頼んだ「老人と海」。みどりは、完璧に修復されたその本を、大事そうに抱きしめるのだった。
みどりの裁判が始まった。第一回の公判で、殺意はなく、正当防衛で押本を刺したと証言するみどり。しかし検察は、確実に急所を狙っていることから、殺意があったと主張。
「パニック状態にあった被告が振り回したペンが、偶然、急所に2度も突き刺さった? このペンで被害者を死に至らせるには、綿密な計画と明確な殺意を持って臨まないと不可能だったでしょう」
「検察官の発言は、全て憶測の域を出ません」と意義を申し立てる桂。
3回目の公判で、弁護人側の証人として敦子が現れた。敦子に証言を頼んでいたことを知らなかったみどりは、激しく動揺する。
証言台に立ち、「押本は7年前、突然私に襲いかかってきました」と証言を始める敦子。
「人目につかないところで顔面を殴られ、スカートと…下着を、無理やり脱がされました。そして私の口を塞いで、レイプしました」
震える声で証言する敦子に、ざわつく法廷。検察官は異議を申し立てるが、桂は
「証人の証言は被害者の残虐性を明らかにすることで、被告人の正当防衛という事実を裏付けるものです」
と主張。異議は却下され、証言を続けることが許された。検察官は、敦子に質問する。
「被告人はあなたと同じように性被害に遭った経験があるといいます。被告人は押本のような人間を憎んでいた。だから、あなたに代わって押本を殺した。その可能性はありませんか?」
「みどりさんはそんなことするような人じゃありません」
「被告人は、押本さんの自宅に盗聴器、押本さんの衣服にスマートタグを仕掛けていました。あなたからの依頼ですか?」
「…いえ、頼んでいません」
「そう! 被告人は頼んでもいない違法行為をする人間なんです。誤った正義感から、殺意を持って押本を殺したとしても、不思議じゃない」
「確かに、みどりさんはいつも頼んでもいないことをしてくれました」
「そうでしょう。そういう人間なんです。以上です」
嬉々として席に戻る検察官と、「みどりさんだけが、頼んでもいないのに私の日常を守ろうとしてくれた」と強い口調で主張する敦子。
「私は今でも時々、事件を思い出してしまいます。暗い道を歩いていると、後ろに男性が歩いていると、もう一度同じことが起きる気がして…」
「……」
「でも…」
目に涙を浮かべ、みどりを見つめる敦子。果たして、みどりの運命は…? 衝撃のクライマックスへ!