ベテランになるほど仕事が減る?声優界のギャラ&ハラスメント事情...60代の新人が重宝されるワケ

公開: 更新: テレ東プラス

――業界に入ってみて、想像と違ったことはありますか?

「“ベテランの人も意外と食べられない業界なんだな”と驚きました。一時は爆発的に売れたのに、今となってはあまり仕事がなく、アルバイトしながら声優を続けている方も…。現場があまりなく、講師をして食いつないでいる方も多いですね。子どもの頃に憧れていた売れっ子声優さんが、養成所の講師として現れた時は本当に驚きました。アルバイトを掛け持ちしたり、正社員として働きながら声優をしている方もいます。
必死で実績を積み上げてきても、ランクが上がってギャラが高くなった途端、仕事がなくなることもある。しかも、いつ仕事が入ってくるか分からないから副業も限られてくる。声優として生活するのは、かなり大変なことだと思います。有名で実力があっても、仕事が続くとは限らない…厳しい世界だと思います」

jinseigekijo_20220615_02.jpg画像素材:PIXTA

――仕事をもらい続けるために必要なことは何なのでしょうか。

「もちろん芝居の実力は必要ですが、コミュニケーション能力も大事だと思います。特に若手のうちは飲み会で気が利くとか、幹事を買って出るとか…。『この人がいると現場がうまく回る』という人材は重宝されると思います。
あとは諦めない心が大事だと思います。声の良さやビジュアルを武器にできる期間は短いので…。最終的には芝居力のある人が残ると思いますし、画とマッチさせるための技術も必要です」

――業界内の問題点は他にもあると思いますか?

「映画業界でも問題になっていますが、ディレクターが若手の声優にセクハラやパワハラをしたという話を聞いたことがあります。現場で特定の若手をターゲットにし、いじめのようにダメ出しをして、自分の権力や強さをアピールする方がいるようです。精神的に追い詰められ、辞めてしまった人もいます」

――ディレクターやプロデューサーが絶対的な存在であり、逆らえないということですか?

「『逆らったら仕事が無くなるんじゃないか…』と不安になる声優はすごく多いと思います。対ディレクター、プロデューサーだけでなく、マネージャーからの飲みの誘いを断れないという人もいます。男女問わず、呼び出しに応じないと仕事を回してくれなくなったり…。ただ、本当にマネージメントの意味合いで飲み会に呼ばれることもあります。マネージャーの呼び出しで行ってみたら、その場に制作の方がいて、仕事に繋がったこともあるので。どの業界もそうかもしれませんが、スタッフに気に入られないと仕事が入りにくいという部分はあると思います」

――各方面に気を配りつつ、ハラスメントも警戒しなくてはならないのですね。

「それでも最近は業界全体でハラスメントに敏感になっていて、無記名で通報できる窓口ができました。少しずつでも改善されるといいなと思います」

メディアへの露出が増え、ますます注目が高まる声優という仕事。今回の取材を通して、決して華やかさだけではない、リアルな裏事情が見えてきた。
何十万人ものライバルに競り勝ち、プロとして仕事に就くためには、並々ならぬ努力と押し寄せる困難を乗り越えるだけの根性、そして志が必要なのかもしれない。