一方の浅野は、押本の捜査から外れるよう指示されていた。
「桑村みどりはお前の婚約者だろう? お前にまともな捜査ができるとは思えない。これは命令だ」
「……」
みどりは押本を殺害する前に、自ら探偵事務所を辞めていた。事件はテレビでも報道され、そのニュースを見ながら所長の岡庭正(高橋英樹)は肩を落とす。するとそこに浅野がやって来た。
「ここを辞めたとお聞きしました」
「私も止めたのですが、彼女の意思が固くて」
「みどりが昔、久我からストーカー被害を受けていたのは知っています。でも、みどりに久我のことを聞いても、何も教えてくれなくて…。2人の間に何があったんですか?」
「聞く覚悟、ありますか?」
「!」
かつて久我からのストーカーやDV被害を、この探偵事務所に相談していたみどり。浅野は当時の資料を読み、その凄惨さに絶句する。
「性被害は、大切な人にほど言えないものですからね。あなたから久我の名前が出る度に、彼女の心は傷ついていた。全てを知ることだけが愛情ではありませんから」
「……」
その頃、久我は甲斐甲斐しくみどりの世話を焼いていた。
「みどり、ポトフ好きだろ?」
「いらない」
久我はポトフの具をすくって口元に差し出すが、拒否するみどり。仕方なく口を開け、ポトフを口にするが、それを久我に向けて吐き出す。
「……」
久我はにっこり笑って、みどりの顔面を殴打するのだった。
◆
退院した敦子が勤務先の図書館を訪れると、同僚の遠山大輔(黒羽麻璃央)が「もう大丈夫なんですか?」と近づいてくる。敦子に思いを寄せる遠山は、逆恨みした押本に怪我をさせられていた。敦子はそのことで自分を責めていたが、その後も変わらず接してくる遠山。
「たまには外出しないと、仕事に戻れなくなっちゃうから」
「早く戻って来て欲しいです。敦子さんのいない図書館は、ラーメンがないラーメン屋さんみたいな感じで」
「遠山さん、お願いしたいことがあるんですけど」
「やります!」
笑顔で即答する遠山。
みどりの自宅前にやって来た敦子と遠山。付近には立ち入り禁止のテープが張られ、警察官が立っている。
「すみません! 今、目の前で自転車が盗まれて、ちょっと来てくれませんか!」
見張りの警察官の気を引き、連れていく遠山。その隙に、敦子はみどりの部屋に入っていく。押本の遺体があった場所には血痕が残っており、思わず目を背ける敦子。
お風呂やキッチン、トイレなど様々な場所を見ていくと、本棚に異変を感じた。以前みどりに見せてもらった学生時代の卒業アルバムが消えているのだ。
「!」
◆
みどりは変わらず久我に拘束されていた。久我の目を盗んで縄を解こうとすると、徐々にほどけてくるのが分かる。必死に手をずらすとようやく縄が解け、みどりは地下室からの脱出に成功した。
周囲を警戒しながら玄関に向かい、裸足のまま家の外に飛び出す。
「どこ行くの〜?」
背後から久我の声が…! みどりはこのまま逃げることができるのか!
【第8話 最終話】
桑村みどり(倉科カナ)の押本(丸山智己)殺しが裁判で問われることに。正当防衛を主張するみどりに対し、検察側は殺意があったと主張。弁護する桂(藤田弓子)は、敦子(久保田紗友)に証人になって欲しいと頼み込む。過去の傷をさらけ出してでも証言するべきか悩む敦子。
一方、久我(竹財輝之助)の取り調べを進める浅野(平山浩行)は、一向に反省しない久我に怒りを露わにし…。
探偵事務所で岡庭(高橋英樹)に背中を押された敦子は証言台に立つ覚悟を決める。辛さを乗り越え、みどりのために証言をする敦子を見たみどりは…。
これは悪か、救いか? 男たちの身勝手な欲望により身も心も傷つけられた2人の女性が絶望から希望をつかむため、衝撃のクライマックスへ…。