「やはり娘さんの人形だったってことですね。でもなんでそのお寺に？」
「駅のベンチに忘れ物として残されていたのを駅員が見つけて、人形を捨てるのもしのびないって、その寺に持ってきたらしい」
「その“さくらみき人形”がこれってことですよね。なんで今、Twitterにアップされているんですかね？」
「わからない。その母親からその後、連絡が来た記憶もないしな」
花岡が『＃犯人の声です』というハッシュタグをクリックしてみると、『罰するべきだ』『絶対に許せない』『犯人はあいつしかいない』『聞き覚えのある声』『Jに集結』などのツイートが投稿されていた。
その中のひとつに、『行方不明の女児、遺体で発見。誤って転落か』という5年前のネットニュース記事が貼り付けられている。
「今月1日から行方不明となっていた佐倉瑞希ちゃんが遺体となって発見された。『ジョイジョイランド』の開園日に家族で訪れたが、行方がわからなくなっていた…」
記事を読み上げた花岡は、“佐倉瑞希”でネット検索をかける。すると、『瑞希ちゃん捜索サイト』というページが出てきた。そこにはブログのような形式で文章が綴られている。
◆
2017年4月2日(月)
皆様にお願い。
私たち夫婦には、一人の娘がいます。佐倉瑞希という名前です。
昨日、開園したばかりの「ジョイジョイランド」に連れていったのですが、そこで行方がわからなくなりました。
些細な情報でも構いません。もし何かご存じの方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
2017年4月3日(火)
瑞希はまだ見つかっていません。
生き生きと希望を持って人生を歩んでほしい、という願いをこめて『瑞希』という名前をつけました。
ただ、幼かった娘は『みずき』の『ず』をうまく発音できず、自分のことを『みき』と言っています。
『もう少し大きくなったら、みずきって言えるようになるよね』
私たち夫婦は、その日をとても楽しみにしています。
それらしい子を見かけましたらご連絡ください。
2017年4月4日(水)
ご報告。
瑞希が見つかりました。最悪の形での帰宅となりました。
娘は、自分の名前を一度も正しく口にしないままこの世を去りました。
警察の方がおっしゃるには事故だそうです。私たち夫婦はそれを受け入れることはできません。あの日、遊園地になど連れて行かなければ。
悔やんでも悔やみきれません。
2017年4月30日(月)
瑞希はいつも人形を肌身離さず持ち歩いていました。その人形があの日以来見つかっていません。
右手を握ると『さくらみきだよ』と喋る女の子の人形です。
人形について、些細なことでも構いません。何かご存じの方、いらっしゃいましたら情報をください。
2017年6月11日(月)
ある方の情報により人形が見つかりました。
おかげで瑞希の死は事故ではなかったのだと確信しました。
これが瑞希を殺した犯人の声です。
聞き覚えのある方、ご連絡ください。
◆
2017年6月11日の投稿には音声ファイルが添付されていたが、リンクが削除されていて再生できない。そして2017年6月12日には『皆様、情報ありがとうございました。本日で、このホームページの更新は終わりたいと思います。Xデーまでさようなら』という文章とともに、子どもが描いた絵が添付されていた。
「この絵って…」
その絵は、先ほど見つけた気味の悪いお面の画像と一致する。
そこからしばらく投稿がなく、2022年3月31日、つまり昨日の日付で『明日はXデー。やっと娘に良いお知らせができそうです。みずき見ててね』という文章がアップされていた。
「昨日書かれてますよ…！」
「これって今日がXデーってことだよな」
「あの、ずっと気になってたんですけど…。“さくらみき人形”が話す言葉って、『さくらみき“だよ”』じゃなかったんですか？」
疑問に思った花岡は、Twitter上にあげられていた“さくらみき人形”の映像を再生する。すると確かに、「さくらみき“だよ”」ではなく「さくらみき“です”」と言っている。
さらによく聞いてみると、「さくらみきです」の前に「お名前は？」という何者かの声が…！
「これ、誰かに言わされてません…？」
生放送で徐々に明かされる事件の真相！ 恐怖の結末とは！？
火曜深夜0時30分からは、「何かおかしい」【第2話】「虹色のハンカチ」を放送！
現在、人身事故により裁判中のアイドルCHAMI（筧美和子）をゲストに『オビナマワイド』は生放送中。CHAMIがロケ中に発見したという庭先にカラフルなハンカチが虹のように連なる一軒の民家。そこの住人の佐々木に1枚のハンカチをもらい大切にしているというCHAMI。
佐々木は刑期を終え出所してくる人々に優しく声をかけ、涙した彼らにハンカチを渡し『事故を起こして一度は失敗した人たちに、人生をやり直すのを励ます。
ハンカチには更生に向けたエールが込められている。』と誰もがそう思っていた。
しかし、ハンカチだと思っていた布をよく見ると・・・。さらに、優しい佐々木にはとんでもない裏の顔があったのだ。
