浅野から逃げきった押本が、公園で頭の傷を手当てしていると、スマホが鳴った。非通知設定からの着信だった。
「この声、誰だか分かる?」
「桑村みどりか!」
「嬉しい、覚えててくれたんだ」
「次会ったら、お前も殺す!」
「こっわ〜。でも…そんなところにいて、私を殺せるの?」
どこかで見ているというような口ぶりに、押本はキョロキョロとあたりを見回し、「姿を見せろ!」と叫ぶ。
「おっきな声。それより、近くにいるその男、警察だから」
「ああ!?」
「あなた、この公園が警察の溜まり場だって知らないんでしょ。捕まりたくないなら、逃げた方がいいわよ」
押本は悔しそうにその場を去る。みどりは少し離れた場所に停めた車から、その様子を見ていた。
押本の上着にはGPSが仕込まれている。みどりは追跡画面を見ながら、「これが狩られる側の恐怖よ」とつぶやいた。
病室では敦子が目を覚ましていた。医師の診察後、浅野がやって来て聞き取り調査を始める。
「あの公園、あなたが7年前に押本に襲われた場所ですよね。なぜ昨日、あの場所にいたんですか?」
「押本に呼び出されて会いに行ったんです。直接話して、全部終わらせようと思ったんです。そうしないと、あの男は一生私に付きまとうと思ったので…」
「警察に通報すれば、逮捕できました」
「それで終わるんですか? あの男は、何度捕まっても私に復讐するつもりです。だから、自分でなんとかしないといけないと思って…でも何もできなくて」
「……」
押本は歩道橋の階段に身を潜めていた。すると再びみどりから電話がかかってくる。
「隠れる場所としては悪くないわね」
キョロキョロとみどりを探す押本。
「ねぇ、私と取引しない?」
「ああ!?」
「久我とのこと、警察に言わないで欲しいの。もし黙っていてくれてたら、敦子さんに会わせてあげるから」
「! あの女に」
「私もあなたと同じでまずい状況なの。だから…ねぇ?」
「俺を騙したら、どうなるか分かってるんだろうな」
「あなたの怖さは私もよく分かってる。夜、私の家に来て。また連絡する」
「分かった」
電話を切り、敦子の病室にやって来たみどりは、「時間なくてコンビニのものだけど」と笑顔でお見舞いの品を渡す。病室の外で見張っていた刑事は、「会話の内容までは把握できませんが」とみどりが現れたことを浅野に報告する。
「押本が話してたこと、嘘ですよね? みどりさんが久我を…」
「嘘に決まってるでしょ。その件はもう大丈夫だから、心配しないで」
「ですよね」
「敦子さん、退院したら何したい?」
「え?」
「いや、退院して自由に動けるようになったら、敦子さんは何したいのかなぁって」
みどりの異変に感づいた敦子は、みどりの手を握り、「危険なことはしないでくださいね」と言う。
「押本の事で、あんな奴の事で、みどりさんが傷つくのは絶対に嫌です」
「私ができることは全てやったから。後は、警察の仕事」
みどりはにっこり笑って病室を出て行こうとするが、「一緒にピクニックに行きたいです」という敦子の呼びかけに振り返る。
「退院して自由に動けるようになったら、みどりさんとピクニックに行きたいです。私、景色のいい丘知ってるんです」
「いいね」
「行きましょう、2人で。約束です」
◆
夜。押本は言われた通り、みどりの家にやって来た。
「ようこそ…」
果たして、みどりの思惑とは…!?
【第7話】
桑村みどり(倉科カナ)の自宅で押本(丸山智己)が遺体で発見された。警察はみどりの行方を追う。一方、突然現れた久我(竹財輝之助)に殴られ、意識を失っていたみどりが目を覚ますと、そこは人気のない久我の別荘だった…。みどりは拘束され、常に久我の監視下におかれた監禁生活を送ることに。久我の歪んだ愛情は、誰もの予想を超えた異常行動へと発展してゆく!
そんな中、探偵事務所を訪れた浅野(平山浩行)は、岡庭(高橋英樹)にみどりの過去を尋ねる。また敦子は、同僚の遠山(黒羽麻璃央)と共に、みどりの行方の手がかりを探すべくみどりの家へ侵入し、あることに気づく。