コロナ禍で妊活を決意した夫婦...家族全員が感染「出産に対する不安よりも、子どもができたことへの驚きと喜びの方が大きかった」

公開: 更新: テレ東プラス

――後藤さんの周りに、同じようにコロナ禍での妊娠・出産を経験した方はいましたか?

「実は思いのほか、多くの友人がコロナ禍で出産していました。情報交換ができてうれしかったのですが、出産した時期が少し違うだけで差があり、歯がゆい気持ちになることもありました。
例えば、『東京都出産応援事業(赤ちゃんファースト)』が実施され、対象となる世帯には、10万円分の育児用品・子育て支援サービスなどが提供されますが、数ヵ月違いで対象外になってしまった友人もいて…。その友人は双子を出産したので、本人よりも私の方が悔しい気持ちになりました」

――退院後は、コロナ禍での子育てが始まりました。一番困ったことは?

「元々里帰りをする予定はありませんでしたが、慣れない子育てで不安になった時、実母や姉妹に『助けに来て欲しい』と気軽に言えなかったことです。お互いの感染リスクはもちろん、集合住宅に住んでいるので近所の方の目も気になってしまい…。
最初の1ヵ月は、育休を取得した夫と手探りで息子の世話に追われましたが、必死すぎてあまり記憶がありません。乳児健診も集団ではなく、個別で受けたため、産後しばらくはママ友を作る機会がなかったです」

――ご実家にもなかなか頼ることができない中で、初めての子育て…体力や精神面で限界を感じることはありませんでしたか?

「夫の育休が明けて息子と2人きりになり、しばらく経った頃、緊張や寝不足で『これはヤバいぞ』と思い始めて、市が提供する産後ケア事業を利用しました。近隣の助産院に母子で宿泊することができますが、3食とおやつ、お昼寝付きで、夜も息子を預けられるので、大変ありがたかったです。マスクの着用以外はコロナ禍を忘れてしまうようなステキな空間で、大人と会話できることに安らぎを感じました。2泊3日でしたが、数ヵ月分の弱った体と気持ちがぐんと回復したような気がします」

shussan_20220601_03.jpg画像素材:PIXTA

――感染者数が落ち着いたとは言えないものの、徐々に行動制限の緩和が進んでいます。子育て世帯にとっても、生活に変化は出てきましたか?

「息子も大きくなってきたので、少しだけ遠出するようになりました。近隣の商業施設にも出かけるようになって、だんだんと気持ちが緩んでいたのかもしれません。ここ数ヵ月は親子で行ける集まりにも参加していましたが、実は3月末に突然息子が発熱したんです。結果的に新型コロナに感染していたのですが、最初は小児科でも『保育園に通っていないなら違うでしょう』と診断されました。しかし、2日後に私が、その2日後に夫が発熱し、そこで初めてPCR検査を受けて、感染が判明しました」

――家族で感染してしまったのですね。

「はい。私と夫は喉の痛みと軽い発熱でしたが、息子は40度を超える高熱が出ました。翌日には落ち着いたものの、深夜に小児医療相談に何度も電話をかけて…。息子のことを考えて、もっと慎重に行動するべきだったと反省しました」

――そんなご苦労の末、もうすぐお子さんが1歳を迎えられます。コロナ禍での妊娠・出産・子育てを振り返って、今の気持ちを教えてください。

「私の場合はコロナ前の出産や子育てを経験していないこともあり、妊娠から出産まで楽しむ余裕はなかったものの、この状況を受け入れやすかったのかなとは思います。
感染対策や実家を思うように頼れないなど、大変なことはいくつもありましたが、いつの日か息子に『あなたが生まれた時はね…』と話をする時が来るのかなと。1日も早くコロナが収束することを願って…今は子育てに全力投球するのみです」

(取材・文/ふくだとも)