「金の蔵」が鮮魚を使った仰天店舗に...生き残りをかけた業態転換の行方:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

5月20日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「大変身!居酒屋 魚のプロになれ...」。新型コロナウイルスの感染拡大で最も厳しい目を向けられた居酒屋業界。番組は大手居酒屋チェーンの業態転換に密着し、その行方を追った。

居酒屋をやめて漁師になる!?

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全品270円(税別)という激安価格で、宴会コースは8品、飲み放題がついて2,480円。徹底した合理化で安さを実現し、一世風靡した居酒屋チェーン「金の蔵」は、多くのサラリーマンの胃袋をわしづかみにした。
しかし、コロナの影響で、最盛期100店舗近くあった店は8店舗(2021年)にまで激減。客であふれていた西新宿の総本店は、今、駐車場になっている。

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大量閉店を決めたのは、「金の蔵」を運営する「SANKO MARKETING FOODS」の長澤成博社長。大手通信会社からの転職組で、営業本部長として活躍した手腕を買われ、2018年、社長に就任した。「この局面なので、とにかく会社を潰さない。社員の雇用を何とか確保する場をつくる。それを最優先してやっていく」と話す。

経費削減のため、本社を居酒屋の宴会席だった場所に移転。コロナ前、約107億円(2019年度)あった売上高は、約21億円(2021年度)に激減した。これまでのやり方では、生き残るのが難しいと考えた長澤さんは、さいたま市の大宮駅東口に残る「金の蔵」のリニューアルを決断する。

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長澤さんの大いなる決断...それは、鮮魚店と飲食店が同居する店。ターゲットは、コロナで外で飲まなくなったサラリーマンではなく、地元・大宮周辺に暮らす人たちで、3月1日のオープンを目指す。

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「SANKO」は、新鮮な魚を提供するため「沼津我入道漁業協同組合」と業務提携。水産事業部部長・廣岡勉さんは、魚市場で仲買人の仕事に精を出す。
仲買を始めて約1年。コロナ前は仕入れ部門の部長だったが、沼津の責任者に指名され、埼玉に妻と4人の子供を残して単身赴任中だ。「出来る事は何でもやる」と、小型船舶操縦免許も取得した。

廣岡さんが赴任先で同居するのは、加工場の責任者・福家健一さん。2人は20年近くの付き合いで、かつては料理長として店の売り上げを競い合うライバルだった。

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コロナ前、大阪・梅田の店で料理長を務めていた福家さんは、店の閉店に合わせて会社を辞めるつもりだったが、廣岡さんが沼津に呼んだ。福家さんは、「廣岡さんがセリして、それを俺が加工する。そんなこと1年前は考えもしなかった」と話す。

飲食店の原点に返って、もう一回おいしいものを出す

この日、社長の長澤さんと廣岡さんは沼津港にいた。目の前には一隻の船。なんと「沼津我入道漁協」常任特別顧問・鈴木信一さんが、買えば500万円はする船を、「SANKO」に譲るという。

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鈴木さんは、「SANKO」が市場で競りに参加できるよう、後押しした人物。後継者不足で乗り手のいない船を「SANKO」に譲り、漁協の正式な組合員になってもらいたいと考えていた。
「いい風を吹かせていますよ、『SANKO』は。この風に乗らない手はないですね、漁協も」と地元漁業の活性化を期待する鈴木さん。

そして、漁業に携わることで「SANKO」の社員に学んで欲しいことがあった。「魚を自分の手で釣れば親しみを持つ。無駄にしないとか、魚の持つ素材の意味をよく考えるとか。ちょっと質が違う飲食部門になって欲しい」と話す鈴木さん。居酒屋の社員が漁師になり、取った魚を店で売る...前代未聞の挑戦だ。

今年1月上旬、「SANKO」の社員、約30人が地引き網漁に挑戦した。社員の一体感を高めてこの苦境を乗り越えようと、長澤さんが自ら企画したのだ。
同じ日の夜、長澤さんは宿舎を訪ねた。大宮の新店舗で自分たちが何をするべきか、このプロジェクトに関わる社員全員に伝えたいと考えていたのだ。

これまでの「金の蔵」は、270円の激安価格を実現するため、生ビールサーバーはボタン1つで全自動、焼き鳥もロボットで焼くなど、徹底した合理化を進めてきた。しかしその結果、出来合いのメニューが増え、料理がおろそかに。長澤さんは、それこそ客が離れていった最大の原因だと考えていた。

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「『金の蔵』は合理性の権化。全て合理性。ちゃんと料理をするという文化が『金の蔵』で断絶したんだよ。食べ物屋さんとして本当にそれが良かったのか...今、問われている」と、思いを伝える長澤さん。

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廣岡さんも「もっと小さいスモールな形で、そこでおっちゃんとおばさんがおいしいものを作って、ちびちび飲むっていうのが居酒屋のルーツ。そこに僕らは企業として、どういう風にお客様に魚を伝えていくか」と話す。これからは、おいしい食事とおいしい酒で人をもてなす...社員一同、決意を新たにしたのだ。

しかし、10日後の1月19日、事態は一変する。1都12県に「まん延防止等重点措置」が適用されることになったのだ。岸田文雄総理大臣の会見を受け、「SANKO」本社では緊急会議が開かれた。

話し合いの結果、3月1日にオープン予定だった新しい店の工事を中断することに。縮小している「金の蔵」も全店休業へ。本社から知らせを受け、店も対応に追われた。
お客が戻り始めた途端、感染拡大でまた休業...2年間その繰り返し。果たして、社員たちの挑戦の行方は......。

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