「アウターを脱いで...その美しい裸体...」久我はみどりを前に、嬉々としてシャッターを切るが...:寂しい丘で狩りをする

公開: 更新: テレ東プラス

「ここ…」

「そう。君と僕が初めてデートした場所さ」

久我が連れてきたのは、港にあるレストランだった。薄暗い店内には誰もおらず、テーブルの上に花束と紙袋が置かれている。

「あの時の僕は、何一つ結果を出せなくて絶望していた。そんな僕の前に君が現れて、恋をした。力を与えてくれた。だから僕は、もう一度頑張れたんだ。5年前のみどり、ありがとう。今日のみどりもありがとう」

久我が花束と紙袋を渡す。

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「ここから僕たちの第二章を始めよう。さあ、これに着替えて」

久我が用意した真っ白なドレスに着替えたみどり。上にはジャケットを羽織っている。

「アウターを脱いで…待って、脱ごうとする瞬間も美しい」

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ゆっくりと脱ごうとするみどりに、久我が「その前に」と言いながら近づいてくる。そしてアウターのポケットに手を入れ、みどりが忍ばせたタクティカルペンを取り出した。

「なんでこんなものを?」

「…探偵だからね」

「僕たちの間にこんなもの必要ない」

タクティカルペンを離れた場所に放り投げ、パシャパシャとシャッターを切る久我。

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「どうして私の裸を撮りたいの?」

「君は女神だからね。優しさに包まれた微笑、探偵の時の鋭い眼差し、その美しい裸体…。僕は今の君の姿を、いや、君が死ぬまでの全ての瞬間を残したいんだ。そうすれば、僕の芸術は完成する」

「本当にそう?…私はあなたのお母さんじゃないから」

「……?」

「あなたは子どもの頃、お母さんから暴力を受けていたのよね。あなたのお母さんの写真を見て気づいた。ほんの少しだけど私に似てる…。あなたは、お母さんに愛されなかった過去を、私で埋めようとしてるんでしょ?」

「…違う」

「違わない。あなたはいろいろカッコつけてるけど、結局ただのマザコンなのよ!」

「黙れ黙れ黙れ! なぜ急にそんなことを言いだすんだ! 人生で今、最も幸せな時を過ごしているのに」

「私にとっては、人生で最も不幸な瞬間だけどね」

「みどり、また僕を苦しめるの…?」

狂気に満ちた表情の久我が、みどりの腹部を殴り、倒れ込んだみどりの首を両手でじわじわと絞める。みどりは落ちているタクティカルペンをなんとか拾い、思い切り久我の足に突き刺した。

「ぐあぁー!」

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痛みでのたうち回る久我。みどりは花束の中に隠していたスタンガンを取り出し、久我に向ける。

「花束ありがとう」

すると、久我が突然苦しそうに胸を押さえた。ニトロケースから薬を取り出そうとするが、手元が狂い、地面に落としてしまう。刺された足がもつれ、拾うことができない。

「みどり…みどり…!」

みどりは一瞬迷うが、暴力を受けた過去がフラッシュバックする。そして助けを求める久我に近づき、スタンガンをあてる。久我は「愛してる」と呟きながら、暗い海へ落ちていった。震えながら海面を見つめ、去っていくみどり。

少し遅れて港に到着した押本は、2人を探して走り回っていた。すると、「バシャーン!」と何かが海に落ちる音が聞こえ、そちらへ向かうが、久我の車が停まっているのみだ。キョロキョロ探していると、一人でタクシーに乗り込むみどりを見つける。押本は追おうとするが、金がなくてタクシーに乗ることができない。

「男はどこ行った…?」

翌日。久我はスタジオで撮影する予定だったが、一向に現れない。「早くしてもらえます?」と怒るモデルに、助手の飯島が謝りながら電話をするが、つながらない。

一方、自殺未遂を図り、入院している敦子。病室にみどりが現れる。

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「私、また周りの人に迷惑ばかりかけて」

「敦子さんのせいじゃありませんから。全て押本のせいです。安心してください。ああいう人間は、必ず罰を受けるはずです」

「……?」

どこか確信めいた口調に、みどりの変化を感じる敦子。そこに捜査のために浅野がやって来て、みどりがいることに驚く。みどりは「敦子さんは私の依頼人だから」と説明し、事情聴取に同席することに。

「遠山さんの背中を押した人物に見覚えは?」

「…押本忠夫です」

「その男は何者ですか?」

敦子が怯えた表情を浮かべる。するとみどりは「私から説明させて」と病室の外に移動し、押本が7年前に起こした強姦事件と、その復讐を企てていることを説明した。

「私は敦子さんに依頼されて、押本の居場所を探っていたの」

「どうして相談してくれなかったんだ?」

「警察ではすぐに事件にできるとは言えない。あなたがそう言ったでしょ?」

以前みどりが遠回しに相談した際、「パトロールや警告しかできない」と言った浅野。

「それに、『警察に相談したら殺す』と敦子さんが脅されてたから」

「だとしたら、なおさら相談してほしかった。事情を聞けばできることもあったのに」

「押本が復讐を諦めなかったら? 押本を逮捕できたとして、また出所後、復讐してきたらどうするの?」

「何度でも逮捕する。ただ押本だって、そこまで敦子さんに執着しないだろう」

「分からないでしょ! 押本は復讐が生きる目的になっている気がする…」

そう言って事務所に戻ろうとするみどりに、浅野は久我について尋ねる。5年前、みどりが久我からストーカー被害に遭っていたことも調べはついていたが、あえて「本当に仕事の知り合いなのか?」と聞いた。

「…何もない。それに安心して、あれ以来姿を見せていない」

にっこり笑って、そう答えるみどり。

「そっか…」

一方、未だ久我と連絡がつかない助手の飯島は警察に電話をかけ、行方不明届を出してしまう。さらに、みどりと久我を目撃していた押本も窃盗事件を起こし、押本とみどりに捜査の手が及ぶが…。

【第5話 あらすじ】

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探偵の桑村みどり(倉科カナ)の元交際相手でストーカーのカメラマン・久我(竹財輝之助)が行方不明になったというニュースが流れる。それを見た押本(丸山智己)は、みどりの埠頭での行動を思い出す。また、入院中の敦子(久保田紗友)も同じニュースを見て、みどりを心配していた…。
刑事の安田(忍成修吾)から浅野(平山浩行)へ行方不明になる直前の久我の写真が提出されたが、そこにはみどりが一緒に写っていた。
一方のみどりは、弁護士の桂(藤田弓子)から敦子と押本の過去を聞き出すが、そこで、押本の身勝手な行動により傷つけられた敦子が浮き彫りになる。「もう逃げない」と決意した敦子は、みどりを守るため、一人で押本に会いに行く。