就職合格率100%!東大編入も。各界から注目される明石高専。知られざる「高専」の魅力に迫る!

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名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く情報ドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回紹介する名門校は、「明石工業高等専門学校」。未来のエンジニアを育成する、5年制の国立の高等教育機関だ。教室を覗くと、最先端の技術を駆使した授業が行われていた...。番組では知られざる"高専"の世界に潜入し、学生たちの活動に密着。また、卒業に向けて進学や就職を目指す学生の姿を追った。

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兵庫県明石市にある「明石工業高等専門学校(以下、明石高専)」は今年で創立60周年を迎えた国立の高等専門学校。全国に51校ある国立高専のうち、明石高専は一期校で、最も歴史がある高専のひとつだ。

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ちなみに「高専」とは、高校と大学に相当する教育を5年間で行う、エンジニアを育てる高等教育機関のこと。高度経済成長期にエンジニア育成の国策として設立され、高専生は「生徒」ではなく「学生」と呼ばれる。2022年現在、国公立・私立を合わせると全国に57校あるが、それぞれの高専には特徴があり、学べる科目などは少しずつ異なる。

卒業後のおもな進路は大きく「就職」「一般の大学に編入」「高専の専攻科でさらに2年間学ぶ」に分かれ、多くの高専では半数以上が就職する。

明石高専では、就職する学生は3分の1ほど。国公立大学に編入する学生が多く、2021年度は、東大5人、京大2人、阪大16人などへの進学実績を誇る。一方、就職でも企業や官公庁、自治体などからの評価が高く、希望者の就職合格率はなんと100%だという。

それではいよいよ校舎へ。校舎の前や外壁には太陽光パネルが設置され、校内には発電量と消費電力をリアルタイムで表示する掲示板が。これも授業や研究などに活用されているのだろう。制服はなく、学生たちは私服で登校している。

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1学年160人ほどで、どの学科でも共通して学ぶのが英語や数学などの普通科目だ。数学の授業が行われている教室を覗くと、外国人の特命助教と日本人教授の2人が教壇に。講義内容は同じのようだが...実は、数学は英語と日本語の両方で学ぶそうで、これは将来、世界で活躍するエンジニアを育成するためだという。

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また、建築史の授業(4年生)も英語で行われていた。土井信数校長は「世界を対象に仕事しなければいけない時代。グローバルな感覚を身につけないと、これからの社会では活躍できない」と語る。

さらに明石高専ではグローバルな人材育成を目指し、留学生の受け入れも実施。現在6カ国から19人の留学生を受け入れており、留学生は他の寮生たちとともに学生寮で生活している。

続いて明石高専で学べる科目別に授業風景を見ていこう。明石高専では「機械工学科」「電気情報工学科」「都市システム工学科」「建築学科」の4つの学科を設置している。

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「機械工学科」では、ロボットや自動車、飛行機などさまざまな機械や制御システムを作るための基本技術を学ぶ。レーザー加工機などかなり本格的な機械も、15歳から実習で使うというから驚きだ。

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「電気情報工学科」では、電気・電子・通信・情報に関する技術を習得。3年生ともなれば、コンピュータープログラミングもお手の物のようだ。まさにエンジニアの英才教育を受けている学生たち。土井校長によると、特にソフトウェア関連は早期技術者教育が大事な分野だという。

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「都市システム工学科」は、道路や河川施設など、社会基盤となるインフラについて学ぶ。津波のメカニズムを学ぶ「2次元造波水槽」や、河川の土砂の溜まり具合を実験する「水理実験室」など、本格的な設備や施設が充実しているのも高専ならでは。

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「建築学科」では、自然環境と調和した丈夫で美しく快適な建築や、街づくりについて学ぶ。

中には独創的な試みを実施した学生たちも。「どうぞのいす」と名付けたイスを街角に設置、街行く人がささやかなプレゼントを置くことで、物々交換のリレーをしていくプロジェクトだ。学生たちが置いたたこせんべいに始まり、入浴剤、ハンドタオルなど、実際に「どうぞのいす」を通して物々交換が行われ、「第18回全国高等専門学校デザインコンペティション」の創造デザイン部門で最優秀賞を獲得。高い評価を受けた。

学科や学年を超え、技術力を磨く学生たち。未来の技術者に求められるスキルとは?

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5年間の一貫教育のため、興味のある分野に没頭できるのも高専の魅力だ。学生たちは専門的な知識や技術を持ち寄り、学科を超えて作品づくりや研究に没頭している。

「ロボット工学研究部」には、ロボット好きが学科を越えて集結。機械工学科や電気情報工学科などで学んだ知識と技術を結集し、全国の高専対抗で行われるロボットコンテスト(通称「ロボコン」)に向けて日々奮闘している。

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また、「エコラン・プロジェクト」というクラブでは、50ccのエンジンを使い、1ℓのガソリンで何km走れるかを競う「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」に挑戦。2021年は1ℓのガソリンで335㎞という記録を叩き出した。毎年1年生主導でオリジナルマシンのエンジンの分解や組み立てを行っているという。他にも配線を担当するグループや溶接中の学生の姿も。学生とは思えない手際の良さには目を見張るものが。

さらに「宇宙工学研究部」でも実験するロケットを素材作りから手掛けているそうで、本気度が伝わってくる。

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建築学科5年生の岩崎真由子さん(上の画像・右)と大池岳くんが手掛けたのは「ストリートファニチャー」。道路や広場など屋外の公共空間に設置されるオブジェクトや設備などの総称だが、これは音を鳴らして遊べるベンチだという。一昨年に学内で開催されたコンペに出品、実際に兵庫県内の大学で制作してもらい、姫路市の街角にも展示されていたそうだ。

真由子さんは目下、大学編入を目指して猛勉強中。真由子さんの志望する大学とその動機については、彼女が手掛けたストリートファニチャーの奏でる音色に耳を傾けつつ...ぜひ番組で。

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さまざまな分野に興味を持つ学生が集結している明石高専。朝8時、校庭の一角から薪を割る音が聞こえてきた。斧を握っていたのは、真由子さんと同じ、建築学科5年生の小林優太くんだ。優太くんは大阪府出身で、地元自治体への就職を目指し、公務員試験に向けて勉強中だという。

ところでなぜ建築学科の学生がこんな作業を? 聞けば研究棟のロビーの薪ストーブ用に薪を割っているという。さらに、校内の落ち葉や雑草を集めて堆肥づくりも。作業に使っている水は井戸水だが、なんとその井戸も学生たちがつくったものだという。

学生たちに混じって作業をしていた建築学科の平石年弘教授にその狙いを聞いた。「環境改善がテーマの研究室ですが、環境のためにできることがあるとわかっていても、なかなか行動には移せないもの。学生たちには建築をとおして持続可能な社会に貢献するために、明石高専で循環する世界を体感してほしい」。

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以前から高専に着目し、取材を続けている日本経済新聞・田中陽編集委員は、「現代の社会的な課題を解決するためには、若い力が必要。高専では、15歳〜20歳までの柔軟な発想ができる人材が、デジタルの技術や機械・化学・土木を上手く融合させて学んでいる」と、高専の担う役割の重要性を説く。明石高専が企業や官公庁、自治体などから注目され、就職率も100%であることがそれを裏付けているといえるだろう。

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取材最終日。校内案内図などの掲示物や案内標識をチェックし、議論する学生たちがいた。異なる学年・学科の学生たちがチームを組み、社会や地域の課題を見つけて解決する「Co+Works」というプロジェクト型授業の最中だ。

平石教授や田中編集委員が語るように、これからの時代は、エンジニアにも社会の課題解決を念頭に置いたスキルが求められる。専門技術の習得に特化するだけでなく、社会での実践に向けて互いにアイデアを出しながら切磋琢磨する学生たち。自分が好きなことをとことん追求できる明石高専では、誰もが目を輝かせていた。

番組では他にも、各コースの詳細や取り組み、寮での生活の様子、学生たちの作品や研究内容などを紹介する。

次回の「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「神奈川・浅野高校...校訓は九転十起?化学五輪日本代表も」と題して送る。

今回の名門校は、神奈川御三家のひとつ、浅野中学校・浅野高等学校。その校舎を訪ねてみると、まず驚くのが立地の良さ。横浜の街や港を見下ろす丘の上にあり、東京ドームがすっぽり入る広さだ。校内には5万9000冊の蔵書を誇る図書館や最新設備が整うパソコンルーム、購買部の前には快適なランチスペースも広がっている。また運動設備も充実していて、人工芝のグラウンドは、野球やサッカーの公式試合も開催できるほどだ。

一方、毎年、東大や早慶上智などに多数の合格者を出す授業を覗いてみると、生徒たちの机にあるのは浅野オリジナルのテキスト。全教科の教師たちが、長年のノウハウと実績を詰め込んだ「名門ならではの虎の巻」で学んでいるのだ。その一方で、定期的に成田空港を訪れ、外国人にインタビューすることで生きた英語やコミュニケーション力を養うという個性的な取り組みも行っている。

そんな中、カメラが注目したのは、東大進学を目指す高3生。これまで、模擬国連・高校生小論文スピーチコンテスト・日本倫理哲学グランプリ・高校生クイズ...などなど、50を超える各種大会に挑戦。優秀な成績を収めてきた。将来、様々なジャンルのトップランナーたちの間を取り持つ仕事に就きたいと考えているからだ。だが最近は、様々なことを学ぶより、何か一つ、スペシャリストになった方が良いのではと悩み始めてきて...。

一方、同じく東大を目指す高3生も進路について悩んでいた。化学の実力がずば抜けていて、夏に行われる国際化学オリンピック日本代表に選ばれているほど。化学オリンピックで優秀な成績を収めれば、東大に推薦入学できる可能性も高いという。だが、彼の興味は化学だけではない。もっと自分に合った学問があるのではないかと悩む日々を過ごしていた。好きなことを自由に学べる環境だからこそ、将来に悩む2人に密着した。

どうぞお楽しみに!