県内最古の男子校・前橋高校の教育方針は「三兎を追え」。新入生が驚く伝統の通過儀礼

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名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く情報ドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回紹介する名門校は、「群馬県立 前橋高等学校」。今秋、創立145周年を迎える公立の男子校で、東大をはじめとする国公立、特に医学部の合格者を多く輩出するトップクラスの進学校だ。
教育方針は、学習・部活動・学校行事の「三兎を追え」。「行事までしてこその前高生」そう断言する生徒もいるほどで、中には"四兎"を追う生徒も。その生徒こそが「伝統行事」のキーパーソンだ。
県内で最も歴史が長い名門校ならではの"伝統"そして"精神"とは?

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上毛三山を望む群馬県・前橋市。この町に、公立の男子校「群馬県立 前橋高等学校」がある。
通称「前高(まえたか)」。明治10年創立で県内最古の歴史を持ち、今秋、創立145周年を迎える。校訓は「質実剛健」「気宇雄大」、社会のリーダーの育成を目指している。

全校生徒数は829人で、2022年春の大学合格者数は、東大を含む国公立大学に183人、早慶上理に141人、医学部医学科に22人と高い合格実績を誇る。内閣総理大臣も輩出し、官僚・実業家など多くの先輩たちが社会を牽引している。

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前高は、部活動も盛んだ。科学・物理部は、「科学の甲子園」全国大会に2回連続出場。囲碁部は、昨年の夏と今年の春、「全国高等学校囲碁選抜大会」で連覇を達成。山岳部は「インターハイ」2大会連続2位という結果を残し、今年の「インターハイ」では全国優勝を狙っている。

硬式野球部は「センバツ第50回大会(1978年)」で甲子園大会史上初の完全試合という偉業を達成し、春夏合わせ、甲子園に6回出場。スポーツに励む環境も充実しており、サッカーコート、陸上の400mトラック、野球場が十分取れる運動用の敷地は4万㎡を超え、「さいたまスーパーアリーナ」に迫る広さを有する。

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そして、前高自慢の施設が「蛟龍館(こうりょうかん)」だ。創立100周年を記念して建てられ、1階には県内の公立校では珍しい学生食堂が。他にも学習室があり、2階は3年生専用のスペースになっている。朝7時から夜8時30分まで自習ができ、土日や長期休暇中も開放している。

教師も一緒に泊まり込みで勉強する、夏休みの「学習合宿」、前高独自の「校内模試」など、学力向上を目指すサポートは他にも。校内模試は、教師たちが難関国立大の入試レベルに合わせた問題を作成し、過去の解答データと照らし合わせ、的確な進路指導につなげている。

また、進路だけでなく、メンタル面の相談もできる「二者面談」を実施しており、取材した日も、勉強が手につかないと悩む生徒や友だち作りの相談をする生徒の姿が。

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相談した生徒は「入学した頃から、前高の先生は受け止めてくれるというのをすごく感じるんです。恥ずかしくて言えないなってことも気軽に言える」と教えてくれた。生徒と教師の距離が近く、信頼関係があってこそ成立するサポートなのだ。

そんな前高生が勉強と共に力を注ぐのが、学校行事。中でも熱が入るのは、同じ群馬県のライバル・県立高崎高等学校と年に1度、さまざまなスポーツ種目で競う「定期戦」(毎年9月開催)だ。

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「定期戦、絶対勝ちたい。定期戦、絶対に勝つ! 目標になっていますか? 青春時代を燃やすことなく終わっていいですか? 必ずみんなの将来に生きてくる」。
二渡論司校長は、始業式のあいさつで繰り返し伝えた。いかにこの学校行事が重要か...並々ならぬ想いが伝わってくる。

さらに前高には、新入生を迎える4月、応援団が代々取り仕切ってきた大切な行事がある。

「控えめに言って最高」応援団長が語る"前高愛"

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昨年の秋、第87代の応援団長に就任した松村息吹くん(17歳)。医学部への進学を目指し、休日は8時間以上勉強。さらに、所属する吹奏楽部が昨年のコンクールで群馬県代表に選ばれ、部活の練習もこなしている。
勉強・部活動・学校行事に加え、応援団での活動と、まさに"四兎"を追う息吹くんは、高2の時に塾通いを辞めたが、両親には「前高入ってから、控えめに言って最高。勉強はすごく大変だけど、それでも楽しい」と話しているそう。ちなみに、息吹くんの父親も前高のOBだ。

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休日の朝7時、応援団長・息吹くん指揮のもと、新入生を迎える伝統の儀式「校歌指導」の練習が始まった。団員は6人で、息吹くんを含めた3年生3人と2年生3人。今回は、応援団6人に有志14人が加わり、歴史ある校歌を新入生に叩き込む。教師は練習も本番も参加せず、団長の指示がすべてだ。

「(校歌指導は)自分にとって、入学式以上に前高に入ったことを実感できる行事だと思っている。(団長として)これから3年間を頑張ろうと思えるように、1年生の気を引き締めるような思いで頑張ろうと思います」と熱く語る息吹くん。

それにしても、息吹くんのように、前高生が三兎、四兎を追える秘密はどこにあるのだろうか。

応援団の練習後、吹奏楽部の活動も終えた息吹くんは、自習するため蛟龍館へ。すると、ラグビー部の友人・伊澤那應くんと、応援団幹部・堀江由伸くんがやってきた。"引退せず、受験と部活動を両立して見せる"と意気込む那應くんに、勉強方法をアドバイスする由伸くん。

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由伸くんが目指すのは、一橋大学の法学部。中学までは学校行事に積極的ではなかったというが、「男子しかいないし、(みんな)成績も良いし、そういう特別な環境の中で、前高生としての自分という意識が芽生えてくる。自分が学校を引っ張っているんだという意識があると、自信にもつながる」と話してくれた。

教師のサポート、部活動や学校行事で育まれる連帯感、そして前高生としての誇り...。これが三兎を追う原動力になっているようだ。

前高を卒業した後も、一生誇りに思って生きていく

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いよいよ迎えた入学式当日。新入生が式を終え、晴れて前高生になると、応援団による校歌指導が待っている。実はこの儀式、入学式や学校説明会でも案内がなく、保護者にも非公開で行われる。今回特別に、冒頭だけ見せてもらえることに。

体育館に新入生が整列し、太鼓の音とともに応援団長・息吹くんが登場。"前高魂"を伝える渾身の儀式の様子と、それを受け止めた新入生の感想は、ぜひ番組で!

1週間後、「新入生オリエンテーション」で、再び新入生の前に立った息吹くん。

「辛いことや思うようにいかないこともあるだろう。しかし、この貴重な3年間を前橋高校で過ごせることは誇りに思って欲しい。そして、前橋高校で良かったと胸を張って言えるような充実した3年間になることを願い、新入生諸君にエールを送る!」。

見事、伝統儀式の大役を果たした息吹くんは、最後にこう話した。

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「(前橋高校に)入りたくて入って学びたいことを学んで、いろいろ培って(学校を)出ていくので、今、すごく誇りに思っていますし、卒業した後もおそらく一生誇りに思って生きていくんだなと思います」。

前高が名門校たる由縁...それは生徒が自ら伝統を受け継ぎ、母校に誇りを持っていることだった。

番組では他にも、応援団の練習風景や新入生に聞いた志望理由、息吹くんの父親が語る学校行事の思い出、由伸くんの母親のコメント、学生食堂の人気メニューなどを紹介する。

次回の「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「明石高専...一流企業が注目!東大編入も!未来のエンジニア」と題して送る。

今回の名門校は、兵庫県にある明石工業高等専門学校。全国に51ある国立の「高専」の一つだ。「高専」とは、未来のエンジニアを育成する5年制の高等教育機関。高校とも大学とも違うため、生徒たちは「学生」と呼ばれ、明石高専の先生はその多くが「教授」だ。

明石高専に設置されている4つのコースの教室を覗いてみると、そこには「モノ作りニッポン」の未来を担う、最先端の授業風景があった。

その4つのコースとは、ロボットや自動車、飛行機など様々な機械や制御システムを作るための「機械工学科」、電気や通信の技術を習得する「電気情報工学科」、道路や橋など生活に欠かせないインフラや都市作りを担う人材を育成する「都市システム工学科」、そして建築や環境と調和した都市空間の作り方を学ぶ「建築学科」。4つのコースに共通しているのは、数学を英語で学ぶなど将来、世界で活躍することを目指した人材育成だ。

そんな最先端の授業を受けている一方で、学生たちは、自分たちが好きな自由研究に伸び伸びと打ち込んでいる。全国的に有名なロボコン出場を目指し、精密なロボット制作に打ち込んでいるチームもあれば、NASAの技術を基本に手作りロケットを飛ばすチーム、生活環境と遊具を調和させたオブジェを制作するチーム、中には循環型社会を実感するため「薪割り」に汗を流すチームも。みんな和気あいあいと、とにかく楽しそうだ。

「高専生たち」の卒業後の進路は大きく就職と大学編入に分かれる。明石高専では約3分の1が就職。一流企業や自治体などから引っ張りだこで、就職希望者の就職合格率はなんと100%!
そして約半数が選ぶ大学2・3年次への編入。その進学先もすごく、東大や京大、大阪大など難関国公立大がずらりと並んでいる。

そんな中、未来の都市計画を学ぶために大学編入を目指す女子学生の夢とは...?

どうぞお楽しみに!