星野リゾートがディープな下町に進出。近くの「日雇い労働者の街」では...:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

4月29日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「今...なぜそこにホテル?~星野リゾート 前代未聞の挑戦」。
コロナ禍でホテル業界が苦しむ中、4月22日に大阪市浪速区で開業したホテルが注目を集めている。ホテルの名は「OMO7大阪 by 星野リゾート」で、手掛けるのは、あの星野リゾート。巨大ホテルは周辺の街にどんな影響を与えるのか。開業までの1年に密着した。

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地域と連携!大阪のディープな魅力を発信!

2021年3月。「ガイア」のカメラが、14階建て、436室の巨大ホテルの建設現場に入った。ホテルが建てられていたのは、大阪駅から約15分、JR大阪環状線「新今宮」駅前で、広さは甲子園球場のグラウンドほど。2017年、ここを星野リゾートが18億円で取得し、巨大ホテルを造るというニュースは、驚きをもって迎えられた。この土地が30年以上塩漬けだったからだ。

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線路を挟んで隣接するのは、西成区にある日雇い労働者の街「あいりん地区」。
ここには、夜明け前から仕事を探しに来る労働者が求人票を掲げる業者と交渉し、車に乗って建設現場へ向かう姿がある。1960年代、高度経済成長の時代から変わらない、この街の風景だ。一方、過去には労働条件などをめぐるトラブルがきっかけで24回もの暴動が起き、街が荒れた時期もあった。
巨大ホテルの進出に、地元の店経営者は、「えーっと思うわな。ようあの土地狙ったなーと」。驚きの表情を浮かべる。

しかし、星野リゾートには勝算があった。最大の理由はその立地で、徒歩圏内に人気の下町・新世界があるのに加え、JR、私鉄、地下鉄の駅が近く、道頓堀やUSJへも簡単に行ける。関西国際空港からは電車で1本と海外からも便利。さらには、2025年の万博開催が決定し、大阪にはホテル需要が見込まれていた。

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「星野リゾート」星野佳路社長は、「大阪全体を見たとき、新今宮周辺は大きなポテンシャルがある。あそこが変わると、大阪市はがらっと変わる可能性がある。大阪観光するには最も向いている場所」と話す。

星野リゾートが新たにオープンさせるホテルは、OMOブランドの中でも最上級の「7」。新ホテルの総支配人・中村友樹さんは、「OMO7旭川 by 星野リゾート」の総支配人として辣腕を振るい、大阪に赴任した。

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「星野リゾート」が、宿泊客に街に出て楽しんでもらうために力を入れているのが、「ご近所マップ」。周辺エリアの魅力ある店を探し、開業までに約50店舗以上掲載、スタッフがご近所を案内するツアーも企画・開催する予定だ。

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「星野リゾート」の八十田香枝さんは大阪出身。宿泊客向けのツアーをつくるため、8月から連日ご近所を巡っていた。

大阪市浪速区・新世界。この一帯は明治最後の年に通天閣と遊園地が作られたことから始まった歴史ある繁華街で、今も残るレトロな雰囲気が魅力と、近年人気が再燃している。

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串カツの街としても有名。ホテルから歩いて10分の串カツ店「近江屋本店」は、1949年創業で、名物は牛肉にたっぷり衣をまとわせて揚げる「本家串カツ」1本90円。フワフワでボリュームたっぷりの衣に、街の歴史が刻まれている。

2代目の畑百合子さんは「西成が隣やから労働者が多かった。"うまかったー"といって帰っていった。ちょっと食べたらおなかいっぱいになりますやん」と話す。

新世界には50軒以上の串カツ店があり、それぞれの店が独自に工夫している。八十田さんは、串カツ店をはしごするツアーを考えていた。

最大のテーマは地域とつながること。「OMO7大阪 by 星野リゾート」が今回連携を目指すのは、浪速区、天王寺区、阿倍野区、西成区にかけてのエリアで、日雇い労働者の街の一部も含まれる。

ホテルから歩いて5分ほどの距離にある、あいりん地区。中村さんは、介護や支援サービスを手掛ける会社「シクロ」を訪れた。そこで作られていたのは、なんとクラフトビール。「西成ライオットエール」は、この街でかつて起きた西成暴動からつけられた。ビール造り誕生のきっかけは、周りからの要望だった。

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「シクロ」山﨑昌宣社長は「(就労支援の仕事で)何があったらいいのかという話になった時、わしら西成で酒飲み続けてきたから酒の専門家やと。酒を売る場を用意したら、わしら本気で働いてやると説教されたんですよ」と話す。

夜もご近所の魅力発掘は続く。中村さんと八十田さんが訪れたのは、ホテルから5分、西成区にある生演奏が聞けるバー。あいりん地区に根付く音楽「西成ジャズ」が楽しめ、料金は投げ銭するユニークなスタイルだ。こうした魅力ある場所をどれだけ発掘できるかが、今後集客のカギとなる。

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12月下旬。実際に「新世界ツアー」を試す日がやって来た。八十田さんは大阪のディープな魅力を伝え、地域との接点になることができるのか。
そして迎えた4月22日、ついに「OMO7大阪 by 星野リゾート」が開業。宿泊客の反応は......?

「労働者の街」から「観光の街」へ...?

あいりん地区も近年変わりつつある。90年代からの不況で路上には仕事がないため、宿代を払えなくなった労働者が溢れ、簡易宿泊所は労働者向けの宿から、生活保護を受給する失業者たちを受け入れるアパートへと転換。住民の高齢化がそれに拍車をかけた。

2000年代初め、1万人以上いた日雇い労働者の数はこの20年で激減、外国人旅行者向けのホテルになった簡易宿泊所もある。3畳一間で1泊2000円前後。コロナ感染拡大以前は、年間のべ18万人もの外国人旅行者がこの街に泊まっていた。

「僕らには縁がないホテルやなと...」。

失業し、7年前からあいりん地区に住み着いた鈴木正雄さん(仮名 63歳)は、巨大ホテルを見上げてこうつぶやく。鈴木さんの命綱は、仕事のない日雇い労働者を救済するための清掃事業。ここで得られる日当5700円が貴重な収入源で、住んでいるのは1泊500円の宿だ。

だが鈴木さんは、安定した職を得ようと精一杯学んでいる。紙のキーボードでパソコンを練習、NPOが主催する清掃技能講習にも参加していた。

「何か仕事をしないとあかん。その気持ち...それだけです」。

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時代と共に、街も人も変わろうとしていた。そんな中、鈴木さんの環境に大きな変化が訪れる。

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