漢方薬にも副作用がある?気をつけたい生薬&選び方。効果を高める方法を漢方医が伝授!

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(月曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツ、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える、知的エンターテイメントバラエティ。番組では2006年にレギュラー放送開始以来、テーマに沿った最新情報を第一線で活躍する医師たちがわかりやすく解説しています。

さて、今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、「漢方薬の副作用」についての質問です。さっそく漢方医で同番組レギュラーの石原新菜医師に漢方薬を服用する際の注意点について教えていただきました。

効能より、自分の体質に合ったものを選ぶことが重要

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Q:30代会社員です。便秘がちでお腹の脂肪が気になっているので、効果があると聞いて市販の「防風通聖散」を飲み続けています。飲み始めて半年ほど経ちます。漢方薬は長く飲み続けないと効果が出ないらしいと聞いたので、気長に続けようと思っていたのですが、先日、「サンシシ(山梔子)を含む漢方薬には長期服用による副作用の危険性がある」という記事を読み、購入した「防風通聖散」にも「サンシシ」が含まれていたので心配になりました。飲み続けても大丈夫でしょうか?他にも副作用を起こしやすい漢方薬や服用の注意点があれば教えてほしいです。

──質問に出た「サンシシ(山梔子)」とは、どういったものでしょうか。

サンシシとはクチナシの果実で、さまざまな漢方薬に用います。解熱薬や精神神経用薬などの処方時に配合されますが、一方で腸間膜静脈壁の石灰化(大腸の壁から腸間膜の静脈にかけて石灰が沈着し、大腸の静脈の流れが悪くなる状態)による腹痛や下痢、便秘などの副作用を起こす可能性があります。とはいえ、5年間などかなりの長期にわたって飲み続けないかぎりは、そこまで心配することはないと思います。また市販薬の場合、医者の処方する漢方薬に比べると生薬の量は少ないため、そのぶん副作用を起こす確率も下がります。

ただ処方されたものにせよ、市販のものにせよ、副作用の可能性がゼロかというと、そうではありません。では、どこで判断すればいいのか。漢方薬全般の目安ですが、飲み始めて3カ月以内に副作用が出る人の確率は約40%といわれ、それを経過して何も起きないなら体質に合っていると考えてられています。3カ月以降も定期的に採血をして、肝機能への影響を確認しながら飲み続ければさらに安心です。

──サンシシ以外に気をつけるべき生薬はありますか。

マメ科のカンゾウの根を乾燥させた「甘草(かんぞう)」にも気をつけたいですね。甘草は他の生薬の副作用を和らげますが、甘草自身にも副作用があり、体質に合わなければ体がむくんだり血圧が上がったりする場合があります。性質上、多くの漢方薬に使われているので、まずこの生薬が自分の体質に合うかどうかを確認しましょう。

ですが生薬の種類より、もっと気をつけなければいけない点があります。

その薬が患者の状態、つまり体質や体力などに合っているかどうかです。そうでなければ漢方は十分に力を発揮できません。漢方の世界では体の状態のことを「証(しょう)」と呼び、患者が体力があり、筋肉質でよく食べる、元気な「実証」タイプなのか、体力がなく体が細く食の細い「虚証」タイプなのかを判断して処方します。

市販の漢方薬の説明書にも「比較的体力のある人向けの頭痛薬」など、必ず"証"に関する記載があります。ここを間違えて、虚弱体質なのに体力のある人向けの漢方を服用すると、副作用が出る恐れがあります。

生活習慣の改善で漢方薬の効果もアップ!

doctor_20220424_02.jpg画像素材:PIXTA

──たしかについ効能ばかりに目がいきがちです。

今回の質問にあった「防風通聖散」は、体力の充実した元気な人が飲む薬です。ですが一般的に「やせ薬」として知られているため、体が細くて冷え性の、体力があまりない女性がダイエットのために防風通聖散を求める場合があります。するとその女性にとってはとても強い薬のため、肝機能などへのダメージが起きやすい。

インターネット上で得た薬効の知識などをもとに「血圧が高いからあの薬」と決めつけるのは危険です。現代医学は病名が決まれば薬が決まる病名処方ですが、漢方の場合は同じ症状でも人によって違う薬を出す"オーダーメイド処方"です。

過去に、C型肝炎やB型肝炎の患者が肝硬変や肝がんなどになる危険がニュースなどで取り沙汰され、肝臓の悪い人には「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方薬が効くというので病院で採用されたことがあります。そのときに小柴胡湯の投与による副作用の「間質性肺炎」がクローズアップされ「やはり漢方薬は副作用があるじゃないか」と指摘されたことがありました。

ですが、C型肝炎やB型肝炎の患者には年配の方や体の弱っている方が多く、そうした患者さんたちにとっては、小柴胡湯という体力中等度以上の人のための薬は強すぎたわけです。

──なるほど。人によって合う漢方薬が異なるわけですね。他に注意点などあれば教えてください。

漢方薬の効能に合わせて生活習慣も改善すると、より効き目が現れやすいでしょう。たとえば、せっかく水を排出する漢方薬を服用しているのに大量に水分を摂ったり、体を温める効能のある漢方薬を処方されたのに薄着していたり冷たいものばかり飲んでいたりしたら効果は期待できなくなってしまいます。「漢方薬って効かないよね」とか「時間がかかるよね」とかいわれる一因がこれだと思います。

まとめると、薬効だけに注目せず、自分の体質・状態に合った漢方薬を選び、生活習慣も見直す。これが、副作用が起こりにくく、効果的な漢方薬の服用方法です。できれば自分の体質や状態を知るためにもかかりつけ医や漢方医、漢方薬局などで一度相談してみるのが望ましいですね。

──石原先生、ありがとうございました!

【石原新菜(いしはらにいな)医師プロフィール】
イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長、健康ソムリエ講師、本内科学会会員、本東洋医学会会員、本温泉気候物理医学会会員。1980年長崎県生まれ。2006年3月帝京大学医学部卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實医師のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。著書に『お医者さんがすすめる不調を治す10倍ショウガの作り方』をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』、『「空腹の時間」が健康を決める』、『やせる、不調が消える 読む 冷えとり』など。監修に『更年期ってこういうこと図鑑』ほか。2児の母でもある。

※この記事は石原新菜医師の見解に基づいて作成したものです。

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