妊娠・出産への意識に変化、斎藤工「自分以上に大事なものが自分の体内にある」上野樹里「命を授かったなら、なんとかなる」:ヒヤマケンタロウの妊娠

公開: 更新: テレ東プラス

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テレビ東京がNetflixと共に企画・製作するNetflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」。妊娠した男性・桧山と、そのパートナー・亜季は、どのような選択をするのか? 男女の役割の固定概念が逆転した立場で起こる混乱にクスっとさせられ、桧山と亜季が直面する問題からは社会の矛盾が見えてくる、話題の社会派コメディ。桧山役・斎藤工と亜季役・上野樹里による対談【後編】では、お互いの印象、この作品を通じて感じた妊娠・出産への思いを語ってもらった。

※斎藤工×上野樹里対談【前編】はこちら

桧山の慌て方は他人事ではない!?

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――ご自身の役柄に共感する部分を教えてください。

斎藤「これまで桧山は『スマートに生きよう』との言葉通り、弊害を回避する生き方をしていました。それは人間の本能だと思います。それでも、人生は思い通りに攻略できるものではなくて。"まさか"の出来事に見舞われた時の桧山の慌て方は、他人事ではないなという気がしました。僕自身も普段いかに摩擦が少なく省エネで生きようとしているか、スマートに見えて実態のない生き方をしているんじゃないか、と考えさせられて。スマートに生きていたはずが、不測の事態で困惑するという桧山のコントラストは、自分を見ているようでした」

上野「私は自分自身が未だに分からないので、役と比べるのは難しいのですが...亜季は魂を売らない人で、自分の信念を持っていると思います。現実は理想通りにはいかないけれど、その中で必死に生きようとして、それでストレスがたまってしまっている。だから亜季が笑う瞬間ってあまりないのですが、その感じと自分が似ている気がします。自分も、あれこれ考えている時間が長く、普段あまり笑わないので。もっと笑いたいと思います(笑)」

――今回の共演で感じた、お互いの印象をお聞かせください。

斎藤「2人で初めて芝居をしたシーンが、桧山が男性の妊娠に理解が少ないことや、出産時のリスクを考え、一度は中絶するための同意書に亜季のサインをもらおうとする場面でした。この状況は多くの方にとっては男女逆の立場だと思いますが、上野さん演じる亜季からは、こういう状況に置かれた男性の心の動きを感じて。それを受けて桧山に女性的な心の動き、母性のようなものが出てきた気がします。そこから、それまでの桧山にはなかったたたずまいが出たと思いますし、上野さんとでなければ、この桧山にはなっていないなと感じました」

上野「そう言っていただけて、ありがたいです。脚本を読んだ時から斎藤さんが演じる桧山が想像できたし、おかげで私も自分の役割を想像することができました。あのシーンは、桧山が切羽詰まって亜季に会いに来たと分かるものの、亜季としてはどうすることもできないし、どうしてあげたらいいんだろうという気持ちで演じました」

妊娠・出産に対する意識の変化

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――斎藤さんは妊娠を疑似体験して、どんなことを感じましたか?

斎藤「体のフォルムも変わりますが、それ以上に重心がどんどん変わっていくんです。お腹が大きくなるにつれて、階段を降りるのにも違う目線になるし、自分のプライオリティをお腹に置くようになっていきました。自分以上に大事なものが自分の体内にあるという、すごく不思議な、想像していたのとは違う感覚でした。大きくなったお腹の部分は僕のおへその位置に基づいて設計し、リアリティを追求して作っていただいたので、芝居をする上でかなり助けられました。実感らしきものを持つことができましたし、臨月に近付くにつれて周りの方たちから、すごく丁寧に扱ってもらった気がしました」

――上野さんは、お腹が大きくなっていく斎藤さんを見て、いかがでしたか?

上野「お腹に触れる時、簡単に触れていいのか、ちょっと躊躇する自分がいて...私が触れたらどう思われるんだろう、と考えましたし、触れるということはとてもセンシティブなことだと感じました」

――この作品を通じて、妊娠・出産に関するご自身の意識に変化はありましたか?

斎藤「撮影には、生後数ヵ月の赤ちゃんにも参加してもらいました。コロナ禍という状況で協力していただけたのは、とてもありがたいです。赤ちゃんがいる時は『よーいスタート』という声をかけずに、そーっと撮影が始まって、現場の最優先事項が赤ちゃんになるのですが、普段の生活でも同じだなと思いました。現場にいるみんなが、自分も赤ちゃんだった時期を経て今があることを本能で分かっていて、目の前にいる赤ちゃんが最も尊いものだと考えて行動する。赤ちゃんの存在で撮影現場の空気が様変わりするのを体感しましたし、命が生まれることの尊さや素晴らしさをより強く感じられました」

上野「亜季のように仕事で手いっぱいだったり、今の自分には子供を育てるのは無理だと考えたり、妊娠や出産に迷う女性もたくさんいると思います。でも、環境が整っているからといって授かるわけでもないんですよね。いつやってくるか分からない命というものを恐れる必要はなくて、命を授かったなら、その時にはなんとかなる。大変だとしても周りの人が協力してくれて、とにかく前に進んでいくことになるのかなというポジティブな印象を持ちました」

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【プロフィール】
斎藤工(さいとう・たくみ)
1981年8月22日生まれ。A型。東京都出身。モデルとして活動する中、2001年に俳優デビュー。ドラマ「最上の命医」(テレビ東京系)、「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」(フジテレビ系)、映画「シン・ウルトラマン」(2022年)などに出演。俳優業と並行して「齊藤工」名義で映画監督としても活動。今後、出演映画「グッバイ・クルエル・ワールド」(2022年秋公開予定)、監督作品「スイート・マイホーム」(2023年公開予定)などが控える。

上野樹里(うえの・じゅり)
1986年5月25日生まれ。A型。兵庫県出身。2001年「クレアラシル」3代目イメージガールに選ばれデビュー。映画「スウィングガールズ」(2004年)で「第28回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞。ドラマ「のだめカンタービレ」、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」(NHK総合ほか)、「監察医 朝顔」(フジテレビ系)など主演作多数。現在、主演ドラマ「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」(TBS系)も放送中。

<斎藤工>
ヘアメイク:赤塚修二 Shuji Akatsuka(メーキャップルーム)
スタイリスト:三田真一 Shinichi Miter(KiKi inc.)
ジャケット¥292,600、シャツ¥108,900、パンツ¥162,800(THE ROW)
シューズ スタイリスト私物

<上野樹里>
ヘア:Shotaro(SENSE OF HUMOUR)
メイク:Sada Ito for NARS cosmetics(donna)
スタイリスト:岡本純子 Junko Okamoto
トップス¥52,800、スカート¥63,800(ロキト/株式会社アルピニスム)

(撮影/Marco Perboni 取材・文/伊沢晶子)

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Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」
4月21日(木)Netflixにて全世界独占配信中

原作:坂井恵理『ヒヤマケンタロウの妊娠』(講談社「BE LOVE KC」所載)
監督:箱田優子 菊地健雄
脚本:山田能龍 岨手由貴子 天野千尋
出演:斎藤 工 上野樹里
筒井真理子 岩松 了 高橋和也 宇野祥平 山田真歩/リリー・フランキー
細川 岳 前原 滉 森 優作 山本亜依 伊勢志摩 篠原ゆき子 橋本 淳 小野ゆり子 木竜麻生
斉木しげる 根岸季衣
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflixコンテンツ・アクイジション部門マネージャー)
プロデューサー:間宮由玲子(テレビ東京)太田勇(テレビ東京)平林勉(AOI Pro.)
製作:Netflix
企画・制作:テレビ東京
制作協力:AOI Pro.
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