緊急取材!ウクライナ危機 いま日本ではどんな影響が出ているのか...:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

4月8日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「緊急取材!ウクライナ危機、日本は...」。
世界が震撼したロシアによるウクライナ侵攻から1ヵ月が経過。先の見えない状況が続く中、日本ではどんな影響が出ているのか...緊迫する経済の現場を緊急取材した。

ロシア産が入ってこなければ、国内の水産業自体影響も

ウクライナ侵攻でアメリカやEUがロシアへの経済制裁を強化する中、岸田文雄総理大臣は「米国や欧州などG7と連携して、厳しい対露制裁措置を講じる」と発言した。

カニをメインに扱う飲食店にとって、これは緊急事態。日本に輸入されるズワイガニの約63%、タラバガニの約85%がロシア産(2020年 出典:財務省貿易統計)のため、仮に日本がロシア産水産物の輸入の禁止や高い関税を課すことになれば、店でカニを提供できなくなる可能性があるからだ。

まん延防止措置が2ヵ月ぶりに解除され、久しぶりに客足が戻っていた「札幌かに本家」。創業者・日置達郎会長は、カニの価格高騰に困り果てていた。漁獲量が減り、この10年で冷凍生ズワイガニの平均価格(1キロ)は2倍以上に(出所:東京都中央卸売市場)。

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「今度のロシアの問題で、さらに高くなるのでは」と心配する。年内のカニはなんとか確保したが、ロシアからカニが入ってこなければ、来年以降、調達のめどは立たない。

カニを専門に扱う商社「築地蟹商」の中村格彰会長は、ロシア産の水産物はカニだけではないと話す。ロシア産の水産物の輸入額は1381億円(2021年 出所:農林水産省)。主なものを見てみると、ロシア産の割合が多いのは、カニやタラの卵、ウニなど、日本人が大好きな北の海の幸ばかりだ。

中村さんは「私たちが生まれた時は、国産だったはず。地球温暖化の影響で魚とカニが北に行って、いつの間にかロシア産になってしまった。今はロシアの水産物を買い付けて国内で加工しているから日本に流通している。ここでロシア産が入ってこなければ、国内の水産業自体がダメになってしまうのではないか」と心配する。

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一方、韓国最大の港町・釜山では、ロシア産のカニの輸入が急増していた。ロシア船はカニを中国の港へ運ぶ予定だったが、新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、上海などでは、事実上ロックダウン状態に。その分が韓国へと流れ込んでいるのだ。
釜山の市場のある店主は「ズワイガニの値段が少し下がってきている」と話す。しかし、これはあくまで一時的な現象で、日常生活が戻れば、ロシア産のカニの多くは中国へ向かうという。

「築地蟹商」の中村さんは、「推測だが、ロシアの水産物は中国に行ってしまうと思う。中国の工場で全ての加工が行われ、世界中で販売されることになる。日本の食べ物が、世界の人たちから見たら、中国の食べ物に変わっていると思う。となると、私たちの食文化も失われてしまうことになる」と危機感を募らせる。

「日の丸天然ガス」を増やしたい

ロシアの影響力はエネルギーにも。実はロシアは、天然ガスの輸出が世界第1位。ドイツをはじめ、ヨーロッパ各国にパイプラインを通じて供給している。もちろん日本にも......。
極東サハリンでは、日本政府や商社が巨額の資金を投じ、石油や天然ガスの事業を進めている。
採れたロシア産天然ガスは液化し、LNG(液化天然ガス)としてタンカーで日本に運ぶ。日本にとって、天然ガスの重要性は高い。

日本エネルギー経済研究所・小山堅さんによると、LNGは日本の電源構成のうち約4割を占め、LNG輸入の約1割をロシアに頼っているという。もしもロシア産のLNGが止まれば他の国から買う必要があり、場合によっては価格が4〜5倍になる可能性があるというのだ。小山さんは「石油だけでなく、電気・ガス代が上がり、大きな問題になる」と話す。

日本の天然ガス約10%を世界から調達している石油・天然ガス開発企業「INPEX(旧国際石油開発帝石)」は、LNGの調達に動いていた。LNGトレーディング担当・安藤謙一郎さんは「ヨーロッパにLNGの量がすごく行っている。100億円のレベルで動く市場になっている」と話す。

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LNGの価格は、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに急騰、高止まりしている。天然ガスのロシアへの依存度を減らそうと、世界中が確保に動いていた。

いかに安定的に調達するか...難しい局面が続く中、見直されているのが国内の天然ガスだ。「INPEX」は1979年の帝国石油時代、新潟・長岡市で国内最大の天然ガス田を発見。1984年、「南長岡ガス田」での生産を開始した。国内で使われる約2.3%が国産の天然ガスで、ここからは東京などに供給している。

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「INPEX」は、島根・山口沖の海洋ガス田の開発も進めている。国内での資源開発を積極的に進める「INPEX」上田隆之社長は、「地政学的リスクが顕在化するということはよくある。カントリーリスクがない国内の天然ガス開発は改めて重要。国産エネルギーということで自給率にも貢献するので、"日の丸天然ガス"を増やしたい」と話す。

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「INPEX南長岡ガス田」から車で約15分の山奥にも有望な場所が...。国産天然ガスの増産に向け、年内にも掘り始めるという。