シナリオプランニングで次世代リーダーを育てる

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sdgs_20220406_01.jpg横河ソリューションサービス環境システム本部の大内伸子さん

環境問題、貧困、ジェンダー、働き方...。国際社会は今、数多くの難題に取り組んでいる。こうした中、持続可能な社会の実現のために国連サミットで採択されたのが2016年から2030 年までの国際目標「SDGs」だ。

持続可能な社会・経済を作り上げるために、日本は何ができるのか。BSテレ東では『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』と題し、日本の進むべき道を考えるシリーズを2020年3月からスタートさせた。

2022年3月25日の放送では、横河電機の取り組みを伝えた。

2035年の会社の未来像を描く

制御システムの大手・横河電機は、世界で建設される石油、天然ガス、電力などの巨大プラントの生命線とも言える自動制御システムを手がけています。グローバルに事業展開する横河電機ですが、去年からあるプロジェクトを進めています。参加するのは20代から40代の若手社員26人です。プロジェクトは若手社員が過去にとらわれない発想で、会社の未来を描くというもので、今や経営トップの肝入りです。

シナリオプランニングは、中長期的に「起こり得る複数の未来」を描く手法で、横河電機はこのやり方で2035年の会社の未来像を描こうとしています。未来共創イニシアチブプロジェクトリーダーの玉木伸之さんは「その状態に応じて体制を変えたり、違う路線で行くための準備、有事に備える力がつく。変わる世界をどう見立てて歩いていくか。その力をつけたい」と話します。

チームは2035年の世界観として4つのシナリオを打ち出しています。

1つは環境保護とイノベーションの両立、リジェネレーション、つまり再生型の経済が始まるという前向きなシナリオ。2つ目は環境経済は重視されるものの経済成長と環境保護が両立しない、いわばジレンマの時代。3つ目は環境よりも経済活動やイノベーションが重視される社会です。そして最後が、世界がこれまでより深く迷走と分断に落ち込むという最も悲観的なシナリオです。

このシナリオプランニング作成の中心人物となったのが横河ソリューションサービス環境システム本部の大内伸子さん(27)。大内さんは学生時代に数多くの国を訪問し、インドであることに気づきました。

「人々が生命を維持するための土台となるものに携わりたいという気持ちがあり、水に着目した。日本では当たり前に水が飲めるし、使えるけれど、そうじゃない国がたくさんあることを学んだ」(大内さん)

2017 年に大内さんは横河ソリューションサービスに入社。会社の中では若手ながらも経営トップと渡り合う機会もあると言います。もちろん日々の勉強も欠かせません。

「『誰かがやればいい』じゃダメだと思っています。誰かがやってくれるだろうというフリーライダー(ただ乗り)ではなく、自分も主体的に考える。将来のリーダーになる私たちの世代がしっかり考えることが、一番実行力もあり、説得力もある」(大内さん)

横河電機のみならず他企業も巻き込むプロジェクトに

sdgs_20220406_02.jpg「未来共創イニシアチブ」のワークショップ

実は大内さんが参加する社内プロジェクトは去年、横河電機のみならず、他の企業も巻き込む組織「未来共創イニシアチブ」に発展しました。

この日のワークショップには13の法人が参加し、企業が将来に起こり得る複数の未来を描く上での必要な価値観の変化について意見が交わされました。大内さんは「学んだことを社内も含め、いろんなところで発信したいし、自分の学んだことを循環させたい」と話します。

若手が中心で、かつ会社の外の人たちも巻き込む形で、ともに未来を考える。

プロジェクトの成果について報告を受けた、横河電機の奈良寿社長は「この1年間で、非常に皆さんの活動が拡幅して、いろいろなところに影響を与えて、コ・イノベーション(共同革新)を伝えることができた。このインパクトをどのように具現化していくか」と話しました。

世界の価値観が変わる中、想定外の未来が待っているかもしれません。今どう準備すべきなのか、若い世代もあくまで自分ごととして持続可能性を考え始めています。

「2030年の先を見据えた企業や事業に貢献できていたらいいなと感じています」(大内さん)

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