医療界の”巨人” エムスリー 新事業で頼る「出前館」の知恵

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4月にエムスリーソリューションズ社長に就任する中村利江

コロナ禍で時価総額が一時6兆円を突破し、現在もおよそ2兆7,000億円とパナソニックと同じ規模を誇る会社が、医療情報を手掛けるエムスリーです。知名度はまだそれほど高くない日本の企業ですが、医師の9割が利用するなど医療界の知られざる巨人です。そのエムスリーがある革新的な事業のかじ取りを任せるのが、「出前館」元会長の中村利江氏です。どんな狙いがあるのでしょうか。

東京・神田のクリニック。医師が「何か医療に関する情報を得たい時はこのサイトを見る」と挙げたのが、エムスリーが運営する医療情報サイト「m3.com」です。 先端医療の情報だけでなく、薬や求人、開業情報に至るまで医療にまつわるあらゆる情報を閲覧できる医師専用のプラットフォームで、会員数はおよそ30万人を誇ります。

そのエムスリーがこの春から本格的に進めていくのが"医療丸ごとDX"。どういうものなのでしょうか?

私たちが医療行為を受けるには通常、予約、問診、受付、診察、そして決済までありますが、現状は部分ごとのオンライン化が進み、扱う業者もバラバラです。そこでエムスリーは予約から決済まで一気通貫のシステム「デジスマ診療」を開発しました。

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予約から決済まで一気通貫で行う「デジスマ診療」

患者はまず専用のアプリから診察の予約をし、問診を受け、体の状態を記入します。そして医療機関に行くと待ち時間なくチェックイン。この時、医療機関には既に患者の問診情報が届けられていて、診察室の医師にスピーディーに転送されます。診察室に入ると、医師は電子カルテに記載された問診情報を基に患者とやり取りするため、効率的な診察が進みます。そして診察を終えたその時、会計はすでに完了しています。

「デジスマ診療」について神田西口クリニックの鈴木鑑医師は「このシステムは画期的。病院に来る前、診察、最後の決済。ここがシームレスに(継ぎ目なく)つながっているのが、このシステムの最大のメリットだと思っています」と話します。

この一気通貫システムの売り込み隊長となるのが中村利江氏。出前館の元会長です。アナログだった飲食店の出前を約20年かけてシステム化し、日本最大級の出前運営会社へと成長させました。

中村氏はその実力を買われて、4月1日付でこのシステムを担当する「エムスリーソリューションズ」の社長に就任します。

「日本のDXサービスは遅れているものが多いが、このサービスは世界でも通じると思う。ブラッシュアップして世界に通用する日本を代表するサービスになればいい」(中村氏)

※ワールドビジネスサテライト