イギリス人女性が大阪と広島の名店でお好み焼きを学び、食べ尽くす!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお送りします。

くいだおれの街・大阪で、プロから一般家庭まで様々なお好み焼きを味わう

紹介するのは、イギリスに住む、「お好み焼き」をこよなく愛するジェリーさん。

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イラストレーターのジェリーさんは、小学生の時に日本人の友達ができ、ニッポンが大好きに。日本語を学び始め、日本語能力試験にも挑戦。初級レベルのN5に合格しました。そんなジェリーさんが一番夢中になっているのが、お好み焼きです。

お好み焼きのルーツは、約450年前の茶道の大家、千利休。茶の席で振る舞った、麩を焼いた茶菓子との説が有力です。ちなみに今残っているお好み焼きのお店の中では、昭和12年創業の浅草「染太郎」が一番古いそう。昭和初期からお好み焼きという呼び名が全国に定着し始めたとか。

ニューヨークでお好み焼きを初めて食べ、ソースとトッピングの無限の可能性に魅了されたジェリーさん。インターネットでレシピを研究し、週に2回ほど作っています。美味しく作るにはお好み焼き専用のソースは欠かせないそうで、使っているのはオタフクソース。

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早速、お好み焼きを作ってもらうことに。お好み焼き粉に刻んだキャベツ、ネギ、人参と天かすを混ぜ、パンケーキ用のフライパンで焼くこと3分。そこにツナをトッピングし、お好み焼きソースとマヨネーズ、鰹節、青のりをふんだんにかければ完成! 友人にも好評ですが、どうしても焼き上がりが固くなってしまうのが課題です。

「どうすればあのふんわり感が出せるのか知りたいんです」と話すジェリーさんを、ニッポンにご招待! 5年前、念願の来日を果たしました。

真っ先に向かったのは大阪。約900軒お好み焼きの店がある中で、一番行きたかったのが、道頓堀にある1945年創業の「美津の」。7年連続でミシュランガイドに掲載された名店です。こちらで、イカやエビ、豚肉など6種類の具が入った名物「美津の焼」をいただきます。

三代目女将・森川宣資子さんに「おいしく作るコツはありますか?」と質問すると、「混ぜすぎないこと。混ぜる時に空気を入れるように」との答えが。生地を掘り返すようにスプーンを入れ、器に沿って外側から回し、空気を含ませることで仕上がりがふんわりするそう。

具材は、鉄板ではなく生地の上にのせ、その上から少しだけ残した生地をかけて蒸し焼きにすることで、素材の旨みが引き立つのだとか。コショウと鰹節をかけ、ダシの旨みを全体に染みわたらせます。

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ポイントは、生地を流したらあまり触らないこと。触るたびに温度が下がり、美味しくなくなってしまうそう。じっくり焼くことにより、キャベツの甘さが引き出されます。返してからも、押し付けるのは厳禁。押し付けると中の空気が逃げて、ふんわり感がなくなってしまうのです。

森川さんによると、一番大切な食材はキャベツ。生地にダシは使わず、キャベツの甘みが味の決め手になっています。キャベツに含まれる硫黄成分が小麦粉の粘り成分・グルテンの生成を促し、生地がモチモチになる効果があるそう。素早く卵を割ったら、絶妙なタイミングで生地と具材をのせて返し、ソースやからし、マヨネーズをかければ完成!

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憧れだった「美津の」のお好み焼きを口にし、「すごい美味しい。普段自分で作るものよりもふんわりと軽くて食べやすいです」と感動! さらに森川さんは「粉を少なくしてください」とアドバイス。粉の量を減らすと、キャベツの食感が生きるのです。

別れ際、森川さんはお土産にと、もう一つの名物「あまから焼き」に使われている七味唐辛子をプレゼントしてくださいました。ジェリーさんも、自分で描いたお好み焼きのイラストをプレゼント。「ありがとう! エンジョイ大阪」と見送られ、次のお店へ。

向かったのは、千日前にある「福太郎」。平日でも行列が絶えない「ねぎ焼き」の名店です。

こちらのねぎ焼きは、生地とキャベツを混ぜてから焼く「混ぜ焼き」ではなく、昆布だしが入った生地に、鯖節粉とたっぷりの大阪産難波ネギをのせる「のせ焼き」。さらにその上に、甘辛く煮込んだ牛すじとこんにゃくをトッピング。お好み焼きのルーツの1つと言われ、大阪では古くから愛されてきた料理です。

生地を具材の上から少しずつかけ、コテで返して形を整えたら醤油ベースのタレを塗り、レモン汁をかけて仕上げます。「ネギの甘みと風味が全体に広がって本当に美味しいです」。お店の方によると、美味しく作るコツはあまり触らず、じっくり待つこと。

翌日。プロ御用達の料理道具街「千日前道具屋筋」へ。イギリスでは専用の道具が手に入らないため、パンケーキ用のフライパンとフライ返しでお好み焼き作りをしていたジェリーさん。ニッポンで本物の道具を手に入れるのが夢だったそう。

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立ち寄ったのは、1946年創業の「タケウチ」。イギリスでお好み焼き店をオープンさせるのが夢だと語るジェリーさんは、お好み焼きを食べるための小さなコテに興味津々です。

お好み焼きはコテで鉄板から直接食べるのが通だと言われますが、元々は物資のない時代、皿や割り箸を使わなくても済むようにと生まれた習慣だそう。ジェリーさんはコテなど合計6点をお買い上げ。3720円から3000円にオマケしていただきました!

その後もジェリーさんは、お好み焼きを食べ歩き! 山根さんご一家に家庭のお好み焼きを振舞っていただいたほか、人気店「双月」「千草」も訪問。千日前の「おかる」では、蓋を使った蒸し焼きを教えていただき、マヨネーズでイラストが描かれた、ふっくらとしたお好み焼きを楽しみました。

あれから5年。ジェリーさんからのビデオレターを「美津の」の森川さんに観ていただきます。
帰国後も、ジェリーさんはニッポンで手に入れた道具で、日々腕を磨いています。森川さんにいただいた七味唐辛子は、お好み焼きにかけて美味しくいただき、見るたびに「美津の」を思い出すそう。

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ここで、現在のお好み焼きの腕前を見てもらうことに。こだわりは、キャベツと粉の割合。「美津の」と同じように、キャベツより粉を少なめにしています。イギリスのキャベツは、ニッポンと比べて甘みと水分が多め。試行錯誤した結果、キャベツ128gに対して粉80gが最適だと判明。この割合だとキャベツの食感が引き立ち、「美津の」のお好み焼きに近くなるとか。

市販の粉に水と卵を加えて、キャベツを投入。森川さんに教えていただいた通り、空気を含ませるように混ぜます。焼く時に大切にしているのが触らないこと。これも「美津の」で教えていただいたポイント。

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ふっくらさせるため、「おかる」のように蓋をして、「タケウチ」で購入したコテで返します。マヨネーズでダルマの絵を描き、出来上がり! 「『おかる』さんの良いところも全部取り入れてすごい」と森川さん。

以前にも増してお好み焼きに夢中なジェリーさんに、ご主人のサイモンさんからある提案が。結婚式をもう一度挙げて、ケーキの代わりにお好み焼きカットをしようというのです。喜ぶジェリーさんを見て、森川さんも「私が5段重ねのお好み焼きを焼いていくので、ぜひ呼んでください!」と笑顔で手を振りました。

広島の名店でお好み焼きを学び、帰国後に驚きの進化!

ジェリーさんが大阪の次に向かったのは、広島。人口あたりのお好み焼き店の数は全国1位! 最大の特徴は、具材を混ぜず1つひとつ重ねて焼く「重ね焼き」です。

お世話になるのは、1950年創業の「みっちゃん総本店」。創業者の「みっちゃん」こと井畝満夫さんは、そば入りお好み焼きの原型を作った、広島お好み焼き界のパイオニア的存在です。ジェリーさんの想いを伝えたところ、作り方を教えていただけることに。

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教えてくださるのは、井畝さんの直弟子、キャリア30年以上の上川学さん。まずは、見本を作っていただきます。小麦粉を水で溶いた生地をおたまの重みで薄く伸ばし、鰹節とキャベツなどの具材を盛り付けます。この時、ムラなく蒸し焼きにするため、蒸気の逃げ道ができるよう、具材に隙間を作るのがポイントです。
味に深みを出すラードをのせて返し、高温で蒸し焼きにすることで、水っぽくならずに旨味を引き出せるそう。

焦げそうになってきたら、火の強い所から弱い所へ移動させます。この温度管理が難しく、1〜2年は修業が必要だとか。ここで、強いコシを持つお好み焼き専用のそばが登場。表面をカリッとさせるため、油をかけて揚げ焼きにします。
キャベツが8割方焼けたところで、そばと合体。上からぎゅっと押さえつけることで、キャベツの甘みがそばにも入って一体感が出るのです。

鉄板に落とした卵に、生地と具材とそばを重ねて返します。そこに甘くてとろみのあるオタフクソースをかけ、最後に青海苔をふれば完成!

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ジェリーさんは「麺のところが信じられないぐらい美味しいです!」と大絶賛!

そして、念願だった広島のお好み焼き作りに初挑戦。さすがに返しは難しかったようですが、ほぼすべての工程を一人でこなし、お好み焼きを完成させました。

最後に、上川さんへの感謝の気持ちを添えて、広島のお好み焼きのイラストを贈ります。するとお返しに、お店オリジナルのソースポットをいただきました。「このボトルを見るたびに、今日のことを思い出します」と嬉しそう。

さらに、行きたかったお店の一つ「薬研堀 八昌」や、グアテマラ出身のご主人が腕を振るう「Lopez」、創業60年以上の老舗「たけのこ」で食べ歩きを楽しみました。

あれから5年。ジェリーさんからのビデオレターを、「みっちゃん総本店」上川さんの元へ届けます。5年の間に東京に進出し、2店舗をオープンさせるなど、ますます発展する「みっちゃん総本店」。去年3月、上川さんは創業者の名を受け継ぎ、二代目・井畝満夫を襲名。広島伝統の味と技を若い職人達に伝えています。

ジェリーさんは帰国後、お店で学んだ味を再現しようと試行錯誤。その成果を見せてくれることに。まずは広島のお好み焼きの要、キャベツを刻みます。フライパンに水で溶いた小麦粉をおたまの重さで薄く伸ばし、鰹節とキャベツを盛り付け......蒸気の逃げ道を作るため、空気穴を作る工夫も。これには上川さんも「すごいね!」と感心。

キャベツを蒸らす間にもう1枚のフライパンでそばを焼き、その上に生地と具材を重ねます。そばにかけるソースの容器は、上川さんにいただいたソースポット。空いたフライパンに卵を落とし、具材やそばを重ねて返し、ソースをかけて完成です!

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フライパン2枚を駆使することで、ご招待前は全く作れなかった広島のお好み焼きを作れるようになっていました。上川さんはこの方法に感心した様子で、「お店やればいいのに」とコメント。

ジェリーさんにはさらなる夢があるそう。それは、もっと多くの人にお好み焼きを知ってもらうため、日本語と英語でお好み焼きの本を出版すること。現在、最もレベルが高い日本語能力試験N1を目指して勉強中です。
さらにお好み焼きのキーホルダーを作り、一緒にお好み焼きのレシピも配って広めているそう。

「これからもお好み焼きを作り続け、腕を上げていきたいと思っています。そしてイギリスだけでなく世界中の人にお好み焼きの魅力を広めていきたいです」

ジェリーさんをニッポンにご招待したら、お好み焼き作りの腕が格段に上達し、世界にお好み焼きを広める活動を始めていました!